夏休みももうすぐという頃、ようやくクラスメイトと体育のペアをスムーズに組めるようになって嬉しくてニコニコしていた折、珍しくミツヤ先輩から電話があった。
坊映画の緊張感ある着信メロディが流れる中、画面に表示された名前を見てちょっとゲンナリしてしまった。
普段はレシートみたいなメッセージを送ってくるのに、わざわざ電話で連絡をしてきたあたりに本当に嫌な予感がする。
なんとなく出るのを躊躇していると、顔は見えないというのにスマホ越しにさっさと出ろという黒く重い圧を感じる。
...渋々緑色の応答ボタンを押した。
「...はい、伊佐原です。」
『やっほーみるちゃん。次ははもっと早く出てね〜。』
「はい...」
高校1年生にしてヤバめのパワハラ上司に平日初っ端から詰められる経験をしている現状に遠い目をしつつ、恐る恐る「ご用件は?」とミツヤ先輩に俺は尋ねる。
『単刀直入に言うね。もうライブまで2ヶ月きったし、夏休みの時間を最大限活用してレッスンしたいからさぁ〜、夏休みの課題、爆速で終わらせるからね。』
無理難題ハラスメントまで付いてきた。どうしようもなく胃がキュッとなる感覚がした。嫌な予感はまだ消えていない。当たり前だがこれで終わりじゃないのだ。
正直聞きたくないが心の中でいつの間にか住み着いている社畜の俺が納期を聞かなきゃ...!という気になってきた。
「...え〜、その、具体的には...どれほどの期間でしょうか...?」
「んーとね、最長でも2週間。なるはやで終わらせたいからもっと短くできるように俺も手伝ったりとか"調整"するから安心していいよぉ〜」
「にしゅうかん?」
早くも走馬灯のように夏休みに課される予定の宿題の量が思い出される。
各科目ごとに問題集が出てたなあ、とか作文を結構な量書かなきゃいけなかったよなあ、と一つ一つ思い起こすごとに気が遠くなるようだった。あんな、あれを、2週間で...?
「そお。西条家の名にかけて君の成績を落とさせるようなマネは絶ぇ〜ッ対しないけど...ちょっとだけキツいかもね♡」
「ほへぁ」
「お返事できてエラいねぇ〜、人間をやめる覚悟、しとこうね。」
電話越しに地獄の入り口で手を振りながら悪魔が笑っていた。
ただでさえ暑い夏だというのに、どうやらさらに地獄の釜が開いてしまうようである。
そんな恐怖の通告に怯え、震えながら一学期の残りを過ごすことになり。
そして、夏休みが始まった。
そこからの2週間は、正直言ってあまり記憶が無い。
いつの間にか課題が終わっていて、覚えのないスケジュール帳がいつも使っているリュックサックに入っているのを見つけた。
そのスケジュール帳にはビッッッチリと過密すぎる時間割が記入されており、時間を最大限効率的に使えるようにか分単位で管理されていた。
そして最終日、課題が全て終わったのであろう日のメモ欄には、ミミズがのったくったような震えた文字で「すべてをおしえてくださりありがとうございます」と書かれていた。
本当に怖かった。
なんとなく教科書の、苦手な単元の部分をペラりと開いてみる。
そこを読むと、まるで有線LANで教科書と脳みそを直接繋いだみたいに"全て"が流れ込んできて理解できてしまった。と同時に、とんでもない心の古傷が開きそうな痛みが頭や心臓のあたりに走り、慌ててページを閉じる。
俺になにがあったんだろう。
こわいからこれ以上知ろうとするのはやめておこう。
ミツヤ先輩はひとつ上の学年で特進クラスに所属している傍ら俺のマネージャー業じみたことまでやっている。端的に言ってバケモンである。
なまじ自分ができているからって俺に同じ水準をナチュラルに求めてくるのはやめて欲しい。
夏休み終盤には本格的にレッスンの頻度を増やしたりするため、そして夏休みの課題を早めに終わらせることのできたご褒美も兼ねてか、今のうちに思いっきり遊んでおいてね〜と先輩からありがたいご通告があったことがあり。
後日、とあるショッピングモール。
目指せリア充!イケイケなカフェ巡りを継続中なため、今話題のフワフワパンケーキ店にて西条くんとお昼ご飯という名の生クリームマシマシフルーツドカ盛りアイス乗せカロリー爆弾パンケーキを食べていた。
そこで今までに見た映画の話になった。
俺はストーリー展開のわかりやすい、アクションシーンでドーパミンがドパドパ出るタイプの映画が好きでよく見るためつい喋りすぎてしまった。
なので「さ、西条くんはどういうのが好き?」と雑なパスを渡したところ。
「僕、あんまり映画はわからなくて...
親が勧めてくれたものしか見たことなくて、あんまり、好きなのが思い浮かばないかも...」
とのことだったので、今日はちょっと予定を変更することにした。
「じゃあ映画見よう!テキトーなやつ!今!」
「へ?」
カロリーの割に軽い質量のパンケーキをギリギリお行儀良く食べれる速度で口に運び、元気に「ごちそうさま!」と退店する。
パンケーキ屋には珍しい食券制の店で助かった。
思い立ったがすぐ店を出られる。
2人でショッピングモールに併設された映画館に向かい、貼ってあるポスターを一つ一つ眺めていく。
ハードボイルドな渋いアクションもの、余命を宣告された恋人との日々を描いた切ない恋愛もの、アニメシリーズの劇場版などなど。
夏休み中ということもあってか、なかなかバランス良くジャンルの違う作品が取り揃えられているようだ。
「いっぱいあるね。どういうのがいいかな〜。」
「...ど、どうしよう...アクションものはシリーズの3作目らしいし、シリアスな感じの恋愛映画は、ちょっとハードル高いかな...?」
「よし、1番バカっぽいやつ見よ!!」
「おお...?」
ざっと全てのポスターを見て、これだ!と指さした先には『メリーシャークリスマス!!』というメタリックでゴツい文字のタイトル。
あらすじによると内容は、血染めの帽子に突然変異による白く豊かなタテガミとヒゲ───そのサメは、『サンタクロース』にちなんで『シャークロス』と呼ばれていた。聖夜、恐怖のサメがソリに乗ってとある海沿いの街を悲鳴と血の海に沈める!────らしい。
ソリを引くトナカイまでツノが生えたサメだ。
季節含めて絶対にゴールデンウィークに見るラインナップじゃない。
公開された本国ではクリスマスに上映していたんだろうが、翻訳やら何やらの都合でこんなまだまだ春麗らかな時期にやっているのだろう。
確実に1番バカなやつだ!!
「これ!これにしよう!!」
「これは......これは...何...?」
「サンタクロースのサメ映画!」
「何の何の何...?」
西条くんにとってはポスターの情報量だけでも許容量を大きくオーバーしていたらしい。
目をまんまるにして背景に宇宙を背負っていた。
あらゆる顔のパーツをまんまるにして困惑しきり状態の西条くんの手を引いて、チケットを連番で購入し、売店でもまだローディングが終わっておらず星を飛ばす西条くんがまともに喋れなかったため、適当に塩とキャラメルが半分こになったデッカいポップコーンとコーラを買った。
アホな映画のオトモ飲料はコーラに限る。個人の感想です。
そしておよそ2時間後。
俺たちは2人とも滂沱と涙を流していた。
「...想像以上に良かったね......」
「...うん。すごく、良かった...」
「こんなポスターとタイトルのアホさから最終的に人間賛歌になることある?」
予想外に映画が良すぎたせいである。
「序盤は本当にアホだったけどね...尾ひれで起こした衝撃波でクリスマスツリーに何人も人をぶっ刺してツリーごと食うところとかちょっと笑っちゃったし...」
「たぶんそこは監督か脚本家がこの世の終わりぐらい酔っ払った時に作ったんだと思う。」
そんな呆気にとられた状態のままシアターの出入口に突っ立ってるわけにもいかないので映画館の外へと歩き出す。
当然、感想を言う口も止まらない。
「主人公の子持ちのおじさんが
『いいか、俺たちは本物のサンタクロースじゃない。お前と違って立派な白いヒゲも無けりゃ、帽子なんてその辺のショッピングモールで買っただけのニセモノだ。
でもなァ!お前みてぇな子供を不幸にして泣かすカスのパチモンなんざお呼びじゃあねェんだだよ!!』
ってチェーンソーを振り回しながら啖呵を切るシーンが良すぎてグッズ売り場にあったチェーンソーのメタルチャーム買っちゃったし。」
「よくセリフ全部覚えてるね...でもすげえわかる...俺も同じの買っちゃったし...
子供に悲劇を見せまいとする大人たちの奮闘アツすぎたよね...」
「本当に、本当に良かった..."真のサンタクロース"は子供の幸せを願う大人たちというメッセージを受け取った...」
「なるほど...思ったより深いね...」
感想をまだまだ言い足りないまま宛どもなく歩くのも何だったので、近くのカフェに入り飲み物を買って座る。
誰かと映画を見たのは子どもの頃以来かもしれない。
「終盤がすごく良かっただけに序盤に、え、えっちなことした金髪カップルが雑に食われたのちょっと可哀想になったよね...」
「ニューイヤーカウントダウンを一緒に見る約束してたのもあって切なかったよね...」
「本当にそれ...ぜんぶ完全に死亡フラグってわかるやつなんだけどね...」
それだけの熱量で話し込んでいると、先ほどのグッズ売り場で横目で見ていた"あれ"が西条くんも気になってきたようだった。
俺も気になってしまい、話の流れをぶった斬って単刀直入に言った。
「...やっぱりパンフレット買おうかな!?」
「でもあんな映画のパンフレットを部屋に置いてたら怒られるかも...アホすぎて......」
「そうなの?...とりあえずもう1回グッズ売り場行かない?表紙あんまり見てなかったかも。」
「...そう、だね。行こうかな。」
そうと決まれば飲み物を飲みきってしまおうとテーブルを見ると、アイスコーヒーとアイスカフェオレをそれぞれ頼んだのにずっと話し続けていたせいで、氷はすっかり解けてしまっていて、結露でビチャビチャになっていた。
飲み終わったあと、会計を済ませてまた映画館へ戻った。
グッズ売り場のディスプレイに掲示されているパンフレットの見本をざっと見ていく。
「あ!あれじゃない?」
「あ、あった。表紙...すごい凝ってるね...」
目当ての映画のパンフレットは、表紙カバーがプレゼントの包装紙のようになっており、それをキリトリ線に合わせて切ると、中からサメ(シャークロス)が飛び出す、というデザインになっていた。
「凝ってるなぁ...アホだけど...」
「こ、これなら部屋に置けそう!」
「マジ!?じゃあ買っちゃお!俺も買うわ!!」
2人して買った同じ映画のパンフレットとおそろいのチャーム。
それを見て2人でまた笑ったのだった。
坊映画の緊張感ある着信メロディが流れる中、画面に表示された名前を見てちょっとゲンナリしてしまった。
普段はレシートみたいなメッセージを送ってくるのに、わざわざ電話で連絡をしてきたあたりに本当に嫌な予感がする。
なんとなく出るのを躊躇していると、顔は見えないというのにスマホ越しにさっさと出ろという黒く重い圧を感じる。
...渋々緑色の応答ボタンを押した。
「...はい、伊佐原です。」
『やっほーみるちゃん。次ははもっと早く出てね〜。』
「はい...」
高校1年生にしてヤバめのパワハラ上司に平日初っ端から詰められる経験をしている現状に遠い目をしつつ、恐る恐る「ご用件は?」とミツヤ先輩に俺は尋ねる。
『単刀直入に言うね。もうライブまで2ヶ月きったし、夏休みの時間を最大限活用してレッスンしたいからさぁ〜、夏休みの課題、爆速で終わらせるからね。』
無理難題ハラスメントまで付いてきた。どうしようもなく胃がキュッとなる感覚がした。嫌な予感はまだ消えていない。当たり前だがこれで終わりじゃないのだ。
正直聞きたくないが心の中でいつの間にか住み着いている社畜の俺が納期を聞かなきゃ...!という気になってきた。
「...え〜、その、具体的には...どれほどの期間でしょうか...?」
「んーとね、最長でも2週間。なるはやで終わらせたいからもっと短くできるように俺も手伝ったりとか"調整"するから安心していいよぉ〜」
「にしゅうかん?」
早くも走馬灯のように夏休みに課される予定の宿題の量が思い出される。
各科目ごとに問題集が出てたなあ、とか作文を結構な量書かなきゃいけなかったよなあ、と一つ一つ思い起こすごとに気が遠くなるようだった。あんな、あれを、2週間で...?
「そお。西条家の名にかけて君の成績を落とさせるようなマネは絶ぇ〜ッ対しないけど...ちょっとだけキツいかもね♡」
「ほへぁ」
「お返事できてエラいねぇ〜、人間をやめる覚悟、しとこうね。」
電話越しに地獄の入り口で手を振りながら悪魔が笑っていた。
ただでさえ暑い夏だというのに、どうやらさらに地獄の釜が開いてしまうようである。
そんな恐怖の通告に怯え、震えながら一学期の残りを過ごすことになり。
そして、夏休みが始まった。
そこからの2週間は、正直言ってあまり記憶が無い。
いつの間にか課題が終わっていて、覚えのないスケジュール帳がいつも使っているリュックサックに入っているのを見つけた。
そのスケジュール帳にはビッッッチリと過密すぎる時間割が記入されており、時間を最大限効率的に使えるようにか分単位で管理されていた。
そして最終日、課題が全て終わったのであろう日のメモ欄には、ミミズがのったくったような震えた文字で「すべてをおしえてくださりありがとうございます」と書かれていた。
本当に怖かった。
なんとなく教科書の、苦手な単元の部分をペラりと開いてみる。
そこを読むと、まるで有線LANで教科書と脳みそを直接繋いだみたいに"全て"が流れ込んできて理解できてしまった。と同時に、とんでもない心の古傷が開きそうな痛みが頭や心臓のあたりに走り、慌ててページを閉じる。
俺になにがあったんだろう。
こわいからこれ以上知ろうとするのはやめておこう。
ミツヤ先輩はひとつ上の学年で特進クラスに所属している傍ら俺のマネージャー業じみたことまでやっている。端的に言ってバケモンである。
なまじ自分ができているからって俺に同じ水準をナチュラルに求めてくるのはやめて欲しい。
夏休み終盤には本格的にレッスンの頻度を増やしたりするため、そして夏休みの課題を早めに終わらせることのできたご褒美も兼ねてか、今のうちに思いっきり遊んでおいてね〜と先輩からありがたいご通告があったことがあり。
後日、とあるショッピングモール。
目指せリア充!イケイケなカフェ巡りを継続中なため、今話題のフワフワパンケーキ店にて西条くんとお昼ご飯という名の生クリームマシマシフルーツドカ盛りアイス乗せカロリー爆弾パンケーキを食べていた。
そこで今までに見た映画の話になった。
俺はストーリー展開のわかりやすい、アクションシーンでドーパミンがドパドパ出るタイプの映画が好きでよく見るためつい喋りすぎてしまった。
なので「さ、西条くんはどういうのが好き?」と雑なパスを渡したところ。
「僕、あんまり映画はわからなくて...
親が勧めてくれたものしか見たことなくて、あんまり、好きなのが思い浮かばないかも...」
とのことだったので、今日はちょっと予定を変更することにした。
「じゃあ映画見よう!テキトーなやつ!今!」
「へ?」
カロリーの割に軽い質量のパンケーキをギリギリお行儀良く食べれる速度で口に運び、元気に「ごちそうさま!」と退店する。
パンケーキ屋には珍しい食券制の店で助かった。
思い立ったがすぐ店を出られる。
2人でショッピングモールに併設された映画館に向かい、貼ってあるポスターを一つ一つ眺めていく。
ハードボイルドな渋いアクションもの、余命を宣告された恋人との日々を描いた切ない恋愛もの、アニメシリーズの劇場版などなど。
夏休み中ということもあってか、なかなかバランス良くジャンルの違う作品が取り揃えられているようだ。
「いっぱいあるね。どういうのがいいかな〜。」
「...ど、どうしよう...アクションものはシリーズの3作目らしいし、シリアスな感じの恋愛映画は、ちょっとハードル高いかな...?」
「よし、1番バカっぽいやつ見よ!!」
「おお...?」
ざっと全てのポスターを見て、これだ!と指さした先には『メリーシャークリスマス!!』というメタリックでゴツい文字のタイトル。
あらすじによると内容は、血染めの帽子に突然変異による白く豊かなタテガミとヒゲ───そのサメは、『サンタクロース』にちなんで『シャークロス』と呼ばれていた。聖夜、恐怖のサメがソリに乗ってとある海沿いの街を悲鳴と血の海に沈める!────らしい。
ソリを引くトナカイまでツノが生えたサメだ。
季節含めて絶対にゴールデンウィークに見るラインナップじゃない。
公開された本国ではクリスマスに上映していたんだろうが、翻訳やら何やらの都合でこんなまだまだ春麗らかな時期にやっているのだろう。
確実に1番バカなやつだ!!
「これ!これにしよう!!」
「これは......これは...何...?」
「サンタクロースのサメ映画!」
「何の何の何...?」
西条くんにとってはポスターの情報量だけでも許容量を大きくオーバーしていたらしい。
目をまんまるにして背景に宇宙を背負っていた。
あらゆる顔のパーツをまんまるにして困惑しきり状態の西条くんの手を引いて、チケットを連番で購入し、売店でもまだローディングが終わっておらず星を飛ばす西条くんがまともに喋れなかったため、適当に塩とキャラメルが半分こになったデッカいポップコーンとコーラを買った。
アホな映画のオトモ飲料はコーラに限る。個人の感想です。
そしておよそ2時間後。
俺たちは2人とも滂沱と涙を流していた。
「...想像以上に良かったね......」
「...うん。すごく、良かった...」
「こんなポスターとタイトルのアホさから最終的に人間賛歌になることある?」
予想外に映画が良すぎたせいである。
「序盤は本当にアホだったけどね...尾ひれで起こした衝撃波でクリスマスツリーに何人も人をぶっ刺してツリーごと食うところとかちょっと笑っちゃったし...」
「たぶんそこは監督か脚本家がこの世の終わりぐらい酔っ払った時に作ったんだと思う。」
そんな呆気にとられた状態のままシアターの出入口に突っ立ってるわけにもいかないので映画館の外へと歩き出す。
当然、感想を言う口も止まらない。
「主人公の子持ちのおじさんが
『いいか、俺たちは本物のサンタクロースじゃない。お前と違って立派な白いヒゲも無けりゃ、帽子なんてその辺のショッピングモールで買っただけのニセモノだ。
でもなァ!お前みてぇな子供を不幸にして泣かすカスのパチモンなんざお呼びじゃあねェんだだよ!!』
ってチェーンソーを振り回しながら啖呵を切るシーンが良すぎてグッズ売り場にあったチェーンソーのメタルチャーム買っちゃったし。」
「よくセリフ全部覚えてるね...でもすげえわかる...俺も同じの買っちゃったし...
子供に悲劇を見せまいとする大人たちの奮闘アツすぎたよね...」
「本当に、本当に良かった..."真のサンタクロース"は子供の幸せを願う大人たちというメッセージを受け取った...」
「なるほど...思ったより深いね...」
感想をまだまだ言い足りないまま宛どもなく歩くのも何だったので、近くのカフェに入り飲み物を買って座る。
誰かと映画を見たのは子どもの頃以来かもしれない。
「終盤がすごく良かっただけに序盤に、え、えっちなことした金髪カップルが雑に食われたのちょっと可哀想になったよね...」
「ニューイヤーカウントダウンを一緒に見る約束してたのもあって切なかったよね...」
「本当にそれ...ぜんぶ完全に死亡フラグってわかるやつなんだけどね...」
それだけの熱量で話し込んでいると、先ほどのグッズ売り場で横目で見ていた"あれ"が西条くんも気になってきたようだった。
俺も気になってしまい、話の流れをぶった斬って単刀直入に言った。
「...やっぱりパンフレット買おうかな!?」
「でもあんな映画のパンフレットを部屋に置いてたら怒られるかも...アホすぎて......」
「そうなの?...とりあえずもう1回グッズ売り場行かない?表紙あんまり見てなかったかも。」
「...そう、だね。行こうかな。」
そうと決まれば飲み物を飲みきってしまおうとテーブルを見ると、アイスコーヒーとアイスカフェオレをそれぞれ頼んだのにずっと話し続けていたせいで、氷はすっかり解けてしまっていて、結露でビチャビチャになっていた。
飲み終わったあと、会計を済ませてまた映画館へ戻った。
グッズ売り場のディスプレイに掲示されているパンフレットの見本をざっと見ていく。
「あ!あれじゃない?」
「あ、あった。表紙...すごい凝ってるね...」
目当ての映画のパンフレットは、表紙カバーがプレゼントの包装紙のようになっており、それをキリトリ線に合わせて切ると、中からサメ(シャークロス)が飛び出す、というデザインになっていた。
「凝ってるなぁ...アホだけど...」
「こ、これなら部屋に置けそう!」
「マジ!?じゃあ買っちゃお!俺も買うわ!!」
2人して買った同じ映画のパンフレットとおそろいのチャーム。
それを見て2人でまた笑ったのだった。
