今日もダンスのレッスンにて忍者コーチに死ぬほど扱かれた。
俺のダンスはまだ何かぬるっとしているのか
「塩で全体をこそぐようにヌメリをとれーーーッ!!!」などという意味不明なコールをいただいてしまった。
なんかアレかな。漁業が盛んなお国の出身なんだろうか。
他にも「お前が振りを全部覚えるよりもチンパンジーが税理士資格をとるほうがずっと早いぞ。」やら「その動きはなんだ。ダサ過ぎる。ガイアもお前にだけは囁かんだろうな。」やら散々言われた。
あんなのほぼハー〇マン軍曹だ。教え方は本当に上手いのに罵倒の語彙が無駄に豊富かつ流暢すぎる。
ただ、見本を見ただけでは自分の体をどう動かしていいかわからないタイプにも伝わるように教えてくれるので本当にすごい人ではあるのだ。
あの人の前職がどこかの精鋭部隊の軍曹とか教官とかやってましたと言われても驚かない。
「へぇ〜そうなんスねェ〜」くらいのリアクションしかできないと思う。さぞ前職でも多くの部下を扱きまわし、シバき倒していたことだろう...などと考えていたら、俺のスマホからデデンデンデデンと、某未来から来た超合金アンドロイドの音楽が流れビクッと身を震わせてしまう。
ミツヤ先輩から連絡が来た時の音を自分で設定していたのに完全に忘れてた。
通知を見ると、明日の放課後に会議をするそうで。
そして会議当日。
「第一回対文化祭ライブ作戦会議ー!!ドンドコぱふぱふ!!」
メンバーは拳を掲げて盛り上がる俺、頭のてっぺんにハテナを飛ばしつつ控えめに拍手をしてくれる西条くん、コイツ本当に馬鹿だなという冷めためでこちらを見る微妙な笑顔のミツヤ先輩、の上記3名である。
「ごめんなさい、最近ようやくシン・ゴジラ見たから真面目な会議をやってみたかったんですけど...」
「最初のテンション感から間違えてるね。」
「ですよね...」
先輩から容赦のないツッコミを賜りつつ大人しくイスに座る。
会議といっても事前に先生から許可をとって放課後の教室で机を複数並べた簡易長机でお菓子を片手に楽しくやろう!というまぁまぁゆるめのソレである。
「これ、買ってきたお菓子とジュースね。」
「わあ!!ありがとうございます!!!」
「声デカ」
3人分にしても大きすぎる量のお菓子やジュースがパンパンに詰まったビニール袋がドドンと置かれ、あまりの重さで机が大きく揺れた。同時に俺のテンションもブチ上がる。
頭を使う時、カロリーはいくらあってもいい。あればあるだけいい。
「これ、ザクザク系ポテトチップスで期間限定のネギ塩ダレ焼肉味ね。」
「まっちがいないやつじゃないですか〜!!」
「んで、これね、みるちゃんっぽいなって思って買ったやつ。宇宙〈スペース〉ミルキーブルーグレープエビ味噌カルボナーラUMA味。チャレンジ冒険枠ね。」
「なんでそんなん買っちゃったんですか?」
「みるちゃんっぽかったから。」
「宇宙〈スペース〉のとこしか被ってないんですよ。」
先輩はこちらの話を聞いてるんだか聞いていないんだかわからない爽やかな笑顔で、やたらギラギラした真っ青なパッケージを勢いよく開けた。保存することを一切考えていない豪快なパーティー開けである。
わあ...中身までブルースクリーンみたいな真っ青...
「...なんでそれをまっさきに開けたんですか?」
「どんな味がするかわかんなくておもしろそうだから。これでもう後戻りできないね。名誉あるファーストペンギンは譲るよ。お食べ。」
「んも"ッ!?」
ビビッドな食欲減退ブルーカラーのポテトチップスを乱雑に口に突っ込まれる。
まず爽やかな酸味、そしてそれを追いかけるもったりとしたクリーミーな乳臭さと甘味、あとを引く磯の香りのビッグバンが口内で大暴れし...遅れて『意味がわからなさすぎて不味い』という電気信号が舌の味蕾から脳へとまるでほうき星のように駆け巡った。
...本当にまずい!!
「う"ッ......ォ"オ"...カハァ...」
「みみみみるちゃん!これ!お水!!」
「ん"...ありがとう...」
助かった。
西条くんが水という恵みをくださらなかったら舌の上から新たな宇宙が創生されるところだった。
こちらを指さしてケラケラと笑う先輩を、懐からイエローカードを取り出しながら睨む。
「会議どころじゃなくなるモンを買ってくるのを金輪際禁じます。とりあえずイエローカード1枚目です。」
「わあ、なにこれ。わざわざ作ってきたの...これ...?」
「はい。こんなこともあろうかと。」
「大はしゃぎじゃん...」
「先輩こそ、なんか荷物多くないですか?」
先輩の席の後ろには台車が止めてあり、プロジェクターやら重そうなダンボール箱が複数乗せられている。
俺のテンション感に負けず劣らずのガチ会議用の布陣だ。
「このバカ、坊ちゃんが張りきっちゃって...」
「なるほど...」
今思いっきり次期トップをバカ呼ばわりしていた気がするが、バカの『カ』が尻すぼみだったのでなんとなく誤魔化そうという雰囲気を感じたためスルーを決め込む。
そんな現状に構わずふふん、と西条くんは得意げに胸を貼った。
前髪の隙間から見える目元は隈でドス黒い。
「夜を徹して、考えてきました!」
「夜を徹してまで...」
「うん!」
なんか今日の西条くん元気いいなとか思っていたらシンプルに徹夜明けした人間特有のハイテンションだったらしい。
西条くんがダンボール箱を開けると、そこにはギチギチに紙の束が入っていた。
「さ、西条くん、それは...?」
「会議用に作ってきた資料!」
「それ全部...?」
「うん!!」
輝かんばかりの笑顔で元気いっぱいなお返事をいただきました。
それに対し俺はどうして良いかもわからなかったので生暖かい笑顔を返す。
それを西条くんは肯定と捉えたのかニコニコしたまま「えへ、緊張する...」とか言いながらミツヤ先輩がいつの間にか設置したプロジェクターのある教卓の前へ移動した。
そこからは怒涛の勢いであった。
まずセットリストと衣装の案の量が多すぎる。
文化祭は3日間あるのだが俺がライブを行うのは初日だけ。
その日は生徒のみで文化祭を行う日だ。
そんなたった1日の文化祭のステージで何回歌わせて何回お色直しさせる気なんだ。
あと演出にところどころ体育館の広さを考慮されてないものがあり、これをやるなら東京ドーム規模の会場がいるのでは?になる。どれをどう考えても一般的な高校でできる範疇を軽く超えている。
「公演時間1時間超えの本格的なワンマンライブをやろうとしてる...?
無理だからね。他の人もステージ使うから、せいぜい3曲くらいしかできないからね...?」
そう伝えると、西条くんは今気付きましたという顔をした。
この子、確か俺より頭良かったよな...?と若干怖くなった。俺(アイドル)の話をする時に著しくIQが下がりすぎていると思う。
とりあえず今回の会議はそんな膨大な量の資料から予算や会場である体育館のステージで実現可能な範囲を探り、数個の案に絞り込むところまでできた。
明確に決まったことと言えば、前の『俺』がアイドル活動をするにあたって着ていた、中学の時に使っていたジャージを改造したジャージメイド風衣装がボツになったことくらいだ。
先はずいぶん長そうである。
俺のダンスはまだ何かぬるっとしているのか
「塩で全体をこそぐようにヌメリをとれーーーッ!!!」などという意味不明なコールをいただいてしまった。
なんかアレかな。漁業が盛んなお国の出身なんだろうか。
他にも「お前が振りを全部覚えるよりもチンパンジーが税理士資格をとるほうがずっと早いぞ。」やら「その動きはなんだ。ダサ過ぎる。ガイアもお前にだけは囁かんだろうな。」やら散々言われた。
あんなのほぼハー〇マン軍曹だ。教え方は本当に上手いのに罵倒の語彙が無駄に豊富かつ流暢すぎる。
ただ、見本を見ただけでは自分の体をどう動かしていいかわからないタイプにも伝わるように教えてくれるので本当にすごい人ではあるのだ。
あの人の前職がどこかの精鋭部隊の軍曹とか教官とかやってましたと言われても驚かない。
「へぇ〜そうなんスねェ〜」くらいのリアクションしかできないと思う。さぞ前職でも多くの部下を扱きまわし、シバき倒していたことだろう...などと考えていたら、俺のスマホからデデンデンデデンと、某未来から来た超合金アンドロイドの音楽が流れビクッと身を震わせてしまう。
ミツヤ先輩から連絡が来た時の音を自分で設定していたのに完全に忘れてた。
通知を見ると、明日の放課後に会議をするそうで。
そして会議当日。
「第一回対文化祭ライブ作戦会議ー!!ドンドコぱふぱふ!!」
メンバーは拳を掲げて盛り上がる俺、頭のてっぺんにハテナを飛ばしつつ控えめに拍手をしてくれる西条くん、コイツ本当に馬鹿だなという冷めためでこちらを見る微妙な笑顔のミツヤ先輩、の上記3名である。
「ごめんなさい、最近ようやくシン・ゴジラ見たから真面目な会議をやってみたかったんですけど...」
「最初のテンション感から間違えてるね。」
「ですよね...」
先輩から容赦のないツッコミを賜りつつ大人しくイスに座る。
会議といっても事前に先生から許可をとって放課後の教室で机を複数並べた簡易長机でお菓子を片手に楽しくやろう!というまぁまぁゆるめのソレである。
「これ、買ってきたお菓子とジュースね。」
「わあ!!ありがとうございます!!!」
「声デカ」
3人分にしても大きすぎる量のお菓子やジュースがパンパンに詰まったビニール袋がドドンと置かれ、あまりの重さで机が大きく揺れた。同時に俺のテンションもブチ上がる。
頭を使う時、カロリーはいくらあってもいい。あればあるだけいい。
「これ、ザクザク系ポテトチップスで期間限定のネギ塩ダレ焼肉味ね。」
「まっちがいないやつじゃないですか〜!!」
「んで、これね、みるちゃんっぽいなって思って買ったやつ。宇宙〈スペース〉ミルキーブルーグレープエビ味噌カルボナーラUMA味。チャレンジ冒険枠ね。」
「なんでそんなん買っちゃったんですか?」
「みるちゃんっぽかったから。」
「宇宙〈スペース〉のとこしか被ってないんですよ。」
先輩はこちらの話を聞いてるんだか聞いていないんだかわからない爽やかな笑顔で、やたらギラギラした真っ青なパッケージを勢いよく開けた。保存することを一切考えていない豪快なパーティー開けである。
わあ...中身までブルースクリーンみたいな真っ青...
「...なんでそれをまっさきに開けたんですか?」
「どんな味がするかわかんなくておもしろそうだから。これでもう後戻りできないね。名誉あるファーストペンギンは譲るよ。お食べ。」
「んも"ッ!?」
ビビッドな食欲減退ブルーカラーのポテトチップスを乱雑に口に突っ込まれる。
まず爽やかな酸味、そしてそれを追いかけるもったりとしたクリーミーな乳臭さと甘味、あとを引く磯の香りのビッグバンが口内で大暴れし...遅れて『意味がわからなさすぎて不味い』という電気信号が舌の味蕾から脳へとまるでほうき星のように駆け巡った。
...本当にまずい!!
「う"ッ......ォ"オ"...カハァ...」
「みみみみるちゃん!これ!お水!!」
「ん"...ありがとう...」
助かった。
西条くんが水という恵みをくださらなかったら舌の上から新たな宇宙が創生されるところだった。
こちらを指さしてケラケラと笑う先輩を、懐からイエローカードを取り出しながら睨む。
「会議どころじゃなくなるモンを買ってくるのを金輪際禁じます。とりあえずイエローカード1枚目です。」
「わあ、なにこれ。わざわざ作ってきたの...これ...?」
「はい。こんなこともあろうかと。」
「大はしゃぎじゃん...」
「先輩こそ、なんか荷物多くないですか?」
先輩の席の後ろには台車が止めてあり、プロジェクターやら重そうなダンボール箱が複数乗せられている。
俺のテンション感に負けず劣らずのガチ会議用の布陣だ。
「このバカ、坊ちゃんが張りきっちゃって...」
「なるほど...」
今思いっきり次期トップをバカ呼ばわりしていた気がするが、バカの『カ』が尻すぼみだったのでなんとなく誤魔化そうという雰囲気を感じたためスルーを決め込む。
そんな現状に構わずふふん、と西条くんは得意げに胸を貼った。
前髪の隙間から見える目元は隈でドス黒い。
「夜を徹して、考えてきました!」
「夜を徹してまで...」
「うん!」
なんか今日の西条くん元気いいなとか思っていたらシンプルに徹夜明けした人間特有のハイテンションだったらしい。
西条くんがダンボール箱を開けると、そこにはギチギチに紙の束が入っていた。
「さ、西条くん、それは...?」
「会議用に作ってきた資料!」
「それ全部...?」
「うん!!」
輝かんばかりの笑顔で元気いっぱいなお返事をいただきました。
それに対し俺はどうして良いかもわからなかったので生暖かい笑顔を返す。
それを西条くんは肯定と捉えたのかニコニコしたまま「えへ、緊張する...」とか言いながらミツヤ先輩がいつの間にか設置したプロジェクターのある教卓の前へ移動した。
そこからは怒涛の勢いであった。
まずセットリストと衣装の案の量が多すぎる。
文化祭は3日間あるのだが俺がライブを行うのは初日だけ。
その日は生徒のみで文化祭を行う日だ。
そんなたった1日の文化祭のステージで何回歌わせて何回お色直しさせる気なんだ。
あと演出にところどころ体育館の広さを考慮されてないものがあり、これをやるなら東京ドーム規模の会場がいるのでは?になる。どれをどう考えても一般的な高校でできる範疇を軽く超えている。
「公演時間1時間超えの本格的なワンマンライブをやろうとしてる...?
無理だからね。他の人もステージ使うから、せいぜい3曲くらいしかできないからね...?」
そう伝えると、西条くんは今気付きましたという顔をした。
この子、確か俺より頭良かったよな...?と若干怖くなった。俺(アイドル)の話をする時に著しくIQが下がりすぎていると思う。
とりあえず今回の会議はそんな膨大な量の資料から予算や会場である体育館のステージで実現可能な範囲を探り、数個の案に絞り込むところまでできた。
明確に決まったことと言えば、前の『俺』がアイドル活動をするにあたって着ていた、中学の時に使っていたジャージを改造したジャージメイド風衣装がボツになったことくらいだ。
先はずいぶん長そうである。
