そして翌日。
朝起きてスマホのアラームを止めると通知でミツヤ先輩からのメッセージが届いていたことに気付いた。起き抜けから無駄に肝が冷えた。
内容はレッスンに関する業務連絡だった。
ひとまず今後のダンスレッスンは週に2回、水曜日と金曜日に課題や予習に影響の無い程度に短時間で行うらしい。
俺は人生で初めて『委細承知いたしました』を返信に使った。
とりあえず今日は火曜日なのでレッスンは無い。
そして今日は母親立案のお弁当お休みデーにつき親からのお弁当という恵みが無い日のため購買に向かって歩いていると、俯いてお弁当らしきランチバッグを持って一人で歩く西条君を見かけたため、そして俺もまたランチを共にできる友達がいないため西条くんをランチに誘うことにした。
「...みるちゃんといっしょにお昼ご飯を...?現実?合法的に...?え?い、いくら出せば...」
「同級生なんだからこれくらい普通だよ。
財布もクレカも通帳もしまってね頼むから...」
課金は特に受け付けていないため拒否しつつダッシュで購買に駆け込み、人気のパン争奪戦をスピーディーに勝ち抜いた話は横に置いておいて、悲しいことに教室には居場所がないので中庭のベンチに2人で並んで腰掛ける。
ちょうど良い感じに日当たりもよく、目の前にちょっとした花壇なんかもあって、良い感じに自然がある。あまり人がいない穴場なのがもったいないくらいだ。
「いただきます!」
購買で適当に買ったコロッケパンに大口を開けてかぶりつく。
我が家のお弁当は総じて米が主食なので、たまにはパンも良いもんだ...としみじみ思いながら味わっていると、横から気遣わしげな熱い視線を感じてそちらを見る。
西条くんは口を開いたり閉じたりして少し迷う素振りをしていたが、意を決したように話し始めた。
「...み、みるちゃん、放課後またレッスンだよね?お昼ご飯、それだけじゃもたないんじゃない...?」
「いや、大丈夫だよ。2つも買ったしどっちもガッツリめのやつだし、カバンにオヤツもあるし...」
「あ、あの、差し出がましいかもだけど、栄養が偏っちゃうから...その、よ、良かったら僕のも食べて...」
たいへん彩り豊かで美味しそうなお弁当箱をこちらに差し出され、その気になってしまった食べ盛りの胃袋がクウ、ともの欲しげに鳴ってしまった。
すごい恥ずかしい。
このおバカさんめ...と胃のあたりをギュッと戒めつつ、ご好意に甘えることにした。
「あ、ありがとう...」
「どれがいい?」
「えっと、じゃあアスパラのベーコン巻き...」
「わかった。...はい、あーん♡」
頬を紅潮させ、蕩けるような微笑みをたたえて西条くんが箸で摘んだてりてりのアスパラベーコンを差し出す。
自分の人生にポップするなんて想像もしていなかった、さながら少女漫画の見せ場のようなメモリアルなシーンに体が硬直した。
...嵌められたんだろうか、これは。
俺は前述の通りパンを買ってしまったためにお箸を持っていない。
策士、なのか...!?と思ったが西条くんは特に何も考えてなさそうなパヤパヤ幸せフェイスをしている。
...観念してありがたく差し出されたそれにパクついた。
買ったパンのラインナップが炭水化物まみれだったため肉肉しく香ばしいベーコンとアスパラのシャキシャキ感が舌を喜ばせている。栄養の宝石箱や〜。
「......おいしい。」
「よ、良かった。えへへ...管理栄養士とか、フードコーディネーターの資格、取ろうかな...!」
「いや、そんな大袈裟な...」
「みるちゃんには健康でいて欲しいから...僕が作った料理で血肉を構成して...それで長生きして欲しい。...ずっとあーん♡ってしてあげたい...」
「...うん、ありがとう。」
「それでまずは500年くらい生きてもらって」
「話変わってきたな?」
「ゆくゆくはみるちゃん千年計画を実行する。」
「今俺のせいで人類にとってヤバめのラスボスが誕生しようとしてる...?」
「僕といっしょに千年生きようね...♡」
「気持ちはうれしいけどやめてね...」
「...うう、みるちゃんがイヤならやめる......」
眉をこれでもかと下げて、見るからに大変不服です、という顔だ。今の一連の俺とともにトンデモ存在になり添い遂げよう計画は冗談じゃなかったらしい。
まだ千年計画を夢見ているのか心なしかうっとりした顔の西条くんをどうしたもんかなと見つめつつ、パンの残りにかぶりついた。
「...お。」
そうしてポツポツと喋っていると、予鈴が鳴った。そろそろ昼休みが終わるらしい。
それを聞いた西条くんがものすごく名残惜しげにしていたので、ちょっと笑ってしまう。
今日はレッスンも無いし、俺たちはクラスが離れているから今日はもう会えないと思ったんだろう。
その可愛らしい仕草に自然と笑顔になってしまい、ついつい甘やかしたい気持ちが出てしまった。弟とか甥っ子とかいたらこんな感じなのかな。
「西条くん、せっかくこの前連絡先を交換したんだからさ、待ち合わせとかしてまたいっしょにお昼ご飯食べようよ。」
「...え、いいの?」
「良くない道理が無い!モチのロン!!」
「あ、ありがとう...」
西条くんは特進クラスに所属しており、そして俺はその下の進学クラスなのでいっしょにいられるのは教室前の廊下まで。
教室に入る直前、俺が「またね」と手を振ると、西条くんも控えめに振り返してくれた。
高校に入ってから初めて、友達と友達らしいことができた瞬間だった。
朝起きてスマホのアラームを止めると通知でミツヤ先輩からのメッセージが届いていたことに気付いた。起き抜けから無駄に肝が冷えた。
内容はレッスンに関する業務連絡だった。
ひとまず今後のダンスレッスンは週に2回、水曜日と金曜日に課題や予習に影響の無い程度に短時間で行うらしい。
俺は人生で初めて『委細承知いたしました』を返信に使った。
とりあえず今日は火曜日なのでレッスンは無い。
そして今日は母親立案のお弁当お休みデーにつき親からのお弁当という恵みが無い日のため購買に向かって歩いていると、俯いてお弁当らしきランチバッグを持って一人で歩く西条君を見かけたため、そして俺もまたランチを共にできる友達がいないため西条くんをランチに誘うことにした。
「...みるちゃんといっしょにお昼ご飯を...?現実?合法的に...?え?い、いくら出せば...」
「同級生なんだからこれくらい普通だよ。
財布もクレカも通帳もしまってね頼むから...」
課金は特に受け付けていないため拒否しつつダッシュで購買に駆け込み、人気のパン争奪戦をスピーディーに勝ち抜いた話は横に置いておいて、悲しいことに教室には居場所がないので中庭のベンチに2人で並んで腰掛ける。
ちょうど良い感じに日当たりもよく、目の前にちょっとした花壇なんかもあって、良い感じに自然がある。あまり人がいない穴場なのがもったいないくらいだ。
「いただきます!」
購買で適当に買ったコロッケパンに大口を開けてかぶりつく。
我が家のお弁当は総じて米が主食なので、たまにはパンも良いもんだ...としみじみ思いながら味わっていると、横から気遣わしげな熱い視線を感じてそちらを見る。
西条くんは口を開いたり閉じたりして少し迷う素振りをしていたが、意を決したように話し始めた。
「...み、みるちゃん、放課後またレッスンだよね?お昼ご飯、それだけじゃもたないんじゃない...?」
「いや、大丈夫だよ。2つも買ったしどっちもガッツリめのやつだし、カバンにオヤツもあるし...」
「あ、あの、差し出がましいかもだけど、栄養が偏っちゃうから...その、よ、良かったら僕のも食べて...」
たいへん彩り豊かで美味しそうなお弁当箱をこちらに差し出され、その気になってしまった食べ盛りの胃袋がクウ、ともの欲しげに鳴ってしまった。
すごい恥ずかしい。
このおバカさんめ...と胃のあたりをギュッと戒めつつ、ご好意に甘えることにした。
「あ、ありがとう...」
「どれがいい?」
「えっと、じゃあアスパラのベーコン巻き...」
「わかった。...はい、あーん♡」
頬を紅潮させ、蕩けるような微笑みをたたえて西条くんが箸で摘んだてりてりのアスパラベーコンを差し出す。
自分の人生にポップするなんて想像もしていなかった、さながら少女漫画の見せ場のようなメモリアルなシーンに体が硬直した。
...嵌められたんだろうか、これは。
俺は前述の通りパンを買ってしまったためにお箸を持っていない。
策士、なのか...!?と思ったが西条くんは特に何も考えてなさそうなパヤパヤ幸せフェイスをしている。
...観念してありがたく差し出されたそれにパクついた。
買ったパンのラインナップが炭水化物まみれだったため肉肉しく香ばしいベーコンとアスパラのシャキシャキ感が舌を喜ばせている。栄養の宝石箱や〜。
「......おいしい。」
「よ、良かった。えへへ...管理栄養士とか、フードコーディネーターの資格、取ろうかな...!」
「いや、そんな大袈裟な...」
「みるちゃんには健康でいて欲しいから...僕が作った料理で血肉を構成して...それで長生きして欲しい。...ずっとあーん♡ってしてあげたい...」
「...うん、ありがとう。」
「それでまずは500年くらい生きてもらって」
「話変わってきたな?」
「ゆくゆくはみるちゃん千年計画を実行する。」
「今俺のせいで人類にとってヤバめのラスボスが誕生しようとしてる...?」
「僕といっしょに千年生きようね...♡」
「気持ちはうれしいけどやめてね...」
「...うう、みるちゃんがイヤならやめる......」
眉をこれでもかと下げて、見るからに大変不服です、という顔だ。今の一連の俺とともにトンデモ存在になり添い遂げよう計画は冗談じゃなかったらしい。
まだ千年計画を夢見ているのか心なしかうっとりした顔の西条くんをどうしたもんかなと見つめつつ、パンの残りにかぶりついた。
「...お。」
そうしてポツポツと喋っていると、予鈴が鳴った。そろそろ昼休みが終わるらしい。
それを聞いた西条くんがものすごく名残惜しげにしていたので、ちょっと笑ってしまう。
今日はレッスンも無いし、俺たちはクラスが離れているから今日はもう会えないと思ったんだろう。
その可愛らしい仕草に自然と笑顔になってしまい、ついつい甘やかしたい気持ちが出てしまった。弟とか甥っ子とかいたらこんな感じなのかな。
「西条くん、せっかくこの前連絡先を交換したんだからさ、待ち合わせとかしてまたいっしょにお昼ご飯食べようよ。」
「...え、いいの?」
「良くない道理が無い!モチのロン!!」
「あ、ありがとう...」
西条くんは特進クラスに所属しており、そして俺はその下の進学クラスなのでいっしょにいられるのは教室前の廊下まで。
教室に入る直前、俺が「またね」と手を振ると、西条くんも控えめに振り返してくれた。
高校に入ってから初めて、友達と友達らしいことができた瞬間だった。
