レッスンもだんだんと増えてきた夏休みの折、とうとう最後の会議をするとの連絡が入った。
そう聞くと、この重くダイナミックな連絡の通知音もいつもよりエモく感じる気がする。いや、そんなことはないか。
夏休みということもあり、学校は使えないため会議は西条家にて行われることとなった。
そんなこともあって、テーブルに並ぶお菓子も袋ごと出されるいつもの雑なラインナップと違って、なんとも洗練されたティーセットと共にこれまたお高貴な陶器のお皿に乗ったお高めのスイーツがサーブされた。
テーブルマナーとかカトラリーの使い方があやふやな人間としては緊張でケーキのスポンジがうまく喉を通らないし味もあんまり分からなくてションボリしてしまった。
2人は慣れた様子で食べていたが。
会議ももう3回目ということもあって、スムーズに進むかと思いきやまた光くんがまたぶ厚い資料を持ってきたので内容を確認しながら一つ一つ「体育館に入らないからね、でっけえゴンドラとかなんちゃらパレードみたいな派手なフロートとかは無理だからね。諦めてね。」と案を早急にボツにしていく。
ミツヤ先輩が資料を爆速で確認し、全てに無理があるとのことで光の速さでボツにされていた。
それ以外は概ねつつがなく進む。
ああでもないこうでもないと意見を出し合いながら、それでも2歩進んで1歩下がるくらいのスピードで細かな舞台演出やセットリストが決まっていく。2人とも頭の回転が早いのでだいぶ助かった。
会議で決定したことを端からミツヤ先輩がほぼ人間とは思えない早さで処理しており、「とりあえずぜんぶ手配終わったよ〜」と聞いたときはビビり散らかした。どこにどうやってどう手を回したらあの早さで完了するんだ。
ひとまず順調にライブに必要なことが大体決まったので、ちょっと休憩しようとミツヤ先輩が言ったことを皮切りにダラダラおやつムシャムシャタイムが始まった。
気も緩んできた時に、つい前から思っていたことを雑談として口を滑らせてしまった。
「常々思ってたんですけど、光くんとミツヤ先輩がアイドルやった方が良くないです?」
「...えぇ...絶対嫌...」
ミツヤ先輩があんまり興味無さそうに「えぇ〜?」と言う。
一方の光くんは苦虫を噛み潰したような顔をした。本当に心から目立つのが嫌なようだ。
「いやぁ...気持ちはわかるんだけどさぁ、こんなに綺麗な顔してるのに、もったいないなぁって...」
光くんの前髪を指先で軽く上げる。
力の抜けたキリリとした眉とまんまるになった目が覗く。
いつも前髪で隠れてるのが本当に惜しいくらい綺麗な顔だ。同性の俺でも見蕩れるレベルの。
でも、何か...既視感があるような...?
「...あれ?」
ふと気付く。
よく見てみると光くんの隣にいるミツヤ先輩と、顔立ちがよく似ている。
髪や瞳の色こそ違えど、スっと通った鼻筋や薄い唇や目の形なんかはそっくりだ。
そうやって2人の顔を何度も見比べていると、どんどん光くんの表情が固くなり、顔色が悪くなってきた。
それとは反対に、ミツヤ先輩はにこやかに笑う。
「...あ、あの、みるちゃん...その、」
「実は俺たち兄弟なんだよね〜。」
光くんが色を失った顔で、躊躇うように、言葉を選んで迷っている様子に対し、さらっと、とんでもないことをなんでもないことのように先輩は告げた。
光くんの顔が驚きに染まり、徐々に泣きそうな顔になり、耐えきれないとばかりに部屋を飛び出して行ってしまった。
「ひ、光くん!?」
慌てて椅子から立ち上がった時にはすでにドアがひどい音をたてて閉まっていた。
呆然とした顔でそれを見つめる。
「ありゃ、今日はもう会議にならなそうね〜」
他人事みたくそう言って、ミツヤ先輩も出て行ってしまった。
どうしていいか分からなくて、しばらく木偶の坊みたいにドアの方を見つめていると、ドアが開いた。
入ってきたのは光くんじゃなくて、いつも家まで送ってくれる運転手の方だった。
送りの車の中にも光くんはいなかった。
いつも欠かさず続いていた習慣が途切れてはじめて、俺は自分がしでかしたことの大きさを実感した。
体がひどく重たくて、背中がどこまでも背もたれに沈んでいきそうな心地がした。
隣に誰もいないことがこんなに寂しかったことを、久しぶりに思い知った。
そう聞くと、この重くダイナミックな連絡の通知音もいつもよりエモく感じる気がする。いや、そんなことはないか。
夏休みということもあり、学校は使えないため会議は西条家にて行われることとなった。
そんなこともあって、テーブルに並ぶお菓子も袋ごと出されるいつもの雑なラインナップと違って、なんとも洗練されたティーセットと共にこれまたお高貴な陶器のお皿に乗ったお高めのスイーツがサーブされた。
テーブルマナーとかカトラリーの使い方があやふやな人間としては緊張でケーキのスポンジがうまく喉を通らないし味もあんまり分からなくてションボリしてしまった。
2人は慣れた様子で食べていたが。
会議ももう3回目ということもあって、スムーズに進むかと思いきやまた光くんがまたぶ厚い資料を持ってきたので内容を確認しながら一つ一つ「体育館に入らないからね、でっけえゴンドラとかなんちゃらパレードみたいな派手なフロートとかは無理だからね。諦めてね。」と案を早急にボツにしていく。
ミツヤ先輩が資料を爆速で確認し、全てに無理があるとのことで光の速さでボツにされていた。
それ以外は概ねつつがなく進む。
ああでもないこうでもないと意見を出し合いながら、それでも2歩進んで1歩下がるくらいのスピードで細かな舞台演出やセットリストが決まっていく。2人とも頭の回転が早いのでだいぶ助かった。
会議で決定したことを端からミツヤ先輩がほぼ人間とは思えない早さで処理しており、「とりあえずぜんぶ手配終わったよ〜」と聞いたときはビビり散らかした。どこにどうやってどう手を回したらあの早さで完了するんだ。
ひとまず順調にライブに必要なことが大体決まったので、ちょっと休憩しようとミツヤ先輩が言ったことを皮切りにダラダラおやつムシャムシャタイムが始まった。
気も緩んできた時に、つい前から思っていたことを雑談として口を滑らせてしまった。
「常々思ってたんですけど、光くんとミツヤ先輩がアイドルやった方が良くないです?」
「...えぇ...絶対嫌...」
ミツヤ先輩があんまり興味無さそうに「えぇ〜?」と言う。
一方の光くんは苦虫を噛み潰したような顔をした。本当に心から目立つのが嫌なようだ。
「いやぁ...気持ちはわかるんだけどさぁ、こんなに綺麗な顔してるのに、もったいないなぁって...」
光くんの前髪を指先で軽く上げる。
力の抜けたキリリとした眉とまんまるになった目が覗く。
いつも前髪で隠れてるのが本当に惜しいくらい綺麗な顔だ。同性の俺でも見蕩れるレベルの。
でも、何か...既視感があるような...?
「...あれ?」
ふと気付く。
よく見てみると光くんの隣にいるミツヤ先輩と、顔立ちがよく似ている。
髪や瞳の色こそ違えど、スっと通った鼻筋や薄い唇や目の形なんかはそっくりだ。
そうやって2人の顔を何度も見比べていると、どんどん光くんの表情が固くなり、顔色が悪くなってきた。
それとは反対に、ミツヤ先輩はにこやかに笑う。
「...あ、あの、みるちゃん...その、」
「実は俺たち兄弟なんだよね〜。」
光くんが色を失った顔で、躊躇うように、言葉を選んで迷っている様子に対し、さらっと、とんでもないことをなんでもないことのように先輩は告げた。
光くんの顔が驚きに染まり、徐々に泣きそうな顔になり、耐えきれないとばかりに部屋を飛び出して行ってしまった。
「ひ、光くん!?」
慌てて椅子から立ち上がった時にはすでにドアがひどい音をたてて閉まっていた。
呆然とした顔でそれを見つめる。
「ありゃ、今日はもう会議にならなそうね〜」
他人事みたくそう言って、ミツヤ先輩も出て行ってしまった。
どうしていいか分からなくて、しばらく木偶の坊みたいにドアの方を見つめていると、ドアが開いた。
入ってきたのは光くんじゃなくて、いつも家まで送ってくれる運転手の方だった。
送りの車の中にも光くんはいなかった。
いつも欠かさず続いていた習慣が途切れてはじめて、俺は自分がしでかしたことの大きさを実感した。
体がひどく重たくて、背中がどこまでも背もたれに沈んでいきそうな心地がした。
隣に誰もいないことがこんなに寂しかったことを、久しぶりに思い知った。
