黒鳥のオディール

 一方。城についたロイヤルブルーの青年は、帰りを待ち侘びた母親に声をかられます。

 息子が出かけたことを先程まで知らず、王妃は、息を荒らげながら問い詰めました。

「まあ、こんな夜更けにどこへ出かけられていたのです、ジーク」

 ジークは労いの言葉とともに弓を従者に預けると、穏やかな微笑みを浮かべたまま、母の方へ視線を向けます。

「心配ありませんよ、母上。友人のベンノと森へ狩りに出かけていたところです」

 母親はさらに険しい表情を浮かべると、息子の新たな申し出にも苦言を呈しました。

「まあ、ベンノと……。あのような臆病な者を供にして、あんな忌まわしい森へ入るなど、断じていけません」

 ジークの表情は和やかなままでしたが、母親へ向けた視線には強い意志が宿り、切実な声で告げます。

「母上。ベンノは決して臆病者などではございませんよ。彼は芯の通った、立派な青年です」  

 母親はその気迫に一瞬怯んだものの、すぐに冷静さを取り戻すと背筋を伸ばしました。

 そして落ち着いた口調で、息子の反論を受け流すように言い換えます。

「あなたはもうすでに成人を迎えたのですよ。そのような悪ふざけはいい加減にして、早く身を固め、この国の世継ぎをもうけること……それが王子の、唯一にして絶対の務めなのです」  

 ジークは抗う術を失ったように、静かに視線を落としました。