黒鳥のオディール

 そして、もう一人。オニキスもまた、ジークと共に向かう意志を向けているようです。

 ふと、オニキスの足元、漆黒のドレスのオデットがいた床から、銀色に輝く小さな光を見つけます。

 拾い上げ確認すると、それは森で無くしたはずの、上着のボタンでした。

(……これは。森で無くした物、それをなぜ彼女が……)

 指先に伝わる銀の冷たさと、そこに僅かに残された温もりを感じた時――ジークの脳裏に、誓いの言葉を聞いた瞬間のオディールの顔を鮮烈に蘇ります。

 自分を殺し苦痛に歪んだ、あの蒼く、あまりに悲しい瞳。

(オディール……。君は、一体何を思って……)

 ジークの中で確信が生まれました。 彼女はオデットではない。たった一人の別の乙女なのだと。

 ジークはボタンを強く握りしめました。

 助け出さねばならないのは、呪われた白鳥の姫だけではない。

 彼女もまた、この呪いから救ってほしいと、ジークに呼びかけている気がしてなりませんでした。