黒鳥のオディール

 澄み切った青い瞳の奥に、言葉にならないほどの悲しみが溢れていることに、ジークはその時、気づきました。

「……君は……」

 ジークが戸惑いの声を漏らすとともに。 数えきれないほどの蝋燭の灯火が一斉に吹き消され、世界は深い闇へと沈みました。

 唯一、冷たい月明かりだけが差し込む大広間に、悪意に満ちた笑い声が、会場の静寂を切り裂き轟きました。

「フハハハハハハッ。よくやったぞオディール。これでオデットは永遠に私のものだ」

 ジークは声のする方を見渡しましたが、声の主はどこにも見当たりません。

 彼は沸き上がる怒りを。天へ向かって叫びました。

「お前か、森に住む魔王というやつは」

「これはこれは、ジークフリート。呪いを解く唯一の鍵である『愛の誓い』を、自ら他の者へ向けた気分はいかがかね?」

「何……だと……!?」

 異変を察した兵士たちが一斉に剣を抜き、傍らにいた者がジークへ剣を手渡します。

 鋭く周囲を睨みつける彼は迷わずそれを受け取ると、金属音を立てて鞘から抜き放ち、暗闇へ向けて毅然と構えました。

 ベンノだけは、銀のお盆を頭に添えたまま、火の消えたキャンドル台を握りしめ、這うようにしてテーブルの下へ逃げ込みました。