黒鳥のオディール

 本来の金髪と白い肌が、黒髪と褐色の肌にも戸惑いを覚えましたが、その澄んだ蒼い瞳に魂を奪われたように、吸い寄せられていきます。

 オディールが優雅に挨拶のカーテシーをしても、体に稲妻が落ちたように目の前の美しさに、身動きができませんでした。

 ベンノはそんな二人を笑顔で交互に見ると、鏡のように研ぎ澄まされた、銀のお盆に飲みものを乗せ差し出しました。

 オディールは、自分の姿を鏡のように映し出すほど美しく磨かれた銀のお盆から、そっとグラスを持ち上げると、そこに自身の手だけが映り込んでいないことに気づき、昨晩突きつけられた『影を持たない』という冷酷な現実に、改めて深い悲しみを覚えるのでした。

 今まで城にある鏡に自分の姿が映っていたのは、すべて魔法による幻影だったのだと――ロートバルトの巧妙な仕掛けに、彼女は心の中で呆れたように冷たく笑いました。

 ――ようやく我に返ったジークは、甘い微笑みを浮かべると、オディールへそっと愛おしそうに手を差し出します。

  今まで見せることのなかった積極的なジークの姿に、ベンノは後退りしながら、自分のことのように喜び、銀のお盆を大切そうに抱きしめました。

 二人が会場の中央へと立つと、ジークのリードを受け入れるように、オディールはふっとオデットのような儚い表情を見せました。

 しかし、すぐにそれをかき消すかのように、妖艶な眼差しへと取り繕ってみせます。

 ジークはその途方もない魅力に突き動かされるように華麗なステップを踏み、全身で喜びを解き放ちながら大きく旋回しました。