秘密を隠した僕たちは、極端な世界を壊す

 放課後になり、東雲さんと一緒に校舎を出る。
 午後の授業中もずっと雨が降っていたけど、帰る頃には にわか雨になっていた。
 お互いに傘を差し、歩き出す。

「東雲さん、今日急に誘っちゃってごめんね。用事とか先約とかなかった?」
「全然!あと、先約って……」
「え!?なんか言い方おかしかった!?」

 東雲さんは笑い堪えている。

「なんか、上司の誘いを断る部下みたい」
「たしかに……?」
「ドラマよく見るんだけど、そこに出てきそうだったよ」

 キョトンとしている僕を見て、また笑いを堪えながら東雲さんは歩く。
 何で笑っているのかは分からないけど、でも、東雲さんが笑っているなら、いいや。

「はぁーっ」

 笑い終えた東雲さんを見て、僕は意思を固める。
 今度は僕が「想い」を伝える番だ。

「ねぇ、東雲さん」
「なにー?」
「告白のことなんだけどさ……」

 一瞬、東雲さんが動揺したように見えたけど、でもすぐに決意を決めたように「うん」と頷いた。

「東雲さんとは、これからも好きなものの話をしたい」
「うん。」
「そして、これからも僕は、東雲さんとは友達として一緒にいたい」
「うん。前みたいにはいかないかもしれないけど……私も、悠くんと好きなものの話をしたい!」
「だって、私は!好きなものに好きなものに正直な悠くんが大好きだから!」
「うん。ありがとう。あと……ごめんね」
「全然!むしろ、ちゃんと悠くんの気持ちを伝えてくれてありがとうね!」

 堂々と想いを伝えてくれた東雲さんを見ていたら、思わず「いや……」と口が動いていた。

「ありがとうはこちらこそだよ」
「え?」

 戸惑っている東雲さんに少し微笑み、僕自身の話をした。
 
「……僕、高校一年までは全然こういうタイプじゃなくて、」
「うん」

 東雲さんは静かに頷いて、僕の話を聞いてくれた。

「僕さ、男の子じゃん。でも、可愛いものが——それこそシマエナガが大っ好きで」
「でも、男の子なのに、可愛いものが好きなんて……って他人からも気持ち悪がられることがたくさんあってさ。まぁ、僕自身でも思ってたんだけどね」
「うん」

 頷いた東雲さんの声が少し弱く聞こえた。
 
「だけどさ、好きなものはどうしても好きで……好きなものを嫌いになれなくて」
「段々といじめはエスカレートしていったんだけど、好きなものを好きで居続けていたら、今年の入学式の日にいじめられていたところを情けないことに、一年生に助けられてさ」
「その子に気に入れられたみたいで話す機会が多くなって、その子と過ごすうちに、自分の中の常識が良い意味で変わってって」
「うん」
「そのおかげで、僕は好きなものに正直に生きられてるんだよね」
「そうなんだね」

 優しく微笑む東雲さんに僕はずっと伝えてきたことを伝える。

「本当に好きなものに正直になれたのは、もちろんその子のおかげでもあるんだけど」
「こんな僕と、好きなものの話をしてくれた東雲さんのおかげでもあるんだよね」

 東雲さんの目を見て伝えると、少し顔を赤らめながら頷いていた。

「可愛いものが好きだっていうことを誰にも知られずに、ずっと隠して生きてきたんだけどさ、」
「うん」
「でも、心の奥底ではずっと、誰かと好きなものの話をしたい!って思ってて」
「だから、僕と好きなものの話をしてくれて、僕の心の底の思いを叶えてくれて、本当にありがとう!」

 今度は僕が優しく微笑むと、東雲さんも笑顔になった。

「こちらこそっ!」

 深く息を吐き、東雲さんは口を開く。
 
「改めて……私と友達になってくれませんか?」
「もちろん!友達として、よろしくね!」
「悠くん、ありがとう!」
「じゃあ、これからも!好きなものに正直になれる悠くんの時間を守らせてね!!」
「うん!!」

晴れやかな気持ちで空を見上げた。
 空にはいつの間にか、雨が止んでいて鮮やかな虹が広がっていた。





「ふ〜ん!それじゃあ悠くんは、実行委員会で一緒だったあの子が好きなんだね!」

 からかい口調で僕の肩をつつく東雲さん。
 僕の好きな人の話をしているのに、なぜかとても嬉しそうにしていた。

「えっ!?なんで、わかった、っの?」

 めちゃくちゃ戸惑っている僕に、「そりゃあわかるよ!」と笑いながら返された。

「なんかねぇ、委員会の時に見てて思ってたけど、二人が喋ってる時、二人だけの世界みたいなのが見えてさ!」
「二人だけの、世界……?」
「うん!」

 深く頷き、「そうなんだ……」と呟く。

「あっ、でもっ!好き……かは、分からないんだけど、気にはなっている、かな……」
「へぇ〜!」

 また、嬉しそうに大きい声を出した東雲さんについ、

「なんで、そんな嬉しそうなの?」

 と聞いてしまった。
 すると東雲さんは、なんてことないように次の言葉を言い張ったのだった。

「そりゃもちろん、悠くんとは付き合いたかったけどさ!でも、絶対フラれるってわかってたし、私は悠くんが幸せなら本当にそれでいいから!」
「悠くんの恋愛、精一杯応援してるからね!」

 とてもキラキラなオーラを放ちながら、僕にピースを見せてきたので、僕も

「うん。ありがとう!」

 と、ピースを見せ合った。



 その後は東雲さんとたくさんシマエナガの話をしたり、あとは最近気になっていた可愛いものの話をしたりして帰った。



 そうして、東雲さんとも仲良くなり、順調に文化祭の準備が進められていき……。
 待ちに待った文化祭まで、もう二週間をきっていたのだった。