いっちーと出会った入学式から丁度ニヶ月が経った六月九日。梅雨に入った。
連日雨が降り、ジメジメしてきた頃。
東雲さんに告白されたあの日から一週間。東雲さんは他のクラスの仲の良い友達と話していて、授業もペアにならない方の隣で、自然と喋ることがなくなった。
あれから、ずっと真剣に考えてるけど……。
「どうしよう……」
頭を悩ませていると、隣から今日の天気にそぐわない、呑気な声が飛んできた。
今日も雨が降っているので、屋上に続く階段でお弁当を食べていた。
「悠センパイ、どしたの〜?」
横を見ると呑気そうにブロッコリーを食べているいっちーがいた。
「あの、この前文化祭実行委員会で一緒だった人に片思いをされてて、その日の帰り道に告白されちゃって……」
「恋愛相談かぁ〜」
「僕、人に恋したことないから、どうすればいいのかなー、って」
「う〜ん、まぁ僕も恋したことないから、まともなアドバイスは出来ないけどさ!」
箸を置いて、いっちーは僕を見つめる。
「まず、悠センパイは告白されて、どう思ったの?」
「告白されて……」
「うん!」
「素直に、、嬉しかった!僕も東雲さんのことが好きだし!でも、その僕の好きは恋愛の好きじゃなくて……」
「うん」
静かに頷くいっちー。
「東雲さんとはこれからも、友達でいたいっ!そして、これからも好きなものの話を、たくさんしたいっ!」
「うん!それが悠センパイの本当の気持ちなんだね!」
「うんっ」
「じゃあ、それをちゃんと相手に伝えないと!嘘つかれる方が余計に相手が傷付くことにかもしれないし。だから、ちゃんと自分の思いを伝えて、相手の思いもちゃんと聞いてきな!」
ピースしながらかっこよく伝えてくれる。
「行動しなきゃ今の状況は変わらないからね!今のままが嫌なら、ちゃんと行動しないと!相手も、悠センパイとは今のままじゃ嫌だと思うし!」
「うん!」
そうだよ。東雲さんはちゃんと自分の思いを伝えてくれたんだ。今度は僕の思いを伝えないと!
「ありがとう!」
「頑張れ!」
僕はご飯を食べ終えてすぐに教室へと向かった。教室に入ると東雲さんの後ろ姿が見えた。
「東雲さんっ!今日の帰り——」
「う、うん!わかったっ!」
振り向いた東雲さんは驚いていた。
私——東雲 沙良は文化祭実行委員会の話し合いが終わり、悠くんと学校の最寄りのショッピングモールに行った。
その帰り道。悠くんは、さっき買ったシマエナガの小さいぬいぐるみを手に持ち、優しく撫でながらしゃべっていた。
「でね!このシマエナガは〜」
悠くんはシマエナガの話になると、本当に生き生きしていて、とても目がキラキラしているんだ。
その様子だけで、本当にシマエナガが大好き!ってことが伝わってきて、私まで嬉しくなってしまう。
「やっぱ悠くんって本当にシマエナガ好きなんだね!」
「うん!!可愛いからね!」
そう言う悠くんはとても笑顔だった。
まるで、一年生の時とは人違いのように、眩しい、心の底からの、ありのままの笑顔だった。
そこで、悠くんを初めて見かけた頃を思い出す。
私が悠くんを初めて見かけたのは、高校一年生の春で。一年の頃はクラスが違くてなんも接点がなかったんだけど、偶然、悠くんと話すキッカケになることがあったんだ。
私がお気に入りのハンカチの落とし物をした時のこと。
何回も放課後の校舎を探し回ったんだけど、どこにも見当たらなくて。諦めようと、思っていた時——誰かに優しく肩を叩かれたのだ。
「ねぇ、君!」
手にはお気に入りの、シマエナガ柄のハンカチがあった。
「あ、はいっ!」
「探してるのって、もしかして これ?」
差し出された彼の手を見ると、可愛いシマエナガがにっこり笑っていた。
「あ、これ!!ほんとありがとう、ございますっ!」
「良かった。それ、好きなの?」
微笑みながら、シマエナガを指差しながら相手は聞いてきた。
「はい!かわいくて大好きなんです!」
「僕もこれ、好きなんだよね。じゃあ、ちゃんと大切にするんだよ。今度は落とさないようにね」
それだけ残し、去る彼を見て、言いたいことを忘れていて「あのっ!」と、彼を呼び止める。
「名前、なんて言うんですか?」
「立花悠だよ。あと、同じ年だから、敬語じゃなくていいよ」
「じゃあ、悠くん!ありがとう!」
微笑みながら頷いて、悠くんはこの場を去っていったのだった。
あの時の悠くんを思い出しながら、話す。
「悠くんって最初のイメージは、優しくて真面目で親切だったから」
「悠くんと話して、好きなもの——同じシマエナガが大好きって知れて嬉しくて!」
「うん!」
「好きなもののことになるとめっちゃキラキラしててさ!めっちゃ良いなって思ってる!」
「ありがとう!」
すると、ずっと胸の中に秘めていた想いが思いっきりが込み上げてきた。
伝えたい。けど、迷惑にならないかな……。
「っ、」
ふいに文化祭実行委員会で見た、悠くんと親しげな一年生の姿が思い浮かんだ。
とても笑顔で二人とも笑っていた。まるで、二人だけの世界があるみたいに、シャボン玉の膜みたいなキラキラとした壁があそこにはあった。
悠くんはあの人が好きなのかな……あの人は悠くんとどのような関係なのかな……あの人は、悠くんのことが好きなのかな……。
そう、疑問に頭が埋め尽くされ、正常に動かない。
「悠……くん」
「うん?」
悠くんに迷惑かけたくないっ……けど、どうしてもっ、伝えたい!!
「っ、ずっと伝えたかったんだけど、悠くんと話した日からずっと好きでしたっ!!」
「……っ」
「よ、良かったら、私と付き合ってくださいっ!!」
恐る恐る手を差し出す。
「……っ、ごめんっ」
「……っ!!」
「あのっ、別に東雲さんが嫌い、って訳じゃないよ?」
手を引っ込めて、悠くんの言葉に耳を傾ける。
「むしろ!好きなものこんだけ語れるの、東雲さんしかいないから、好きなんだけどさ!」
「……うん」
「でもっ、それは、友達として、で……東雲さんの気持ちには答えられない、かも……」
「……うん。ありがとう、悠くん」
「いやいや」
「僕の方こそ、ごめんっ」
「いや、ちゃんと悠くんの気持ち知れて良かった。私の想い、聞いてくれてほんとありがとう」
戸惑いながら「うん」と頷いた彼と少し先の別れ道まで歩いて解散をした。
少し歩き、悠くんの後ろ姿を見る。今日の空は今の私を写しているかのような曇り空。とてもどんよりとしていた。
「っ……、くっ……っ」
あー、バカだな、私。
返事なんて、わかりきってたのに……。
溢れ出る涙を、あのお気に入りなシマエナガ柄のハンカチで拭きながら、一人で帰った。
その一週間後、お昼休みに中学が一緒で仲の良い友達、澪梨とご飯を食べていた。
「……本当に、伝えなければ良かった」
失恋の痛みがまだ癒えない私は、そう呟きながら机に突っ伏すと、澪梨に「おー、これもう五回目だな」と言われる。
「だって……」
辛辣な言いように涙が溢れそうになる。
「辛かったね……でも沙良は、悠くんを好きになれて、後悔はしてないでしょ?」
「……うん」
涙ぐんだ声で返事をする。
「なら、大丈夫だよ」
澪梨が優しく頭を撫ででくれた。
「……っ、うん」
澪梨って、さっきまで辛辣なこと言ってたくせに、ほんっとたまに優しくなるから困るんだよね。
「これから沙良はどうしたいの?」
「前みたいにはもういかないかもしれないけど、これからも、友達として、悠くんと好きなものの話をしたいっ」
だって、そんな好きなものに正直な、優しくて自分らしい彼が好きだから。
これからも、キラキラの顔をしながら好きなものを話す彼と話したい、!
「いつかまた悠くんと話せる日が来るよ。悠くんってそうやって曖昧にする人じゃないんでしょ?」
「うん。悠くんは、絶対そんなことしないっ!」
涙を拭いて、顔を上げる。
「うん。それじゃあ!気分転換に今日は、うちとお出かk……」
「東雲さんっ!今日の帰り——」
澪梨の言葉を遮って教室中に響く勢いで大好きな、悠くんの声が聞こえた。勢いよく振り向くと、そこには悠くんがいたのだ。
え、っ……!
世界がスローモーションのようになる。雨粒もゆっくり落ちているように見えた。
「今日の帰り、一緒に帰らないっ!?」
「う、うんっ!わかったっ!?」
いきなり過ぎて、返答が合っているのか、いないのか、分からないような返事をしてしまった。
連日雨が降り、ジメジメしてきた頃。
東雲さんに告白されたあの日から一週間。東雲さんは他のクラスの仲の良い友達と話していて、授業もペアにならない方の隣で、自然と喋ることがなくなった。
あれから、ずっと真剣に考えてるけど……。
「どうしよう……」
頭を悩ませていると、隣から今日の天気にそぐわない、呑気な声が飛んできた。
今日も雨が降っているので、屋上に続く階段でお弁当を食べていた。
「悠センパイ、どしたの〜?」
横を見ると呑気そうにブロッコリーを食べているいっちーがいた。
「あの、この前文化祭実行委員会で一緒だった人に片思いをされてて、その日の帰り道に告白されちゃって……」
「恋愛相談かぁ〜」
「僕、人に恋したことないから、どうすればいいのかなー、って」
「う〜ん、まぁ僕も恋したことないから、まともなアドバイスは出来ないけどさ!」
箸を置いて、いっちーは僕を見つめる。
「まず、悠センパイは告白されて、どう思ったの?」
「告白されて……」
「うん!」
「素直に、、嬉しかった!僕も東雲さんのことが好きだし!でも、その僕の好きは恋愛の好きじゃなくて……」
「うん」
静かに頷くいっちー。
「東雲さんとはこれからも、友達でいたいっ!そして、これからも好きなものの話を、たくさんしたいっ!」
「うん!それが悠センパイの本当の気持ちなんだね!」
「うんっ」
「じゃあ、それをちゃんと相手に伝えないと!嘘つかれる方が余計に相手が傷付くことにかもしれないし。だから、ちゃんと自分の思いを伝えて、相手の思いもちゃんと聞いてきな!」
ピースしながらかっこよく伝えてくれる。
「行動しなきゃ今の状況は変わらないからね!今のままが嫌なら、ちゃんと行動しないと!相手も、悠センパイとは今のままじゃ嫌だと思うし!」
「うん!」
そうだよ。東雲さんはちゃんと自分の思いを伝えてくれたんだ。今度は僕の思いを伝えないと!
「ありがとう!」
「頑張れ!」
僕はご飯を食べ終えてすぐに教室へと向かった。教室に入ると東雲さんの後ろ姿が見えた。
「東雲さんっ!今日の帰り——」
「う、うん!わかったっ!」
振り向いた東雲さんは驚いていた。
私——東雲 沙良は文化祭実行委員会の話し合いが終わり、悠くんと学校の最寄りのショッピングモールに行った。
その帰り道。悠くんは、さっき買ったシマエナガの小さいぬいぐるみを手に持ち、優しく撫でながらしゃべっていた。
「でね!このシマエナガは〜」
悠くんはシマエナガの話になると、本当に生き生きしていて、とても目がキラキラしているんだ。
その様子だけで、本当にシマエナガが大好き!ってことが伝わってきて、私まで嬉しくなってしまう。
「やっぱ悠くんって本当にシマエナガ好きなんだね!」
「うん!!可愛いからね!」
そう言う悠くんはとても笑顔だった。
まるで、一年生の時とは人違いのように、眩しい、心の底からの、ありのままの笑顔だった。
そこで、悠くんを初めて見かけた頃を思い出す。
私が悠くんを初めて見かけたのは、高校一年生の春で。一年の頃はクラスが違くてなんも接点がなかったんだけど、偶然、悠くんと話すキッカケになることがあったんだ。
私がお気に入りのハンカチの落とし物をした時のこと。
何回も放課後の校舎を探し回ったんだけど、どこにも見当たらなくて。諦めようと、思っていた時——誰かに優しく肩を叩かれたのだ。
「ねぇ、君!」
手にはお気に入りの、シマエナガ柄のハンカチがあった。
「あ、はいっ!」
「探してるのって、もしかして これ?」
差し出された彼の手を見ると、可愛いシマエナガがにっこり笑っていた。
「あ、これ!!ほんとありがとう、ございますっ!」
「良かった。それ、好きなの?」
微笑みながら、シマエナガを指差しながら相手は聞いてきた。
「はい!かわいくて大好きなんです!」
「僕もこれ、好きなんだよね。じゃあ、ちゃんと大切にするんだよ。今度は落とさないようにね」
それだけ残し、去る彼を見て、言いたいことを忘れていて「あのっ!」と、彼を呼び止める。
「名前、なんて言うんですか?」
「立花悠だよ。あと、同じ年だから、敬語じゃなくていいよ」
「じゃあ、悠くん!ありがとう!」
微笑みながら頷いて、悠くんはこの場を去っていったのだった。
あの時の悠くんを思い出しながら、話す。
「悠くんって最初のイメージは、優しくて真面目で親切だったから」
「悠くんと話して、好きなもの——同じシマエナガが大好きって知れて嬉しくて!」
「うん!」
「好きなもののことになるとめっちゃキラキラしててさ!めっちゃ良いなって思ってる!」
「ありがとう!」
すると、ずっと胸の中に秘めていた想いが思いっきりが込み上げてきた。
伝えたい。けど、迷惑にならないかな……。
「っ、」
ふいに文化祭実行委員会で見た、悠くんと親しげな一年生の姿が思い浮かんだ。
とても笑顔で二人とも笑っていた。まるで、二人だけの世界があるみたいに、シャボン玉の膜みたいなキラキラとした壁があそこにはあった。
悠くんはあの人が好きなのかな……あの人は悠くんとどのような関係なのかな……あの人は、悠くんのことが好きなのかな……。
そう、疑問に頭が埋め尽くされ、正常に動かない。
「悠……くん」
「うん?」
悠くんに迷惑かけたくないっ……けど、どうしてもっ、伝えたい!!
「っ、ずっと伝えたかったんだけど、悠くんと話した日からずっと好きでしたっ!!」
「……っ」
「よ、良かったら、私と付き合ってくださいっ!!」
恐る恐る手を差し出す。
「……っ、ごめんっ」
「……っ!!」
「あのっ、別に東雲さんが嫌い、って訳じゃないよ?」
手を引っ込めて、悠くんの言葉に耳を傾ける。
「むしろ!好きなものこんだけ語れるの、東雲さんしかいないから、好きなんだけどさ!」
「……うん」
「でもっ、それは、友達として、で……東雲さんの気持ちには答えられない、かも……」
「……うん。ありがとう、悠くん」
「いやいや」
「僕の方こそ、ごめんっ」
「いや、ちゃんと悠くんの気持ち知れて良かった。私の想い、聞いてくれてほんとありがとう」
戸惑いながら「うん」と頷いた彼と少し先の別れ道まで歩いて解散をした。
少し歩き、悠くんの後ろ姿を見る。今日の空は今の私を写しているかのような曇り空。とてもどんよりとしていた。
「っ……、くっ……っ」
あー、バカだな、私。
返事なんて、わかりきってたのに……。
溢れ出る涙を、あのお気に入りなシマエナガ柄のハンカチで拭きながら、一人で帰った。
その一週間後、お昼休みに中学が一緒で仲の良い友達、澪梨とご飯を食べていた。
「……本当に、伝えなければ良かった」
失恋の痛みがまだ癒えない私は、そう呟きながら机に突っ伏すと、澪梨に「おー、これもう五回目だな」と言われる。
「だって……」
辛辣な言いように涙が溢れそうになる。
「辛かったね……でも沙良は、悠くんを好きになれて、後悔はしてないでしょ?」
「……うん」
涙ぐんだ声で返事をする。
「なら、大丈夫だよ」
澪梨が優しく頭を撫ででくれた。
「……っ、うん」
澪梨って、さっきまで辛辣なこと言ってたくせに、ほんっとたまに優しくなるから困るんだよね。
「これから沙良はどうしたいの?」
「前みたいにはもういかないかもしれないけど、これからも、友達として、悠くんと好きなものの話をしたいっ」
だって、そんな好きなものに正直な、優しくて自分らしい彼が好きだから。
これからも、キラキラの顔をしながら好きなものを話す彼と話したい、!
「いつかまた悠くんと話せる日が来るよ。悠くんってそうやって曖昧にする人じゃないんでしょ?」
「うん。悠くんは、絶対そんなことしないっ!」
涙を拭いて、顔を上げる。
「うん。それじゃあ!気分転換に今日は、うちとお出かk……」
「東雲さんっ!今日の帰り——」
澪梨の言葉を遮って教室中に響く勢いで大好きな、悠くんの声が聞こえた。勢いよく振り向くと、そこには悠くんがいたのだ。
え、っ……!
世界がスローモーションのようになる。雨粒もゆっくり落ちているように見えた。
「今日の帰り、一緒に帰らないっ!?」
「う、うんっ!わかったっ!?」
いきなり過ぎて、返答が合っているのか、いないのか、分からないような返事をしてしまった。


