秘密を隠した僕たちは、極端な世界を壊す

 五月下旬。
 実際に文化祭の準備やらを始めることになった。

 いつものようにお昼をいっちーと屋上で食べた後、五限目のLHRの時間。
 担任の先生から文化祭実行委員を決めなければならないことを告げられ、誰がやるかをまずクラスで話し合うことになった。

「誰かやる人とかいないのかな?」

 奇跡的にクラス替えでまた隣になった東雲さんが僕に話しかけた。

「そうだね……みんな部活とかあって忙しそうだもんね〜」
「うん、文化祭実行委員会って、結構放課後残るって聞いてたし、部活に打ち込んでる人だったらムズいかもね」
「だよね、東雲さんは何か部活入ってるんだっけ?」
「うん!私は美術部だよ〜。でもうちの部活ゆるいからね。別に委員会、入れなくはないけどって感じ!悠くんは?」
「僕は帰宅部だよ〜せっかくだし入ってみようかな」
「え!いいんじゃない?悠くんに似合いそう!」

 めっちゃ良い!と言わんばかりの顔をする東雲さんに笑いながら「そう?」と答えると、「うん!」と元気良く頷かれた。
 やってみようかな……文化祭実行委員会に入れたら、もしかしたら今の世界を壊せるキッカケになれるかもしれない。

「じゃあ、やってみようかな……」

 こんなに褒められるのはいっちーしかいないから、あまり慣れていなくて、少し恥ずかしそうに言うと、「いいじゃ〜ん!」と微笑まれた。

「挙手するの、少し恥ずかしいよね?私、指名してあげるよ!」
「え、いいの?ありがとう」

 そう言った東雲さんは周りのしばらく見回してから、綺麗に手を上げた。
 学級委員長に名前を呼ばれた東雲さんは僕を指名した。先生に褒め言葉とクラスメイトたちからの拍手をもらった。

「じゃあ、あともう一人。誰かやりたい人とか、今みたいに指名でもいいよ〜」
「はい!私やります!」

 学級委員長が言ったすぐに手を上げたのは東雲さんだった。

「他にやりたい人などいませんか?……いなさそうなので、この二人に文化祭実行委員会を任せたいと思います」

 クラスは短い拍手に包まれ、学級委員長の進行で次に進められた。
 隣の東雲さんは僕にだけ聞こえる声で「一緒に頑張ろうね!」と一緒にピースサインをした。僕も「うん!」とピースサインを返した。
 LHRが終わった後、担任の先生に呼ばれ、文化祭実行委員会は今日の放課後集まるように、と言われた。



 放課後になり、東雲さんと先生に伝えれられていた場所に向かった。
 教室の扉を開けるとそこには、元気良く笑ういっちーがいた。
 まぁ、いっちーならやるだろうなとは思っていたのでそんなには驚かなかった。
 いっちーもこっちに気がついたみたいで軽く手を振ってくれた。手を振り返すと、東雲さんに

「知り合い?」

 と言われ、頷いた。
 とりあえず黒板に張ってある座席表を見て指定された席に移動する。席に座ると近寄ってきたいっちーに喋りかけた。

「やっほー、いっちー」
「悠センパイやっほー!そのお友達さん?も、こんにちわ!」

 挨拶された東雲さんは「こんにちは〜!」と挨拶していた。

「まさか悠センパイが文化祭実行委員会をやるなんて……!まぁ!なんとなくやるとは思っていたけど!」

 驚いた顔からすぐにウィンクをしてきた。本当に表情が豊かなんだよな。
 僕はもともと、表情は人並みには豊かな方だと思っているけど、好きなものに正直になれている——ここ最近の自分は表情が豊かになっていると思う。

「いっちーの入った理由は、めっちゃ想像つくな〜」
「でしょ!悠センパイの入った理由はなんなの〜?」
「言わなくても分かるでしょ〜」

 微笑みながら言うと、いっちーも微笑みながら「それもそっかぁ〜」と嬉しそうに呟いていた。
 すると扉が開き、先生が来たのでいっちーは「じゃっ!」と言い、席へと戻ってった。

「仲良いんだね、あの子一年生?」

 と、東雲さんがいっちーの方を見ながら言った。

「うん!色々あって、めっちゃ仲良いんだよね!」

 ふ〜ん、と呟く東雲さんは、頬が緩んでいる僕を見て、「付き合ってるの?」と聞かれ、びっくりする。

「いやっ!そんなんじゃないよっ!?ただ、僕がいっちーに助けてもらって、それから一緒に過ごしてるだけだよ」

 東雲さんはいっちーの方を気にしながら頷いていた。
 その後、先生が話し始め、実際に文化祭実行委員会の活動が始まった。



 文化祭実行委員会は一時間程度で解散となった。

「悠くん!」
 
 いつも放課後はいっちーと過ごしていて、その流れでいつも一緒に帰っていたので、せっかく今日も一緒に帰れそうなので、いっちーの方に行こうとしたら、準備途中でドタバタしている東雲さんに呼び止められた。
 僕を呼ぼうとした東雲さんがこっちに寄った時、カバンから少しはみ出ていたノートやら教科書やらが床に雪崩のように落ちてしまった。

「うわわわわっ!!」
「え、大丈夫?!」

 僕は東雲さんに近寄り、かがんで床に落ちたノートや教科書を何冊か拾う。
 最後の一枚を拾おうとした時に、東雲さんと手が触れた。

「あっ……」

 突然の出来事に手が止まった。東雲さんも手が止まっていたので、僕がノートを拾って渡す。

「はい!」
「あ、ありがとう!」

 さっき立とうとした時にいっちーがこっちを見ていた気がしたので、いっちーに一緒に帰ろうと伝えようとしたけど、そういえば東雲さんに呼び止められたんだった。

「そういえば、さっき何聞こうとしてたんだっけ?」
「ええっと!あのさ、良かったら一緒に帰らない?」
「あ……っ」

 いっちーと帰ろうとしていたし、まさか帰ろうと提案されると思っていなかったから、思わず声が出てしまった。
 いっちーの方を見ると、今の会話を見ていたっぽくて、口パクとジェスチャーで「一緒に帰ってあげな!」訴えていた。
 じゃあ、せっかくだし……。


「うん。いいよ」
「やった!ありがとう!」

 東雲さんはとても喜んでいた。



 東雲さんと一緒に校門をくぐった後、東雲さんの提案でショッピングモールに行くことになり、楽しいショッピングモールも過ごし終わって、とても満喫しながらの帰り道。

「でね!このシマエナガは〜」

 僕の大好きなシマエナガのことを話していると東雲さんが急に笑い出した。

「やっぱ悠くんって本当にシマエナガ好きなんだね!」
「うん!!可愛いからね!」
「悠くんって最初のイメージは、優しくて真面目で親切から、悠くんと話して、好きなものーー同じシマエナガが大好きって知れて嬉しくて!」
「うん!」
「好きなもののことになるとめっちゃキラキラしててさ!めっちゃ良いなって思ってる!」
「ありがとう!」

 これもいっちーのおかげだな。後でまたいっちーに教えてあげーよっと!
 そんなことを思っていたら、東雲さんが急に少し俯いて、手を硬く握っていた。

「悠……くん」
「うん?」

 どうしたんだろう……?
 すると、少しの間黙り込んでいた東雲さんが口を開いた。

「っ、ずっと伝えたかったんだけど、悠くんと話した日からずっと好きでしたっ!!」
「……っ」

 とてもびっくりして声が出なかった。
 え、それって、恋愛感情の……ってこと、?

「よ、良かったら、私と付き合ってくださいっ!!」

 どうやら、恋愛感情の方みたいだ。
 東雲さんとは好きなものを語れて、とても気楽に話せて、一緒にいて楽しいけど……。

「……っ、ごめんっ」
「……っ!!」
「あの、別に東雲さんが嫌いって訳じゃないよ?むしろ!好きなものこんだけ語れるの、東雲さんしかいないから、好きなんだけどさ!」
「……うん」
「でもっ、それは、友達として、で……東雲さんの気持ちには答えられない、かも……」
「……うん。ありがとう、悠くん」

 褒められて「いやいや」と否定する。

「僕の方こそ、ごめんっ」
「いや、ちゃんと悠くんの気持ち知れて良かった。私の想い、聞いてくれてほんとありがとう」

 戸惑いながら「うん」と頷き、少し先の別れ道まで歩く。
 もうすぐ雨が降り始まりそうで、今日は冷たさが感じる曇りの日だった。その雨独特の匂いがずっと鼻について、離れなかった。