秘密を隠した僕たちは、極端な世界を壊す

「ありのままの自分を知ろう!いわゆる自分磨きだよ♪」


 お昼ご飯を食べた後、僕たちはそれぞれの教室へと向かい、午後の授業を受けた。午後の授業も終わり、屋上へと向かった。

 自分磨き……って何するんだろう。
 自分らしく生きるには、まず自分自身をよく知ることが大切だって言っていたけど、どうやったら自分自身を知れるんだろう。
 でも、昼休み、自分の本心に触れて分かった。
 僕は、自分らしく生きたいんだ!ってこと。可愛いものが好きな自分を認めて、好きなものに正直に生きたい!ってこと。
 なら、誰よりも自分らしく生きてるいっちーに言われたことをやんないと!そうは言われても、まだ何をすればいいのかわかんないけど……でも!こんな気持ちの自分を、まずは認めることがカギだよね。

「よしっ」

 屋上に着き、アスファルトに足をつける。上を向くと、そこにはお昼と変わらない青空が広がっていた。

「悠センパイやっほー」
「やっほーいっちー」
「どう?なんか掴めた?」
「うん。掴めたよ」
「まず、僕は自分らしく生きたいって思ってて、好きなものに正直になりたい!ってことが分かって、」
「おぉ〜!!いいね!」

 とても大きなリアクションで喜んでくれるいっちー。なんか嬉しいな。

「だから、その気持ちを認めてあげたい、って思ったんだよね」
「うんうん!めっちゃ素敵だと思う!!」
「改めてだけどさ、僕らは人間なんだから、可愛いものも、かっこいいものも、個性的なものも、どんなものも、好きになっていいんだよね。全然おかしいことじゃなくて、自然なことなんだから!」
「僕は、悠センパイの心の底からの大好き!って気持ちも、少しだけだけど好きかな、って気持ちも、全部が悠センパイの気持ちで、それは他の誰に言われても自分だけの感情なんだから、その気持ちに正直に生きてほしいって思ってる」
「うん」
「だから、好きなものには、ちゃんと大声で大好き!って言おう!」
「うん!」

 いっちーの真っ直ぐな気持ちが胸に直接届く。一生忘れないほど、強く突き刺さっている。

「ねねー!」

 高らかに言ったいっちーは屋上を走り回り、三十メートルくらい先に立って向かいあった。

「好きなもの、叫んでみなよー!」
「好きなものー?」
「そう!例えばぁー!」

 大きく息を吸って、いっちーは思いっきり叫んだ。

「僕は、自分らしく生きる毎日が大好きだー!!かっこいいものも、可愛いものも、自分らしくて個性的ものも、全部、ぜーんぶっ!大好きだ〜!!」
「ぼ、ぼくはっ!」

 つられて僕も声に出していた。

「僕は!可愛いものが大好きで、でもっ、かっこいいものも好きだー!!」
「あとっ!!可愛いからっ!シマエナガが大好きー!!!」

 こんな大声を出したのは初めてで少し息切れしてしまった。
 息を整えていると、向かい側から笑い声が飛んで来てたのでそっちを向くと、とても笑顔でグーサインをしていた。

「さいっっっこう〜〜!!!!」

 その後に両手を空に伸ばし、空を仰いでいた。

「好きなものに正直になるって、こんなに楽しいんだね!」
「でしょ〜!!めっちゃ楽しいんだよ!」
「うん!楽しい〜!!」

 僕も空を仰ぐ。とても輝いてる空のように見えた。

「いい笑顔してるね!」

 と、いつの間にか側にいた いっちーに肩をつつかれた。

「空、綺麗だね〜!」
「うん。とても、綺麗だね」
「いつもこんな世界をいっちーは生きているんだね」
「もちろん!でもね、僕の世界は今よりもっともーっと!輝いてて、楽しいよ!常に自分らしく生きてるからね!!」
「だから!そんな世界をみんなに生きてほしいから、僕は今の差別にまみれた世界を壊すんだ!」
「うん!僕もっ!差別に悩まないで、誰もが自分らしく、好きなものに正直になれる世界を作りたい!!」
「悠センパイ!今の世界を壊して、自分らしく生きる人たちに溢れた、新しい世界を一緒に作ろう!」

 入学式の翌日にも聞いたこの言葉は、僕は本当に作ろう!とは思っていなくて、ただ僕を助けてくれて、自分がずっと憧れていた「自分らしく生きる人」で、完全に純粋な憧れによるものだったけれど......今なら、堂々と胸を張って言える。
 僕は、いっちーと本当に新しい世界を作りたい。今の世界を壊して、自分らしく生きる人たちを増やしたい。

「世界を壊す同盟。ハイタッチしよーぜっ」

 急にかっこいい口調になったと思ったら、八重歯を出して笑いながら僕の目の前に手を出してきた。

「うん!!」

 パシッと音がなって、手を合わせた僕たち。
 これから、新しい世界をいっちーと作って、たくさんの笑顔を届けるんだ!
 横を見ると、キラキラと眩しい笑顔で空を見ていた。

「よしっ!じゃあさ!今日は時間まだあるから、お出かけしよ!!」
「いいね!でも、どこに出かけるの?」
「それはもちろん!」
「お互いの好きなところっ!!」



 僕たちは学校から歩いて二十分のところにあるデパートに買い物へ行った。

「僕、私服買いたかったから悠センパイと行けてよかったな〜!」
「私服っていつもどんなの着るの?」
「う〜ん、気分にもよるけど、ん〜今日はこれ!!」

 するといくつか服を選んできて僕に見せてきた。カジュアルな服装で、とても爽やかでかっこいい雰囲気のコーデを選んでいた。

「そこに、この僕が今持っているお気に入りの もちたん。 っていうぬいぐるみを家にあるバックにつければ完成かな!」

 もちたん。というのは、昔流行っていた、おもちの国からやってきた笑顔を届ける、白くてまんまるのつぶらな目が可愛い、おもちのキャラクターなのだ。
 でも、もう一年前くらいに流行が終わり、今はたまに好きと言っているクラスメイトがいるが、いっちーが好きだとは。
 もちたん。は結構個性派で、可愛い見た目の割に、言動がかっこよくて、そのギャップでとても人気を集めていたのだ。
 僕も流行っていた時期だけだったけど、もちたん。が好きで、ぬいぐるみも持っている。今度いっちーにあげようかな?

「いいんじゃない?いっちーらしくて、最高じゃん」
「でしょ〜!!」
「これ、買おっかなぁ〜」
「カゴ持ってくるよ」
「悪いから一緒持ってこ〜!」

 僕は頷いて一緒にカゴを取りに行った。すると、取りに行ったカゴの近くにとても可愛らしい商品が売られているコーナーが見えた。
 人が少しいて何を売っているのかは見えなかったけど、何が並んでいるんだろう......。
 カゴを手に取ると、気になっているコーナーが少し人が少なくなり並んでいる商品を見ることが出来た。
 えっ!!!!

「シマエナガ!」

 そう小さく叫ぶと、いっちーが僕の視線の先を辿るようにしてシマエナガを見た。
 もっと近くで見たい衝動が抑えられず、いっちーの手を引いてシマエナガのコーナーへ向かった。

「かわいい……っ!!!」
「シマエナガだ!悠センパイ好きだもんね!確かに!めっちゃかわいいね!!」
「はぁっ……!!」

 目の前にある可愛い、無数と思えるシマエナガにとても目をキラキラ輝かせていると、隣から吹き出して笑う声が聞こえてきた。

「?どうしたの?」
「いや、悠センパイ、めっちゃかわいいなぁって。新しい一面知れて、嬉しい」
「だってこんな可愛いんだよ?シマエナガ。普通でいられる訳ないじゃん!!」
「こっちもかわいいし、これもかわいいし……!!ほんとシマエナガ最高っ!!」

 せっかくなので新作だという新しいデザインのシマエナガのぬいぐるみを三つ買うことにした。一つは学校のカバンにつけて!もう二つは家に飾っておこう!って思って。



 お店を出た後、さっそく買ったシマエナガの可愛い1つ(全部可愛いんだけれど!)を学校のカバンにつけた。

「好きなもの、たくさん買えて良かった〜!!」

 いっちーが呑気に背伸びをしながら言う。
 あの後、また違うデパート内のお店をいくつか回って、シマエナガやら売れ残っていたもちたん。のグッズやらを買った。
 学校のカバンにシマエナガをつけていこうって思えたのも、全部いっちーのおかげだ。
 ほんとにいっちーには感謝しかない。

「いっちー」
「んー?」
「あの時、僕を助けてくれて、ありがとう」
「いーえー!悠センパイとは友達になれそうだと思ってたし!」
「あの状況の僕を見て?」

 本当にカッコ悪いと思うんだけどな……。

「僕、最初にも言ったじゃん!あの状態で反抗できるのは、そこら辺の人じゃできないことだよ」
「なのに、あの状態で反抗した……つまり、怪我をするかもしれないって分かってたけど、それでも守りたいものがあったってことでしょ?」
「うん」
「だから、僕はその覚悟に惹かれたんだよ♪」

 と、ウィンクをしながら笑ういっちー。

「悠センパイと一緒に世界を壊したいってゆー夢がまさかこんな早く叶うとはなぁ~!」
「まだ何も壊してないけどね」

と微笑みながらツッコむと、「いや!もう悠センパイの心を壊してるから世界壊してる真っ最中だよ!」と言われたので、たしかに。と、納得してしまった。


 その後は日も沈みそうだったので、解散して家に帰った。