一年生が入学して初めての月曜日。
この前、世界を壊す理由を聞いた時は金曜日で、土日を挟んでの登校だった。
その日のお昼休み、いつも食べている中庭で一人、ご飯を食べようと教室を出ると、教室の横にある階段の踊り場でとある二人が喧嘩をしているようだった。
中庭に行くにはそこの横を通らなければ行けなかったので、静かに気配を消して通ろうとしたら「あれ?」と声をかけられた。
声がした方を向くとそこにはいっちーがいて、思わず僕は驚いて足を止めた。
いっちーは気づいてくれたのが嬉しかったのか、笑顔で手を振ってきた。その隙に相手はそそくさに帰っていた。
不意に見えたブレザーの左肩の部分に、赤い線が入っていた。いっちーとは同じクラスなのだろうか、大丈夫かな。
「悠センパイじゃ〜ん!やっほー!何?お昼?」
「いっちー、うん。これからお昼」
「え!じゃあ、一緒に食べようよ!!」
いっちーはとても目を輝かせている。「いいよ」と答えると、宇宙に行きそうなほどの大ジャンプをしていた。
「今お弁当持ってくる!え、どこで食べる!?あ!屋上で食べよ!ちょっと待っててねー!!」
流れるようにこの場を去り、お弁当を持ってきた後、二人で並んで屋上へと向かった。
その途中、さっきから気になっていたことをいっちーに質問した。
「さっき踊り場で何やってたの?」
「うん?あー、あれはあいつがクラスのみんなを陰キャと陽キャで差別してて気に食わなかったし、入学式の時からそーゆー差別とかしてくる奴でみんな苦手だったから、注意してやった!」
「差別……」
「うん。だってさ?みんな同じ人間なのに、ただ暗かったら陰キャ、明るくて元気だったら陽キャ、っておかしくない?そんなん気分によって変わるのにさ。そもそもそういう目で見てるから、勝手な偏見が生まれてその人をその偏見の中でしか測れなくなって、人をちゃんと知ることが出来なくなちゃうんだよ」
「あと!!ふつーに差別だからね!ほんと大嫌い!!」
「……それも、世界を壊したい理由の一つ?」
「うん!だって、その差別で苦しんでる人たちは、僕も僕のクラスのみんなたちの他にも、どこの学校の生徒でも、どこの社会人でも、いるでしょ?」
「うん......僕もその差別で苦しんでた」
「だから、そんな差別に左右されないで、誰もが自分らしく生きることができたら〜って!」
そう語るいっちーは上を向き、拳を胸の前で握っていて、その様子で本当にそう思っていることが分かった。
いっちーはその差別を無くすために、ちゃんと行動に移して実践しているんだ。
……かっこいいな。
「いっちーは、いつも自分に素直だよね」
「ふっ、そうですとも〜!自分に正直に、が自分の信条だもんね〜!!」
また、いっちーが八重歯を見せて笑っていた。
屋上に着き、アスファルトに腰を下ろしてお弁当袋を並べる。
「あっ……」
「?」
しまった。いつもは一人で食べるから、お弁当を包んでいる風呂敷は僕が好きな 可愛いシマエナガの柄なのだ。
一人でその風呂敷に包まれたお弁当箱を出すのを戸惑っていると、いっちーが「なーにしてんのっ!」と僕のお弁当袋の中の取り出す。
目の前に可愛いシマエナガが現れた。
「っ……」
恥ずかしさで顔を背けてしまう。やっぱり男子なのにこんな可愛いのなんて、おかしいんじゃ……。
「悠センパイどうしたの?」
いっちーの方を恐る恐る見ると、なんも気にしていないようで、なんならキョトンと、はてなマークを浮かべいるようだった。
「それ、やっぱりおかしいでしょ、」
「??? なにがー?」
「僕、男子なのに……」
するとまじまじといっちーに顔を見られ、その後に大きなため息をつかれた。
ほら、やっぱり……。
「金曜日、悠センパイは僕になんて言ったんだっけ?」
「え? えぇーと……どれ、のこと?」
「悲しいぃ……あんなに熱弁したのになんも伝わっていなかったのかぁ……しかも悠センパイ自身が言ってたことまで忘れてるし、」
とても悲しい気持ちをいっちーは涙を拭う仕草をして、体全体で表現している。
「うっ、ごめんなさい」
「金曜日、悠センパイは、僕に、性別の差別がない世界を一緒に作ってみたい、って言ってくれたじゃん!」
「はい……」
「なら、その本人が何よりも自分らしくないと!」
「自分らしく……?」
「うん!ありのままの自分を認めて、愛さないと!」
「ありのままの自分を愛す……」
「あと!昨日も言ったけど、僕は悠センパイがおかしいって全然、未っ熟も思わないよ。僕は別に性別で人を見ようとしないからね〜!てかっ!ご飯早く食べよ!ほらほら!」
そういっちーに促され、一緒に手を合わせる。
「いただきます」
「いっただっきまぁ〜すっ!!」
いっちーの声は青い空にとてつもなく響いていた。
「うわっ!めっちゃ美味しそ〜!!」
お弁当のフタを開けて叫ぶいっちー。美味しそうな香りがする。お腹がなりそうだったので自分のお弁当のフタを開け、口にご飯を運ぶ。
「いっちーはお弁当親が作ってるの?」
「いや!自分で作ってるよ!」
「その反応は親が作ってくれた反応してたよ」
「まぁね〜!でもさ、朝、家で一人でお弁当詰めたやつを見るのと、誰かと一緒に学校とか屋上で見るお弁当って全然違うじゃん?」
「そうかも」
「悠センパイは自分で作ってるの?」
「うん。僕もそうだね」
「じゃあせっかくだし、お弁当のおかず交換こしようよ!」
「わかった。何もらうの?」
「僕、たまご焼き食べたい!僕のもあげるよ!」
「たまご焼きね、はいっ、ありがとう」
基本、僕はお菓子とかでもしょっぱいのが好きなので、たまご焼きも味はいつもしょっぱいのだ。
いっちーの作ったたまご焼きを頬ばると、口の中いっぱいに甘い味が広がって、それはそれでとても美味しかった。
「う〜ん!悠センパイのたまご焼き、しょぱいね!美味しい〜!!」
「いっちーのは甘くてめっちゃ幸せって感じがするね」
「でしょ!僕は絶っっ対に!甘党だからね〜!これだけは譲れない!」
「ふふっ、それなのに僕にたまご焼きくれたの?優しいね」
譲れないとか言ってるのにくれるなんて、面白いな。
そう頬が緩んでいたら、「かわいい!」と突然大声が聞こえてきた。
「突然叫んでどうしたの?」
と、また少し笑いながら聞くと、
「いや、悠センパイの笑顔ってめっちゃ可愛いな!って思ってさ!そんな風に笑うんだな〜って!」
「いや、僕だって笑うよ、人間なんだし」
「それは分かってるけどさぁ?ふふっ」
それから数分間、いっちーはずっと笑っていた。さずがに笑いすぎなんじゃないかと思い、声をかける。
「そんなに笑ってたらご飯食べる時間無くなっちゃうんじゃないー?」
「はいはーい!今から食べますよ〜ん!」
そう言いご飯をかきこみ、口を膨らませていた。ハムスターみたいだな、と心の中でツッコむ。
口が萎んてきた頃、「でもさぁ?」と口を開いた。
「たっくさん笑って過ごして楽しんだ方が、世界楽しめるんだよ!」
いっちーの後ろ側に写っている空は、まるで 佐々木いつき そのものみたいに明るかった。
「あーとっ!好きなものに正直になることも、世界を楽しむ、ひ・け・つ!だからね!」
「僕は男の子なのに可愛いものが好きなんて……じゃなくて、まず!人間なんだから、何を好きになってもいいんだよ。可愛いものも、かっこいいものも、個性的なものも。それは、その人にしかない感性で、その人だけの個性なんだから!堂々と胸張っていなよ!」
「しかも、好きになっちゃダメなものなんて、この世のどこにもないんだからさ!そんなに可愛いものが好きな自分を責めなくていいんだよ。全然自然なことだし!普通すぎるし!」
「自然……普通……」
「好きなものを好きになっているだけじゃん!それのなにがおかしいの?」
まったく問題なし!という顔で言ってのけるいっちー。しばらくいっちーの顔を見つめる。
そうなのか……?そうなんだろうか……?
っ、でも……。
「なにこれぇ〜w」
「こんなの好きなの?w」
「男の子なのに、可愛いもの好きなんて……ねぇ?w」
「気持ち悪っ」
「っ……」
過去のトラウマを思い出して、下を向いてしまう。
僕は……やっぱり……。
「悠センパーイ!!」
「大丈夫ですよ!」
「……!!」
上の方からとても元気な声が聞こえてくる。
そこで自分の本心が ふっ、と浮かんできた。
僕は、僕が好きなものに正直になりたいっ。
僕は、ありのままの自分で……。
「自分らしく、生きよう!!」
自分らしく、生きたいっ!!
自分の本心に触れ、顔を上げた瞬間、八重歯を見せてとても素敵な笑顔でいっちーは笑っていた。
僕の顔を見た いっちーは、かっこよく微笑んで高らかに言った。
「じゃあ、やるべきことは一つだね!」
いっちーが口を開いた時、ちょうどお昼の放送の今とても有名な青春音楽が鳴った。
いっちーが口にした言葉と、その明るい曲調の青空が広がっているミュージックビデオがとてもマッチしていたのだった。
この前、世界を壊す理由を聞いた時は金曜日で、土日を挟んでの登校だった。
その日のお昼休み、いつも食べている中庭で一人、ご飯を食べようと教室を出ると、教室の横にある階段の踊り場でとある二人が喧嘩をしているようだった。
中庭に行くにはそこの横を通らなければ行けなかったので、静かに気配を消して通ろうとしたら「あれ?」と声をかけられた。
声がした方を向くとそこにはいっちーがいて、思わず僕は驚いて足を止めた。
いっちーは気づいてくれたのが嬉しかったのか、笑顔で手を振ってきた。その隙に相手はそそくさに帰っていた。
不意に見えたブレザーの左肩の部分に、赤い線が入っていた。いっちーとは同じクラスなのだろうか、大丈夫かな。
「悠センパイじゃ〜ん!やっほー!何?お昼?」
「いっちー、うん。これからお昼」
「え!じゃあ、一緒に食べようよ!!」
いっちーはとても目を輝かせている。「いいよ」と答えると、宇宙に行きそうなほどの大ジャンプをしていた。
「今お弁当持ってくる!え、どこで食べる!?あ!屋上で食べよ!ちょっと待っててねー!!」
流れるようにこの場を去り、お弁当を持ってきた後、二人で並んで屋上へと向かった。
その途中、さっきから気になっていたことをいっちーに質問した。
「さっき踊り場で何やってたの?」
「うん?あー、あれはあいつがクラスのみんなを陰キャと陽キャで差別してて気に食わなかったし、入学式の時からそーゆー差別とかしてくる奴でみんな苦手だったから、注意してやった!」
「差別……」
「うん。だってさ?みんな同じ人間なのに、ただ暗かったら陰キャ、明るくて元気だったら陽キャ、っておかしくない?そんなん気分によって変わるのにさ。そもそもそういう目で見てるから、勝手な偏見が生まれてその人をその偏見の中でしか測れなくなって、人をちゃんと知ることが出来なくなちゃうんだよ」
「あと!!ふつーに差別だからね!ほんと大嫌い!!」
「……それも、世界を壊したい理由の一つ?」
「うん!だって、その差別で苦しんでる人たちは、僕も僕のクラスのみんなたちの他にも、どこの学校の生徒でも、どこの社会人でも、いるでしょ?」
「うん......僕もその差別で苦しんでた」
「だから、そんな差別に左右されないで、誰もが自分らしく生きることができたら〜って!」
そう語るいっちーは上を向き、拳を胸の前で握っていて、その様子で本当にそう思っていることが分かった。
いっちーはその差別を無くすために、ちゃんと行動に移して実践しているんだ。
……かっこいいな。
「いっちーは、いつも自分に素直だよね」
「ふっ、そうですとも〜!自分に正直に、が自分の信条だもんね〜!!」
また、いっちーが八重歯を見せて笑っていた。
屋上に着き、アスファルトに腰を下ろしてお弁当袋を並べる。
「あっ……」
「?」
しまった。いつもは一人で食べるから、お弁当を包んでいる風呂敷は僕が好きな 可愛いシマエナガの柄なのだ。
一人でその風呂敷に包まれたお弁当箱を出すのを戸惑っていると、いっちーが「なーにしてんのっ!」と僕のお弁当袋の中の取り出す。
目の前に可愛いシマエナガが現れた。
「っ……」
恥ずかしさで顔を背けてしまう。やっぱり男子なのにこんな可愛いのなんて、おかしいんじゃ……。
「悠センパイどうしたの?」
いっちーの方を恐る恐る見ると、なんも気にしていないようで、なんならキョトンと、はてなマークを浮かべいるようだった。
「それ、やっぱりおかしいでしょ、」
「??? なにがー?」
「僕、男子なのに……」
するとまじまじといっちーに顔を見られ、その後に大きなため息をつかれた。
ほら、やっぱり……。
「金曜日、悠センパイは僕になんて言ったんだっけ?」
「え? えぇーと……どれ、のこと?」
「悲しいぃ……あんなに熱弁したのになんも伝わっていなかったのかぁ……しかも悠センパイ自身が言ってたことまで忘れてるし、」
とても悲しい気持ちをいっちーは涙を拭う仕草をして、体全体で表現している。
「うっ、ごめんなさい」
「金曜日、悠センパイは、僕に、性別の差別がない世界を一緒に作ってみたい、って言ってくれたじゃん!」
「はい……」
「なら、その本人が何よりも自分らしくないと!」
「自分らしく……?」
「うん!ありのままの自分を認めて、愛さないと!」
「ありのままの自分を愛す……」
「あと!昨日も言ったけど、僕は悠センパイがおかしいって全然、未っ熟も思わないよ。僕は別に性別で人を見ようとしないからね〜!てかっ!ご飯早く食べよ!ほらほら!」
そういっちーに促され、一緒に手を合わせる。
「いただきます」
「いっただっきまぁ〜すっ!!」
いっちーの声は青い空にとてつもなく響いていた。
「うわっ!めっちゃ美味しそ〜!!」
お弁当のフタを開けて叫ぶいっちー。美味しそうな香りがする。お腹がなりそうだったので自分のお弁当のフタを開け、口にご飯を運ぶ。
「いっちーはお弁当親が作ってるの?」
「いや!自分で作ってるよ!」
「その反応は親が作ってくれた反応してたよ」
「まぁね〜!でもさ、朝、家で一人でお弁当詰めたやつを見るのと、誰かと一緒に学校とか屋上で見るお弁当って全然違うじゃん?」
「そうかも」
「悠センパイは自分で作ってるの?」
「うん。僕もそうだね」
「じゃあせっかくだし、お弁当のおかず交換こしようよ!」
「わかった。何もらうの?」
「僕、たまご焼き食べたい!僕のもあげるよ!」
「たまご焼きね、はいっ、ありがとう」
基本、僕はお菓子とかでもしょっぱいのが好きなので、たまご焼きも味はいつもしょっぱいのだ。
いっちーの作ったたまご焼きを頬ばると、口の中いっぱいに甘い味が広がって、それはそれでとても美味しかった。
「う〜ん!悠センパイのたまご焼き、しょぱいね!美味しい〜!!」
「いっちーのは甘くてめっちゃ幸せって感じがするね」
「でしょ!僕は絶っっ対に!甘党だからね〜!これだけは譲れない!」
「ふふっ、それなのに僕にたまご焼きくれたの?優しいね」
譲れないとか言ってるのにくれるなんて、面白いな。
そう頬が緩んでいたら、「かわいい!」と突然大声が聞こえてきた。
「突然叫んでどうしたの?」
と、また少し笑いながら聞くと、
「いや、悠センパイの笑顔ってめっちゃ可愛いな!って思ってさ!そんな風に笑うんだな〜って!」
「いや、僕だって笑うよ、人間なんだし」
「それは分かってるけどさぁ?ふふっ」
それから数分間、いっちーはずっと笑っていた。さずがに笑いすぎなんじゃないかと思い、声をかける。
「そんなに笑ってたらご飯食べる時間無くなっちゃうんじゃないー?」
「はいはーい!今から食べますよ〜ん!」
そう言いご飯をかきこみ、口を膨らませていた。ハムスターみたいだな、と心の中でツッコむ。
口が萎んてきた頃、「でもさぁ?」と口を開いた。
「たっくさん笑って過ごして楽しんだ方が、世界楽しめるんだよ!」
いっちーの後ろ側に写っている空は、まるで 佐々木いつき そのものみたいに明るかった。
「あーとっ!好きなものに正直になることも、世界を楽しむ、ひ・け・つ!だからね!」
「僕は男の子なのに可愛いものが好きなんて……じゃなくて、まず!人間なんだから、何を好きになってもいいんだよ。可愛いものも、かっこいいものも、個性的なものも。それは、その人にしかない感性で、その人だけの個性なんだから!堂々と胸張っていなよ!」
「しかも、好きになっちゃダメなものなんて、この世のどこにもないんだからさ!そんなに可愛いものが好きな自分を責めなくていいんだよ。全然自然なことだし!普通すぎるし!」
「自然……普通……」
「好きなものを好きになっているだけじゃん!それのなにがおかしいの?」
まったく問題なし!という顔で言ってのけるいっちー。しばらくいっちーの顔を見つめる。
そうなのか……?そうなんだろうか……?
っ、でも……。
「なにこれぇ〜w」
「こんなの好きなの?w」
「男の子なのに、可愛いもの好きなんて……ねぇ?w」
「気持ち悪っ」
「っ……」
過去のトラウマを思い出して、下を向いてしまう。
僕は……やっぱり……。
「悠センパーイ!!」
「大丈夫ですよ!」
「……!!」
上の方からとても元気な声が聞こえてくる。
そこで自分の本心が ふっ、と浮かんできた。
僕は、僕が好きなものに正直になりたいっ。
僕は、ありのままの自分で……。
「自分らしく、生きよう!!」
自分らしく、生きたいっ!!
自分の本心に触れ、顔を上げた瞬間、八重歯を見せてとても素敵な笑顔でいっちーは笑っていた。
僕の顔を見た いっちーは、かっこよく微笑んで高らかに言った。
「じゃあ、やるべきことは一つだね!」
いっちーが口を開いた時、ちょうどお昼の放送の今とても有名な青春音楽が鳴った。
いっちーが口にした言葉と、その明るい曲調の青空が広がっているミュージックビデオがとてもマッチしていたのだった。


