それから隆太が遠征の仕事に行くことになったので、俺はさらに受験勉強に明け暮れた。
時々隆太は時間を見つけて会いに来てくれたり、毎日欠かさずメッセージをくれたり、愛情をくれる。
意外と連絡がマメなのにも驚いた。
【一樹、元気か? すきだ】
ド直球のメッセージを見て、にやにやと顔が緩む。
「バカ。俺もだよ」
画面越しのやり取りを見るだけで心がじんわり温かくなって、勉強の疲れも吹き飛ぶ。
(模試が終われば、隆太と映画だ)
あと、少しの辛抱だと言い聞かせて、歯を食いしばって机に向かった。
そして、ついに――。
「一樹、よくやったな。合格圏内に入ってるぞ」
「マジすか!」
無事に試験が終わり、少しして模試の結果が返ってきた。
講師から受け取ったプリントに記されていたのは輝かしい【A判定】の文字だった。
思わず息を呑む。
一時は成績が低迷していたが、ここにきて偏差値が一気に十上がっていた。
志望校順位でも、十番以内に食い込む好成績だった。
「この短期間でよくここまで努力したな。今の成績のまま行けば、確実に合格を狙っていける。気を緩ませずに、このまま突っ走っていけ」
「……っ、ありがとうございます! 頑張ります」
講師の言葉に胸がいっぱいになり、うっかり泣きそうになった。
「よかったじゃん、一樹! 一緒に東大行こうな!」
「おう。東大生になってまた森戸海岸行くぞ」
「さんせーい!」
近くで会話を聞いていた西本にも祝福され、笑顔がこぼれた。
受験まであと数か月。
マジでこのまま気を緩めなければ、イケるはずだ。
(隆太にも報告しないと……)
そわそわした気持ちで模試結果の写メを撮り、すぐにメッセージを送った。
すると一秒もせずに既読になり【すげぇ!!】と一言送ってきてくれる。
【一樹、かっけぇ!!】
遅れてきたメッセージも、あいつらしい言葉できた。
(ありがとな。お前がいたから、頑張れてる)
そう心から思ったが、俺はメッセージに打ち込まなかった。
数日後のデートで、直接会ったときに伝えたかった。
それから少しして、塾から出た俺は賑やかな街を歩き、駅へと向かう。
隆太がいない日は、そのまま駅の改札へ直行するところだが、ふと立ち止まり、沿道のファッションストリートへと、歩みを進めた。
(うわぁ、てかデートで何着るべ……)
ショーウィンドウに並ぶ冬服を覗き込みながら、急に不安が押し寄せる。
考えてみれば、今まで洋服に無頓着で、適当に目についたものを買っていた。
朔とはずっと幼馴染だったし、恋人になったとて洋服までわざわざ気合をいれようなんて思考がなかった。
だが、隆太とのデートとなると、話は変わってくる。
文化祭の時に見たあいつの私服は、驚くほどおしゃれだった。
ただでさえ、あんなモデルみたいな容姿のいい男の隣を歩くのだ。
俺がダサくて安っぽい服だと、逆に隆太が恥をかくだろう。
(それに、ちょっとでもいいと思ってもらいたしな……)
そうと決まれば、何かいいアイテムを手に入れたい。
模試の成績もよかったし、今日はゆっくりショッピングしてもバチは当たらない……。
――そのときだった。
人混みの向こう側――カフェが立ち並ぶ歩道に、よく知る背格好の女性が歩いてるのが目に入り、俺は足を止めた。
(母さん……?)
肩まである長い髪に、華奢な体格。お馴染みのパンツルックに、高いヒール。
間違いなく、俺の母親だ。
だがその隣を歩く男の方に目が釘付けになった。
「意味分かんねぇ……」
(どうして、隆太が母さんと一緒にいるんだよ)
その場で倒れそうなくらいの、衝撃だった。
キャップを深くかぶり、顔を隠すように俯き加減で歩いているが、そのがっしりとした肩幅、独特の歩き方、すっと伸びた、首筋のラインーーあれは、紛れもなく、俺の恋人。
めまいがするほど、激しい動悸が襲う。
(今日は遠征先の宿で泊まるといってたよな。嘘ついて、なんで母さんと一緒にいるんだよ)
何かが、おかしい。
隆太は俺に大事なことを隠している。
確かめないといけない。でも、確かめるのが怖い。
そう強く想うのに、俺の足は勝手に道路の向こう側へ駆け出していた。
人混みなんて関係ない。車が来ていたって関係ない。
(隆太と、母さんの元へ、今すぐに行かなくちゃ……)
半分パニックになりながらも、ふたりが揃って入って行ったカフェに、俺も時間差で入店した。
見つからないように……でも、確実に会話が聞こえる場所を狙う。
運よく、ふたりが座った窓側の席と通路を挟んだ場所に、通してもらえた。
時々隆太は時間を見つけて会いに来てくれたり、毎日欠かさずメッセージをくれたり、愛情をくれる。
意外と連絡がマメなのにも驚いた。
【一樹、元気か? すきだ】
ド直球のメッセージを見て、にやにやと顔が緩む。
「バカ。俺もだよ」
画面越しのやり取りを見るだけで心がじんわり温かくなって、勉強の疲れも吹き飛ぶ。
(模試が終われば、隆太と映画だ)
あと、少しの辛抱だと言い聞かせて、歯を食いしばって机に向かった。
そして、ついに――。
「一樹、よくやったな。合格圏内に入ってるぞ」
「マジすか!」
無事に試験が終わり、少しして模試の結果が返ってきた。
講師から受け取ったプリントに記されていたのは輝かしい【A判定】の文字だった。
思わず息を呑む。
一時は成績が低迷していたが、ここにきて偏差値が一気に十上がっていた。
志望校順位でも、十番以内に食い込む好成績だった。
「この短期間でよくここまで努力したな。今の成績のまま行けば、確実に合格を狙っていける。気を緩ませずに、このまま突っ走っていけ」
「……っ、ありがとうございます! 頑張ります」
講師の言葉に胸がいっぱいになり、うっかり泣きそうになった。
「よかったじゃん、一樹! 一緒に東大行こうな!」
「おう。東大生になってまた森戸海岸行くぞ」
「さんせーい!」
近くで会話を聞いていた西本にも祝福され、笑顔がこぼれた。
受験まであと数か月。
マジでこのまま気を緩めなければ、イケるはずだ。
(隆太にも報告しないと……)
そわそわした気持ちで模試結果の写メを撮り、すぐにメッセージを送った。
すると一秒もせずに既読になり【すげぇ!!】と一言送ってきてくれる。
【一樹、かっけぇ!!】
遅れてきたメッセージも、あいつらしい言葉できた。
(ありがとな。お前がいたから、頑張れてる)
そう心から思ったが、俺はメッセージに打ち込まなかった。
数日後のデートで、直接会ったときに伝えたかった。
それから少しして、塾から出た俺は賑やかな街を歩き、駅へと向かう。
隆太がいない日は、そのまま駅の改札へ直行するところだが、ふと立ち止まり、沿道のファッションストリートへと、歩みを進めた。
(うわぁ、てかデートで何着るべ……)
ショーウィンドウに並ぶ冬服を覗き込みながら、急に不安が押し寄せる。
考えてみれば、今まで洋服に無頓着で、適当に目についたものを買っていた。
朔とはずっと幼馴染だったし、恋人になったとて洋服までわざわざ気合をいれようなんて思考がなかった。
だが、隆太とのデートとなると、話は変わってくる。
文化祭の時に見たあいつの私服は、驚くほどおしゃれだった。
ただでさえ、あんなモデルみたいな容姿のいい男の隣を歩くのだ。
俺がダサくて安っぽい服だと、逆に隆太が恥をかくだろう。
(それに、ちょっとでもいいと思ってもらいたしな……)
そうと決まれば、何かいいアイテムを手に入れたい。
模試の成績もよかったし、今日はゆっくりショッピングしてもバチは当たらない……。
――そのときだった。
人混みの向こう側――カフェが立ち並ぶ歩道に、よく知る背格好の女性が歩いてるのが目に入り、俺は足を止めた。
(母さん……?)
肩まである長い髪に、華奢な体格。お馴染みのパンツルックに、高いヒール。
間違いなく、俺の母親だ。
だがその隣を歩く男の方に目が釘付けになった。
「意味分かんねぇ……」
(どうして、隆太が母さんと一緒にいるんだよ)
その場で倒れそうなくらいの、衝撃だった。
キャップを深くかぶり、顔を隠すように俯き加減で歩いているが、そのがっしりとした肩幅、独特の歩き方、すっと伸びた、首筋のラインーーあれは、紛れもなく、俺の恋人。
めまいがするほど、激しい動悸が襲う。
(今日は遠征先の宿で泊まるといってたよな。嘘ついて、なんで母さんと一緒にいるんだよ)
何かが、おかしい。
隆太は俺に大事なことを隠している。
確かめないといけない。でも、確かめるのが怖い。
そう強く想うのに、俺の足は勝手に道路の向こう側へ駆け出していた。
人混みなんて関係ない。車が来ていたって関係ない。
(隆太と、母さんの元へ、今すぐに行かなくちゃ……)
半分パニックになりながらも、ふたりが揃って入って行ったカフェに、俺も時間差で入店した。
見つからないように……でも、確実に会話が聞こえる場所を狙う。
運よく、ふたりが座った窓側の席と通路を挟んだ場所に、通してもらえた。


