偏差値70だけど、この恋むずすぎ。

「あ、そうなの……」

 せっかく若月が気にしてくれたのに、俺はクソみたいな返答をしてしまった。
 だって、あまりに若月の顔が大人っぽくて。いつもより、かっこよく見えたから。

「それは俺もだよ。若月が……元気にしてたらいいなって思ってた」

すると若月は、何も言わずじっと俺の顔を見た後、ぎびっとラムネを呷った。

「へー、相思相愛だな」
「っ」

 意地悪くニッと笑いかけられ、俺はとっさに視線を外した。
 暗くてよかった。
 一時間、炎天下にいたんじゃないかってくらい、めちゃくちゃ顔が熱い。

「じゃあさ、連絡先交換しよ。そしたらまた、一緒にちいまる観れるだろ」
「え、あぁ、うん」
「QRだして」

 ぎこちない俺とは違い、若月は自然に連絡先を聞いてくれた。
 この一か月間、ほしくて堪らなかったこいつの連絡先が、こんなに呆気なく手に入った。
 だが、画面に『隆太』というシンプルなアカウント名が表示されたとき、夢じゃないかと思わず目を擦ってしまった。

「いつでも連絡して。寂しくなったら会いに行ってやるから」
「は、なんだよそれ……」

 反射的に笑って返したものの、動揺を隠せずに中途半端な笑いになってしまう。
 いつでも来てくれる? 若月が?

「一樹は寂しがり屋だからな。本当は嬉しいんだろ?」

 余裕たっぷりに言いながら、突然若月は体を屈めて俺の顔を覗き込んできた。

「あ……」

 月明かりに照らされたこいつは、怪しく笑っている。

「お前が勉強頑張ってたら、俺が褒めてやるって言ってんの」
「は、子供扱いするな」

 若月が不敵に笑い、俺の頭をガシガシと乱暴になでてくる。
 ガサツで、分厚くて、熱すぎる手。
 こいつに抱きしめられたら、俺……キスしたくなりそうだな。

「お前がサボらずに必死こいて勉強してんの知って、俺も刺激受けてんだよ。……T大合格、楽しみにしてっからな」
「……ん。それは絶対、合格する」

 若月に言われたら、やるしかない。
 そう、自然と思えた。
 やっぱりこいつは、不思議な奴だ。俺に根拠のない自信と、やる気をくれる。
 まるで、ガソリンみたいなやつだ。