未定です

 ワタシの存在価値なんて、どこにも、なんにも、ないんだ。



「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……ッ、」

 流れ落ちる涙も拭かないで、ただ夢中に道路を走っている。
 誰もワタシを分かってくれない、誰もワタシを見てくれない。
 もう、嫌なんだ。
 誰かに必要とされたかった、誰かを助けられる、そんな、かっこいいヒーローになりたかった。
 けど、こんなワタシじゃ、誰も見てくれないし、誰も必要としてくれない。
 みんなが望む "私" を演じるのも、本当の "ワタシ" に向き合うのも、怖くて、苦しくて、辛くて……ただ、逃げ続けた。




 やっとたどり着いた公園で息を整える。
 下を向くと、水滴がポタポタと落ち続けてる。止まらないで、ずっと、落ち続けている。これまでの、辛い気持ちが吐き出されるようにして。

「はぁっ、ふぅー、はぁっ、ふぅー、はぁっ、……」

 何回も深呼吸をして、どれだけ息を整えても、その水滴と自分の気持ちは止まらなかった。

 なんでこんな辛いんだろう。

「どうしたの?」

 頭上から声がして、思わず上を向く。
 すると、黄色のパーカーを着ている可愛らしい、でもカッコよさを兼ね備えている人と目が合った。
 びっくりして後ろに下がると石ころに躓いたらしく、体が大きく後ろに傾いた。
 倒れる、と思い、目をキツく瞑って身構えたが、黄色のパーカーを着ている人に支えられているおかげで怪我をせずに済んだ。

「わっ、と......危なかったね〜」
「大丈夫だった?......って、え!?泣いてる!?」

 ずっと乾かない涙に気づいてしまった彼がとても驚いている。

「大丈夫!?あ、知らない人に触られるの嫌だったよね、ごめん!」
「いや、大丈夫だよ!支えてくれてありがとね!」
「うん」

 すぐ涙を拭い、大丈夫そうに対応する。これが”ワタシ”だから。
 優しく離れた彼は、優しい声色で聞いてきた。

「俺、望月ひなたって言うんだ。もし良かったら、名前、教えてくれない?」
「黒崎結月って言います」
「結月さんって言うんだ。素敵な名前だね!」
「ひなたさんも、素敵な名前ですね」
「ありがとう!......結月さんさ、泣いてるけどなんかあったの?」
「......」

 ひなたさんは、ワタシにハンカチを手渡し、ワタシの表情を見ながら慎重に聞いていた。
 この雰囲気から、ただこの人は純粋に心配してくれているんだろう。

「話、聞いてくれるの?」
「うん!泣いてる人がいるのに、見過ごすなんて出来ないもん」
「そっか......」
「結月さんのペースで話していいからね」
「うん。ありがとう」

 彼の優しい視線を感じながら、ワタシは話し始めた。