やってきたのは、とある都立高校だった。
校門をくぐると、綺麗に整えられた校舎が目に入った。
白を基調とした外壁は陽の光を受けて明るく、窓ガラスもきれいに磨かれていた。グラウンドでは野球部が練習に励み、白球を追って駆ける選手たちの姿がある。あちこちから掛け声が飛び交い、休日だというのに学校全体が活気に満ちていた。
千家は立ち止まると、目の前の校舎を見上げた。
「うわーでかいねー」
二人は校舎には向かわず、そのまま北側の体育館を目指した。
体育館の入口でスリッパに履き替え、二階へ上がろうとしたところで千家が振り向く。
「大丈夫?」
「このくらいなら全然平気」
怜太は千家の手を借りず、一人で階段を上っていく。以前なら何も意識せず駆け上がっていた階段も、今は左足の状態を確かめながら、一段ずつ慎重に足を運ぶ。途中で止まることなく二階まで上がりきった。
二面あるコートでは、それぞれバスケの試合が行われている。
二階席ではハチマキを巻いた部員たちが並び、声を張り上げながら試合を応援している。手すりには、『挑戦』『堅守速攻』といった文字が大きく書かれた部旗が括りつけられていた。
ボールの弾む音、バッシュが床を擦る音、応援する声。それらが重なり合い、体育館全体を揺らしている。
二人は空いている席を見つけ、並んで腰を下ろした。
「凄いね。バスケの試合って初めて見るよ!」
千家は興奮した様子でコートを見渡している。
「今更だけど、なんで付いてきたんだよ」
「逆になんでこんな楽しそうなイベントに誘ってくれなかったの!?」
「イベントって……インターハイの予選をそんな見方してるの千家だけだぞ」
怜太は呆れたように返した。
今日はバスケインターハイ東京都予選の四回戦。決勝リーグへの進出を目指して、各地で熾烈な争いが繰り広げられている。
「あと何回勝てばいいの?」
千家に聞かれ、怜太は指を曲げながら計算する。
「あと4回勝てば決勝リーグに進めるはず。東京はエントリーだけで300を超えてるからな。そう考えると狭き門だよ」
その膨大な数字を聞いた千家は、露骨にうんざりした顔をした。
試合終了のブザーが鳴ると、選手たちが整列して礼をした。
次の試合に出る選手たちが入れ替わりでコートに入ってアップを始めると、体育館の空気が再び引き締まった。
「あ、星華高だ」
千家の声を聞いた瞬間、怜太にも緊張が走った。
「なんか……相手の高校、大きいね」
千家が見つめる先では、対戦相手の選手たちがアップを続けている。
黒のパンツと揃いのシャツに身を包んだ選手たちは、一糸乱れぬ動きでレイアップを繰り返していた。体格差は遠目から見てもはっきりしていて、ベンチに入れない部員の数も星華高校の倍以上。何もかもスケールが違う。
バスケ部の大蔵からメッセージが届いたのは、昨日の昼のことだった。
『明日の相手、神保東だから。暇なら見に来いよ!』
飄々とした文面だったが、怜太としては思うところがあった。
神保東とは、昨年ベスト8の強豪だ。
星華高校バスケ部も今年は強いとされている。それでも、本気で優勝を狙っているチームと比べれば劣る。
バスケは圧倒的にジャイアントキリングが起きにくいスポーツだ。
大蔵が怜太にメッセージを送った意味を、バスケ経験者の怜太が理解できないはずはなかった。
校門をくぐると、綺麗に整えられた校舎が目に入った。
白を基調とした外壁は陽の光を受けて明るく、窓ガラスもきれいに磨かれていた。グラウンドでは野球部が練習に励み、白球を追って駆ける選手たちの姿がある。あちこちから掛け声が飛び交い、休日だというのに学校全体が活気に満ちていた。
千家は立ち止まると、目の前の校舎を見上げた。
「うわーでかいねー」
二人は校舎には向かわず、そのまま北側の体育館を目指した。
体育館の入口でスリッパに履き替え、二階へ上がろうとしたところで千家が振り向く。
「大丈夫?」
「このくらいなら全然平気」
怜太は千家の手を借りず、一人で階段を上っていく。以前なら何も意識せず駆け上がっていた階段も、今は左足の状態を確かめながら、一段ずつ慎重に足を運ぶ。途中で止まることなく二階まで上がりきった。
二面あるコートでは、それぞれバスケの試合が行われている。
二階席ではハチマキを巻いた部員たちが並び、声を張り上げながら試合を応援している。手すりには、『挑戦』『堅守速攻』といった文字が大きく書かれた部旗が括りつけられていた。
ボールの弾む音、バッシュが床を擦る音、応援する声。それらが重なり合い、体育館全体を揺らしている。
二人は空いている席を見つけ、並んで腰を下ろした。
「凄いね。バスケの試合って初めて見るよ!」
千家は興奮した様子でコートを見渡している。
「今更だけど、なんで付いてきたんだよ」
「逆になんでこんな楽しそうなイベントに誘ってくれなかったの!?」
「イベントって……インターハイの予選をそんな見方してるの千家だけだぞ」
怜太は呆れたように返した。
今日はバスケインターハイ東京都予選の四回戦。決勝リーグへの進出を目指して、各地で熾烈な争いが繰り広げられている。
「あと何回勝てばいいの?」
千家に聞かれ、怜太は指を曲げながら計算する。
「あと4回勝てば決勝リーグに進めるはず。東京はエントリーだけで300を超えてるからな。そう考えると狭き門だよ」
その膨大な数字を聞いた千家は、露骨にうんざりした顔をした。
試合終了のブザーが鳴ると、選手たちが整列して礼をした。
次の試合に出る選手たちが入れ替わりでコートに入ってアップを始めると、体育館の空気が再び引き締まった。
「あ、星華高だ」
千家の声を聞いた瞬間、怜太にも緊張が走った。
「なんか……相手の高校、大きいね」
千家が見つめる先では、対戦相手の選手たちがアップを続けている。
黒のパンツと揃いのシャツに身を包んだ選手たちは、一糸乱れぬ動きでレイアップを繰り返していた。体格差は遠目から見てもはっきりしていて、ベンチに入れない部員の数も星華高校の倍以上。何もかもスケールが違う。
バスケ部の大蔵からメッセージが届いたのは、昨日の昼のことだった。
『明日の相手、神保東だから。暇なら見に来いよ!』
飄々とした文面だったが、怜太としては思うところがあった。
神保東とは、昨年ベスト8の強豪だ。
星華高校バスケ部も今年は強いとされている。それでも、本気で優勝を狙っているチームと比べれば劣る。
バスケは圧倒的にジャイアントキリングが起きにくいスポーツだ。
大蔵が怜太にメッセージを送った意味を、バスケ経験者の怜太が理解できないはずはなかった。
