ナギ様を邪悪な輩(主に相沢)からお守りするべく、全神経を研ぎ澄ませた一日が何とか平穏に終わろうとしていた。
帰りのホームルームを終え、ナギ様が優雅に帰りのお支度をされている間に超高速で支度を済ませ、不審な影に目を光らせる。ナギ様が無事に校門を出るまで影ながらお見送りすることこそ、信徒たる俺の神聖な職務なのだ。
「……おい、ひろさか」
突然、鼓膜を痛めつけるような邪悪な声に呼び止められた。振り返ると、絶対強者のオーラを全身から撒き散らした相沢が立っていた。……嫌な予感しかしない。
「ちょっとついて来いよ」
低く、地獄の底から響くような威圧的な声。拒絶を一切許さないその冷酷な瞳に、思わず息をのむ。
絶対に昨日の放課後――あの『現場』を目撃した件だ……!
だが、ここで屈するわけにはいかない。ナギ様をお護りするため、俺は今こそ立ち上がらねばならないのだ!
席を立つ際、一瞬だけナギ様と視線が交差した。
(ナギ様……! その穢れなき聖なる瞳をお護りするため、俺はこの身が滅びようとも悪には絶対に屈しません……!)
俺は固く拳を握りしめ、相沢の背中を追って人目のない校舎裏へと向かった。
◇
「おい。わかってると思うが、昨日見たことは誰にも言うんじゃねーぞ」
到着するや否や、至近距離から殺気立った眼光で睨みつけられた。
さすがスクールカーストの頂点。他のモブ共を一瞬で威圧し黙らせるだけの恐ろしい覇気を放っている。気圧されて息が詰まり、「……はい」と情けない声を上げて膝を屈してしまいそうだ。
だが、俺には命に代えても果たさねばならない信徒としての使命がある! ここで怯んでたまるか!
「……な、ナギ様を不安にさせるようなこと、言うわけないだろ! それよりお前こそ、ナギ様に妙な真似したらタダじゃおかないからな!」
必死の抗議に対し、相沢は鼻でフンと嘲笑った。
「妙な真似ってなんだよ。お前、紀織と付き合ってるわけでもないくせにウゼぇんだよ。関係ねー奴はおとなしく引っ込んでろ」
「俺はナギ様の筆頭信徒だ! 神への冒涜を企む不敬者を見逃せるか!」
「……は? お前マジで何言ってんの? お前みたいなキモオタに付きまとわれてる方が、紀織だってよっぽど迷惑だろうが!」
「……っ!」
……キツい。正論っぽい凶器で刺されて普通に傷つく。悔しくて目が潤んできた……。
だが! 俺はナギ様のためなら明日死んでもいい男だ!
「多情不純野郎に言われたくないね! 俺は一途にナギ様をお慕い……お守りしてるんだ!」
「多情なんて心外だな。俺は紀織さえ手に入ればそれでいいんだよ。紀織さえ俺のものになれば、他の奴らなんてどうでもいい」
……最低だ。要するに他の相手はナギ様の『代用品』でしかなく、ナギ様を落としたら容赦なく捨て去る気なのだ。どこまで歪んだ欲望だ!
「最低だ……! ナギ様はお前なんかの所有物じゃない!」
噛みついた瞬間、強い力で金網フェンスへと押しつけられた。
「お前ごときの底辺モブが調子に乗ってんじゃねーぞ」
至近距離で睨みつけられ、恐ろしい威圧感が肌を刺す。だが折れてたまるか! 俺も負けじと至近距離から相沢を睨み返した。
一触即発の睨み合い。空気がバチバチと弾けた――まさにその時だった。
「……あっ」
突然、校舎の角からナギ様がお姿を現したのだ!
(しまった……! 聖域でこんな血生臭い争いを見られてしまった……!)
神の前で不毛な喧嘩をお見せするなど万死に値する! 面倒くさそうに視線を彷徨わせている使えない相沢を横目に、慌てて平穏を装おうとした――その瞬間。
ナギ様の美しすぎるお顔が、目に見えてカッと赤く染まった。
「ご、ごめん……邪魔して……っ」
「……へ?」
訳も分からず、俺と相沢は顔を寄せ合った体勢のまま互いを見つめ合い――
「「……あっ!!!」」
またしても相沢と間抜けな悲鳴がハモった。
いや、ハモってる場合じゃない!!
パタパタと足早に去っていくナギ様の背中を見て、俺たちは衝撃の事実に直面する。
間違いない。ナギ様は、俺と相沢が『校舎裏で顔を極限まで近づけてイチャついている』と盛大に勘違いされたのだ!!
最悪だ……! カースト頂点との喧嘩と思われた方が100万倍マシだった! なんでよりによってこの不潔な肉食獣とデコチュウ寸前みたいな距離感で目撃されてんだよ!!
「……くそっ! ふざけんなよ!!」
相沢がやり場のない怒りを俺の顔面ギリギリにかすめさせ、フェンスへ叩きつける。だが、それはこっちのセリフだ!
「お前が俺を無駄に追い詰めるからだろ!!」
「うるせーよ、きもさか! ……ああクソ、なんでよりによってお前なんだよ! 最悪だ!」
「悪かったな、俺で!!」
純粋な信仰心だけで生きている人間に対してあまりにも失礼な言動!
だが、事態は一刻を争う。ナギ様に仕える信徒として、このような破廉恥極まりない誤解を放置するなど絶対に許されない。
「おいキモさか! 一刻も早く誤解を解くぞ! 話はそれからだ!」
「言われなくても最初からそのつもりだ!!」
相沢の命令に従うのは死ぬほど不本意だが、背に腹は代えられない。
俺たちは『ナギ様の誤解を秒で解く』という共通の目的のため、悪魔と手を組む羽目になったのだった。
帰りのホームルームを終え、ナギ様が優雅に帰りのお支度をされている間に超高速で支度を済ませ、不審な影に目を光らせる。ナギ様が無事に校門を出るまで影ながらお見送りすることこそ、信徒たる俺の神聖な職務なのだ。
「……おい、ひろさか」
突然、鼓膜を痛めつけるような邪悪な声に呼び止められた。振り返ると、絶対強者のオーラを全身から撒き散らした相沢が立っていた。……嫌な予感しかしない。
「ちょっとついて来いよ」
低く、地獄の底から響くような威圧的な声。拒絶を一切許さないその冷酷な瞳に、思わず息をのむ。
絶対に昨日の放課後――あの『現場』を目撃した件だ……!
だが、ここで屈するわけにはいかない。ナギ様をお護りするため、俺は今こそ立ち上がらねばならないのだ!
席を立つ際、一瞬だけナギ様と視線が交差した。
(ナギ様……! その穢れなき聖なる瞳をお護りするため、俺はこの身が滅びようとも悪には絶対に屈しません……!)
俺は固く拳を握りしめ、相沢の背中を追って人目のない校舎裏へと向かった。
◇
「おい。わかってると思うが、昨日見たことは誰にも言うんじゃねーぞ」
到着するや否や、至近距離から殺気立った眼光で睨みつけられた。
さすがスクールカーストの頂点。他のモブ共を一瞬で威圧し黙らせるだけの恐ろしい覇気を放っている。気圧されて息が詰まり、「……はい」と情けない声を上げて膝を屈してしまいそうだ。
だが、俺には命に代えても果たさねばならない信徒としての使命がある! ここで怯んでたまるか!
「……な、ナギ様を不安にさせるようなこと、言うわけないだろ! それよりお前こそ、ナギ様に妙な真似したらタダじゃおかないからな!」
必死の抗議に対し、相沢は鼻でフンと嘲笑った。
「妙な真似ってなんだよ。お前、紀織と付き合ってるわけでもないくせにウゼぇんだよ。関係ねー奴はおとなしく引っ込んでろ」
「俺はナギ様の筆頭信徒だ! 神への冒涜を企む不敬者を見逃せるか!」
「……は? お前マジで何言ってんの? お前みたいなキモオタに付きまとわれてる方が、紀織だってよっぽど迷惑だろうが!」
「……っ!」
……キツい。正論っぽい凶器で刺されて普通に傷つく。悔しくて目が潤んできた……。
だが! 俺はナギ様のためなら明日死んでもいい男だ!
「多情不純野郎に言われたくないね! 俺は一途にナギ様をお慕い……お守りしてるんだ!」
「多情なんて心外だな。俺は紀織さえ手に入ればそれでいいんだよ。紀織さえ俺のものになれば、他の奴らなんてどうでもいい」
……最低だ。要するに他の相手はナギ様の『代用品』でしかなく、ナギ様を落としたら容赦なく捨て去る気なのだ。どこまで歪んだ欲望だ!
「最低だ……! ナギ様はお前なんかの所有物じゃない!」
噛みついた瞬間、強い力で金網フェンスへと押しつけられた。
「お前ごときの底辺モブが調子に乗ってんじゃねーぞ」
至近距離で睨みつけられ、恐ろしい威圧感が肌を刺す。だが折れてたまるか! 俺も負けじと至近距離から相沢を睨み返した。
一触即発の睨み合い。空気がバチバチと弾けた――まさにその時だった。
「……あっ」
突然、校舎の角からナギ様がお姿を現したのだ!
(しまった……! 聖域でこんな血生臭い争いを見られてしまった……!)
神の前で不毛な喧嘩をお見せするなど万死に値する! 面倒くさそうに視線を彷徨わせている使えない相沢を横目に、慌てて平穏を装おうとした――その瞬間。
ナギ様の美しすぎるお顔が、目に見えてカッと赤く染まった。
「ご、ごめん……邪魔して……っ」
「……へ?」
訳も分からず、俺と相沢は顔を寄せ合った体勢のまま互いを見つめ合い――
「「……あっ!!!」」
またしても相沢と間抜けな悲鳴がハモった。
いや、ハモってる場合じゃない!!
パタパタと足早に去っていくナギ様の背中を見て、俺たちは衝撃の事実に直面する。
間違いない。ナギ様は、俺と相沢が『校舎裏で顔を極限まで近づけてイチャついている』と盛大に勘違いされたのだ!!
最悪だ……! カースト頂点との喧嘩と思われた方が100万倍マシだった! なんでよりによってこの不潔な肉食獣とデコチュウ寸前みたいな距離感で目撃されてんだよ!!
「……くそっ! ふざけんなよ!!」
相沢がやり場のない怒りを俺の顔面ギリギリにかすめさせ、フェンスへ叩きつける。だが、それはこっちのセリフだ!
「お前が俺を無駄に追い詰めるからだろ!!」
「うるせーよ、きもさか! ……ああクソ、なんでよりによってお前なんだよ! 最悪だ!」
「悪かったな、俺で!!」
純粋な信仰心だけで生きている人間に対してあまりにも失礼な言動!
だが、事態は一刻を争う。ナギ様に仕える信徒として、このような破廉恥極まりない誤解を放置するなど絶対に許されない。
「おいキモさか! 一刻も早く誤解を解くぞ! 話はそれからだ!」
「言われなくても最初からそのつもりだ!!」
相沢の命令に従うのは死ぬほど不本意だが、背に腹は代えられない。
俺たちは『ナギ様の誤解を秒で解く』という共通の目的のため、悪魔と手を組む羽目になったのだった。

