二学期が始まり、授業のある生活に慣れたころ、すぐに球技大会があった。
俺たちのクラスは、男子はバスケ、女子はバレーに出場した。
バスケは準決勝で一点差で三年生のクラスに負けてしまった。でも、その後の三位決定戦で二年F組に五対二で勝利したため、三位という成績を残した。
驚いたことに、潤も休み時間になるとほとんど毎回バスケの練習に参加し、誰よりも一生懸命練習をしていた。
運動が苦手と言っていた潤は、上達するまでに時間はかかったが、真似をすることが上手だったこともあり、クラスで一番の伸びしろを見せていた。
結果、三位決定戦では俺のパスからゴール下のシュートを決め、クラスに貢献していた。
女子バレーは、なんと優勝という輝かしい成績を残すことができた。
バレー部がクラスに多かったこともあるが、何より団結力がすごかったことが勝因だ。
総合的に優秀だった俺たちは、二年生の中で優秀賞を取り、景品としてミニアイスをもらうことができた。
そして十二月。
二学期の期末テストという一大イベントがあった。
「守、ホットレモン持ってきたけど、飲む?」
「飲みたい!」
「はい。どうぞ」
潤から受け取ったカップ越しに、ホットレモンの温かさが伝わってくる。
「いただきます」
一口飲んだ瞬間、懐かしい風味が口いっぱいに広がり、安心した気持ちになる。
「……やっぱり、美味しい」
「守にそう言ってもらえるのが、一番うれしい」
隣で俺を見る潤が本当に嬉しそうで、恥ずかしくなる。
「これで、今日の数学も頑張れるかな……」
「頑張れるかな? じゃなくて、頑張るんだよ!」
「そうだよ! 守、頑張るんだよ」
隣の席に座っている光輝が言う。
「そうだな。まずは頑張る」
俺は周りに精一杯励ましてもらいながら、なんだかんだで今回の数学も乗り越えることができた。
テストの結果を潤に報告すると、返信が来た。
『俺のホットレモンのおかげだね』
『うん。潤さまさまだよ』
『ごめん、嘘。俺のおかげじゃなくて、守が頑張ったからだった』
『両方ってことだね』
MIKUさん(潤)とは連絡をとることはなくなり、潤と直接メッセージをやり取りするようになった。
潤と付き合ったあの後、MIKUさんにも連絡しなければいけないと思い、相手は潤だから普通に送ればいいものを、今までの名残で、
『いままで相談聞いてくれてありがとうございました』
と、敬語で送った。
MIKUさんのほうも、今までの名残が抜けないのか、
『こちらこそありがとう。これから二人ならきっと幸せになれるよ』
今までのMIKUさんと同じように返信が来た。
改めて思うが、潤とMIKUさんのキャラの違いを感じる。
これを潤が送っているということが、なんだか面白い。
そして、クリスマスまで一週間をきった今日。
俺と潤は、いつもの近くのファミレスでクリスマスに向けた計画を立てている。
クリスマスは一緒にいようと前々から話していたところに、部活のオフが舞い込んできたことで、二十五日は二人で過ごす約束をした。
「イルミネーションは一緒に見たいかな」
「そうだね」
「あと……は、潤はしたいことある?」
「お互いプレゼント交換したいかな」
「めっちゃあり!」
「守は?」
「俺はー、美味しいごはんを潤と食べたいかな?」
「美味しいごはんか……」
何が美味しいだろうか、と潤が考えてくれている。
しかし、その答えは俺の中ですでに決まっていた。
「美味しいごはんといえば、潤の作るご飯でしょ!」
「え、俺?」
潤が驚いたような顔をして、俺のほうを勢いよく向く。
「もちろん俺も一緒に教わりながら作る」
少し考え込んで、潤が口角を上げる。
「いいね」
「じゃあ、それで決まりね! 料理はまた潤の家でもいいかな……? 俺んち、多分兄弟もいて、家に呼ぶの難しそうだから」
「もちろん。全然いいよ。じゃあ、まずは俺の家で一緒に夜ご飯を作るってことでいい?」
「うん。夜ご飯、一緒に食べたいから、それがいい」
「作り終えたら、イルミネーション行って、その後は一緒に作ったご飯を食べるとか?」
「最高すぎる……!!」
その後もいろいろと調べながら話した結果、イルミネーションは都内のほうに行くことになった。
「ご飯食べたら、守は俺と一緒に寝るってことで」
俺から顔をそらしながら、潤がさらっと言った。
「……一緒に、寝る……?」
「そう。俺の家に泊まって、一夜を過ごす」
それは何を意味しているのだろうか……。
フリーズしている俺の顔を、潤が覗き込む。
「守、泊まっていける? 次の日、部活?」
「部活……は、午後一時からだから、大丈夫だけど……」
潤の顔が一気に明るくなる。
「じゃあ、それで大丈夫?」
潤が、食い気味に聞いてくる。
俺はその勢いに押されたのか分からないが、気づいたときには頷いていた。
「楽しみだね」
何かたくらんだような笑みを浮かべた潤に、不覚にもドキッとしてしまった。
――クリスマス当日
街中がクリスマスカラーに包まれている。
一緒に食料品を買うところから始めるので、待ち合わせ場所は潤の近所のスーパーだった。
クリスマスの待ち合わせ場所がスーパーというのは、ロマンチックさに欠けているが、それも俺たちらしくていいと思った。
スーパーの入口で待っていると、俺の姿に気づいて走ってくる潤が見えた。
黒のコートを着て、ブーツを履いた潤はシンプルなコーディネートだが、とてもかっこいい。
「ごめん、守。おまたせ」
学校では見ることのできないセットされた髪型に、今日が特別な日であることを感じさせられる。
「今日もかっこいいね」
「ほんとに?」
潤が嬉しそうに、俺に笑いかける。
「守もかっこいいし、その手袋も可愛い」
恥ずかしくなって、俺は手袋をすぐに外した。けれど、本当はそう言ってもらえて嬉しかったことは、秘密だ。
「今日作るのは、唐揚げとケーキだから……最初は唐揚げの材料を探しに行こう」
本当は食べる料理を全部作りたかったが、時間がかかりすぎるので、二つに絞った。
ピラフやチキン、サラダは潤の母が作ってくれると言っていたので、それも楽しみだ。
買い物を終え、潤の家に着くと、潤のお母さんがすでにキッチンで料理をしていた。
「今日はおじゃまします」
「守くん。久しぶり! 今日は潤といてくれてありがとうね」
以前会ったときより髪の色を明るくしていた潤の母は、雰囲気が違って見えた。
「こちらこそありがとうございます。これ、よかったら」
お母さんに預かっていたゼリーの詰め合わせを渡すと、二人は喜んで受け取ってくれた。
「じゃあ、さっそく手を洗ったら、料理を始めてもらおうかしら」
まずは、唐揚げ作りから始めた。
俺が唐揚げを好きだからと言って、潤が提案してくれた。
三人で何気ない話をしていると、あっという間に下ごしらえは終わり、次はケーキ作りだ。
「ケーキはお母さんの専門の一つだから、そんな難しい顔しなくて大丈夫だよ」
ケーキを買ったことしかなかった俺は、それを作ることのできる二人がすごいと思う。
潤の母と潤に手順を教えてもらい、丁寧に一つ一つこなし、スポンジを焼く前まで進めることができた。
「次は、スポンジ生地を焼いている間に、クリームの準備をしよう」
卵と牛乳、砂糖などを混ぜ合わせ、ホイップクリームを作るのは思ったより疲れる。
俺は、潤の誕生日のとき、一緒に料理をしたことを思い出した。
あのときは、料理どころじゃなかったな……。
そのときのドキドキがないことを少し残念に思っている自分に気づき、恥ずかしい気持ちが込み上げてくる。
外が暗くなってきたころ、ついにホールケーキが完成した。
白いホイップの上と中に、ぎっしりと果物が詰まったケーキは、お店に並んでいるケーキと同じような仕上がりだ。
今、味見をするか迷ったが、ホールケーキのまま食べたいということで、夕食後の楽しみにすることにした。
「じゃあ、イルミネーション行ってきます」
「行ってらっしゃい」
電車で三十分ほどのところにあるイルミネーションは、東京でも人気のスポットだ。
「わーー。めっちゃきれい」
「そうだね」
暖色から寒色までさまざまな色のライトに照らされた通りは、一言では表すことができないほどきれいだった。
「やっぱり夜になるともっと寒いね」
そう言うと、潤が黙って俺の手を取り、自分のポケットに入れた。
「これで少しは寒くないでしょ」
「うん」
ポケットの中でつながれた手は、二人だから感じることのできる温かさに包まれていた。
「用意したプレゼント交換する?」
「したい!」
少し歩いたところの広場にベンチがあったので、そこで交換し合うことにした。
「じゃあ、せいので渡そう」
「「せーーの」」
お互いに出したプレゼントは、ラッピングに包まれていて、何が入っているか分からない。
「これじゃあ、同時に出した意味ないじゃん」
「たしかに」
お互いに笑い合いながら、プレゼントを交換した。
「開けていい?」
「いいよ」
潤が先に俺のプレゼントを開ける。
「……手袋!!」
「そう。さっき俺がつけていたのとおそろいの」
「……本当に嬉しい。ありがとう」
冬に一緒に使えるものが欲しくて、悩んだ結果、潤に似合いそうな手袋があったので、おそろいで買ってみた。
「守が俺につけてよ」
「分かった」
潤の冷えた手を取り、手袋をはめる。
俺よりワンサイズ大きい手袋は、潤の手にぴったりだった。
「温かい」
嬉しそうに手袋を見る潤に、俺のほうまで嬉しくなる。
「潤のプレゼントも開けてもいい?」
「うん。あ、でもちょっと待って。俺が守につけてあげたい。だから、手出して、目つむって」
「……これでいい?」
「うん」
右の薬指に冷たい感触を感じる。
「じゃあ、目あけていいよ」
目を開けると、薬指には銀色の指輪がはまっていた。
「……え! 指輪……」
「そう。おそろいの」
「これ……高かったんじゃ?」
「値段は秘密。でも、そんないいのじゃないよ」
初めてはめた指輪に、新鮮さと感動を覚える。
「嬉しい……ありがとう……」
「うん。学校にはつけていけないかもだけど、二人でいるときはつけたいね」
そう言って、右手を顔の横に持ってきた潤の指にも、指輪が光っていた。
その輝きは、イルミネーションの光にも負けないくらい、輝かしいものだった。
潤の家に帰ると、リビングの机には色とりどりの料理が並んでいた。
そこには、さっき作った唐揚げの山もある。
「「「いただきます」」
「美味しい!!」
「よかったー。このサラダ、新しく最近考えたドレッシングを使ってるの」
「俺も一緒に考えた」
「潤も……! さすが」
「そんなことないよ」
嬉しそうにしながら、潤も箸を進める。
「唐揚げも美味しい!」
「守くんが頑張って味付けしてくれたからよ」
嬉しそうに笑う潤と潤の母を見て、心までも温まる。
潤の家族と一緒に食卓を囲みながら、話をして料理を食べることができたのが、とても嬉しい。
いつか俺たちのこともお互いの親に話そう、と思える日が来たらいいなと心から思った。
「「「ごちそうさまでした」」」
食事を終えた後、食器などの片づけをして、先にお風呂に入らせてもらった。
前回のように、先にお風呂から上がり、潤の部屋で本を読んで待っていると、潤のお母さんがケーキを持ってきてくれた。
「見てーー。こんなに美味しそう! あとは二人で好きなだけ食べてね」
そう言って潤の母は、ケーキを机に置いてくれる。
何度見ても美味しそうなケーキを前に、自分が作るのに参加したことが信じられなくなる。
しばらくすると、潤もお風呂から上がってきた。
「お。ケーキ!もう食べよっか」
潤の母が用意してくれたケーキ用の包丁を使い、六等分に切る。
「じゃあ、いただこうか」
「うん」
「生クリームが溶ける」
「ほんとだ。今日のケーキは守も一緒だから、特に美味しい」
潤の甘い言葉に、ドキッとする。
ケーキは、ちょうどいい甘さの生クリームと果物の甘さがマッチして、絶妙な味でとても美味しい。
「今日、一日潤と過ごせて本当に幸せだった」
「それはこちらこそだよ。ありがとう」
「また来年も一緒に思い出作れたらいいよな」
「うん。再来年も、その先も」
二人の手が重なる。
「クリスマスプレゼント、あと一つお願いしていい?」
「うん。なに?」
「守がほしい」
「うん……最後まではいけないと思うけど」
俺の手を潤が強く握る。
「じゃあ、そろそろケーキは片付けようか」
「そうだね」
完
俺たちのクラスは、男子はバスケ、女子はバレーに出場した。
バスケは準決勝で一点差で三年生のクラスに負けてしまった。でも、その後の三位決定戦で二年F組に五対二で勝利したため、三位という成績を残した。
驚いたことに、潤も休み時間になるとほとんど毎回バスケの練習に参加し、誰よりも一生懸命練習をしていた。
運動が苦手と言っていた潤は、上達するまでに時間はかかったが、真似をすることが上手だったこともあり、クラスで一番の伸びしろを見せていた。
結果、三位決定戦では俺のパスからゴール下のシュートを決め、クラスに貢献していた。
女子バレーは、なんと優勝という輝かしい成績を残すことができた。
バレー部がクラスに多かったこともあるが、何より団結力がすごかったことが勝因だ。
総合的に優秀だった俺たちは、二年生の中で優秀賞を取り、景品としてミニアイスをもらうことができた。
そして十二月。
二学期の期末テストという一大イベントがあった。
「守、ホットレモン持ってきたけど、飲む?」
「飲みたい!」
「はい。どうぞ」
潤から受け取ったカップ越しに、ホットレモンの温かさが伝わってくる。
「いただきます」
一口飲んだ瞬間、懐かしい風味が口いっぱいに広がり、安心した気持ちになる。
「……やっぱり、美味しい」
「守にそう言ってもらえるのが、一番うれしい」
隣で俺を見る潤が本当に嬉しそうで、恥ずかしくなる。
「これで、今日の数学も頑張れるかな……」
「頑張れるかな? じゃなくて、頑張るんだよ!」
「そうだよ! 守、頑張るんだよ」
隣の席に座っている光輝が言う。
「そうだな。まずは頑張る」
俺は周りに精一杯励ましてもらいながら、なんだかんだで今回の数学も乗り越えることができた。
テストの結果を潤に報告すると、返信が来た。
『俺のホットレモンのおかげだね』
『うん。潤さまさまだよ』
『ごめん、嘘。俺のおかげじゃなくて、守が頑張ったからだった』
『両方ってことだね』
MIKUさん(潤)とは連絡をとることはなくなり、潤と直接メッセージをやり取りするようになった。
潤と付き合ったあの後、MIKUさんにも連絡しなければいけないと思い、相手は潤だから普通に送ればいいものを、今までの名残で、
『いままで相談聞いてくれてありがとうございました』
と、敬語で送った。
MIKUさんのほうも、今までの名残が抜けないのか、
『こちらこそありがとう。これから二人ならきっと幸せになれるよ』
今までのMIKUさんと同じように返信が来た。
改めて思うが、潤とMIKUさんのキャラの違いを感じる。
これを潤が送っているということが、なんだか面白い。
そして、クリスマスまで一週間をきった今日。
俺と潤は、いつもの近くのファミレスでクリスマスに向けた計画を立てている。
クリスマスは一緒にいようと前々から話していたところに、部活のオフが舞い込んできたことで、二十五日は二人で過ごす約束をした。
「イルミネーションは一緒に見たいかな」
「そうだね」
「あと……は、潤はしたいことある?」
「お互いプレゼント交換したいかな」
「めっちゃあり!」
「守は?」
「俺はー、美味しいごはんを潤と食べたいかな?」
「美味しいごはんか……」
何が美味しいだろうか、と潤が考えてくれている。
しかし、その答えは俺の中ですでに決まっていた。
「美味しいごはんといえば、潤の作るご飯でしょ!」
「え、俺?」
潤が驚いたような顔をして、俺のほうを勢いよく向く。
「もちろん俺も一緒に教わりながら作る」
少し考え込んで、潤が口角を上げる。
「いいね」
「じゃあ、それで決まりね! 料理はまた潤の家でもいいかな……? 俺んち、多分兄弟もいて、家に呼ぶの難しそうだから」
「もちろん。全然いいよ。じゃあ、まずは俺の家で一緒に夜ご飯を作るってことでいい?」
「うん。夜ご飯、一緒に食べたいから、それがいい」
「作り終えたら、イルミネーション行って、その後は一緒に作ったご飯を食べるとか?」
「最高すぎる……!!」
その後もいろいろと調べながら話した結果、イルミネーションは都内のほうに行くことになった。
「ご飯食べたら、守は俺と一緒に寝るってことで」
俺から顔をそらしながら、潤がさらっと言った。
「……一緒に、寝る……?」
「そう。俺の家に泊まって、一夜を過ごす」
それは何を意味しているのだろうか……。
フリーズしている俺の顔を、潤が覗き込む。
「守、泊まっていける? 次の日、部活?」
「部活……は、午後一時からだから、大丈夫だけど……」
潤の顔が一気に明るくなる。
「じゃあ、それで大丈夫?」
潤が、食い気味に聞いてくる。
俺はその勢いに押されたのか分からないが、気づいたときには頷いていた。
「楽しみだね」
何かたくらんだような笑みを浮かべた潤に、不覚にもドキッとしてしまった。
――クリスマス当日
街中がクリスマスカラーに包まれている。
一緒に食料品を買うところから始めるので、待ち合わせ場所は潤の近所のスーパーだった。
クリスマスの待ち合わせ場所がスーパーというのは、ロマンチックさに欠けているが、それも俺たちらしくていいと思った。
スーパーの入口で待っていると、俺の姿に気づいて走ってくる潤が見えた。
黒のコートを着て、ブーツを履いた潤はシンプルなコーディネートだが、とてもかっこいい。
「ごめん、守。おまたせ」
学校では見ることのできないセットされた髪型に、今日が特別な日であることを感じさせられる。
「今日もかっこいいね」
「ほんとに?」
潤が嬉しそうに、俺に笑いかける。
「守もかっこいいし、その手袋も可愛い」
恥ずかしくなって、俺は手袋をすぐに外した。けれど、本当はそう言ってもらえて嬉しかったことは、秘密だ。
「今日作るのは、唐揚げとケーキだから……最初は唐揚げの材料を探しに行こう」
本当は食べる料理を全部作りたかったが、時間がかかりすぎるので、二つに絞った。
ピラフやチキン、サラダは潤の母が作ってくれると言っていたので、それも楽しみだ。
買い物を終え、潤の家に着くと、潤のお母さんがすでにキッチンで料理をしていた。
「今日はおじゃまします」
「守くん。久しぶり! 今日は潤といてくれてありがとうね」
以前会ったときより髪の色を明るくしていた潤の母は、雰囲気が違って見えた。
「こちらこそありがとうございます。これ、よかったら」
お母さんに預かっていたゼリーの詰め合わせを渡すと、二人は喜んで受け取ってくれた。
「じゃあ、さっそく手を洗ったら、料理を始めてもらおうかしら」
まずは、唐揚げ作りから始めた。
俺が唐揚げを好きだからと言って、潤が提案してくれた。
三人で何気ない話をしていると、あっという間に下ごしらえは終わり、次はケーキ作りだ。
「ケーキはお母さんの専門の一つだから、そんな難しい顔しなくて大丈夫だよ」
ケーキを買ったことしかなかった俺は、それを作ることのできる二人がすごいと思う。
潤の母と潤に手順を教えてもらい、丁寧に一つ一つこなし、スポンジを焼く前まで進めることができた。
「次は、スポンジ生地を焼いている間に、クリームの準備をしよう」
卵と牛乳、砂糖などを混ぜ合わせ、ホイップクリームを作るのは思ったより疲れる。
俺は、潤の誕生日のとき、一緒に料理をしたことを思い出した。
あのときは、料理どころじゃなかったな……。
そのときのドキドキがないことを少し残念に思っている自分に気づき、恥ずかしい気持ちが込み上げてくる。
外が暗くなってきたころ、ついにホールケーキが完成した。
白いホイップの上と中に、ぎっしりと果物が詰まったケーキは、お店に並んでいるケーキと同じような仕上がりだ。
今、味見をするか迷ったが、ホールケーキのまま食べたいということで、夕食後の楽しみにすることにした。
「じゃあ、イルミネーション行ってきます」
「行ってらっしゃい」
電車で三十分ほどのところにあるイルミネーションは、東京でも人気のスポットだ。
「わーー。めっちゃきれい」
「そうだね」
暖色から寒色までさまざまな色のライトに照らされた通りは、一言では表すことができないほどきれいだった。
「やっぱり夜になるともっと寒いね」
そう言うと、潤が黙って俺の手を取り、自分のポケットに入れた。
「これで少しは寒くないでしょ」
「うん」
ポケットの中でつながれた手は、二人だから感じることのできる温かさに包まれていた。
「用意したプレゼント交換する?」
「したい!」
少し歩いたところの広場にベンチがあったので、そこで交換し合うことにした。
「じゃあ、せいので渡そう」
「「せーーの」」
お互いに出したプレゼントは、ラッピングに包まれていて、何が入っているか分からない。
「これじゃあ、同時に出した意味ないじゃん」
「たしかに」
お互いに笑い合いながら、プレゼントを交換した。
「開けていい?」
「いいよ」
潤が先に俺のプレゼントを開ける。
「……手袋!!」
「そう。さっき俺がつけていたのとおそろいの」
「……本当に嬉しい。ありがとう」
冬に一緒に使えるものが欲しくて、悩んだ結果、潤に似合いそうな手袋があったので、おそろいで買ってみた。
「守が俺につけてよ」
「分かった」
潤の冷えた手を取り、手袋をはめる。
俺よりワンサイズ大きい手袋は、潤の手にぴったりだった。
「温かい」
嬉しそうに手袋を見る潤に、俺のほうまで嬉しくなる。
「潤のプレゼントも開けてもいい?」
「うん。あ、でもちょっと待って。俺が守につけてあげたい。だから、手出して、目つむって」
「……これでいい?」
「うん」
右の薬指に冷たい感触を感じる。
「じゃあ、目あけていいよ」
目を開けると、薬指には銀色の指輪がはまっていた。
「……え! 指輪……」
「そう。おそろいの」
「これ……高かったんじゃ?」
「値段は秘密。でも、そんないいのじゃないよ」
初めてはめた指輪に、新鮮さと感動を覚える。
「嬉しい……ありがとう……」
「うん。学校にはつけていけないかもだけど、二人でいるときはつけたいね」
そう言って、右手を顔の横に持ってきた潤の指にも、指輪が光っていた。
その輝きは、イルミネーションの光にも負けないくらい、輝かしいものだった。
潤の家に帰ると、リビングの机には色とりどりの料理が並んでいた。
そこには、さっき作った唐揚げの山もある。
「「「いただきます」」
「美味しい!!」
「よかったー。このサラダ、新しく最近考えたドレッシングを使ってるの」
「俺も一緒に考えた」
「潤も……! さすが」
「そんなことないよ」
嬉しそうにしながら、潤も箸を進める。
「唐揚げも美味しい!」
「守くんが頑張って味付けしてくれたからよ」
嬉しそうに笑う潤と潤の母を見て、心までも温まる。
潤の家族と一緒に食卓を囲みながら、話をして料理を食べることができたのが、とても嬉しい。
いつか俺たちのこともお互いの親に話そう、と思える日が来たらいいなと心から思った。
「「「ごちそうさまでした」」」
食事を終えた後、食器などの片づけをして、先にお風呂に入らせてもらった。
前回のように、先にお風呂から上がり、潤の部屋で本を読んで待っていると、潤のお母さんがケーキを持ってきてくれた。
「見てーー。こんなに美味しそう! あとは二人で好きなだけ食べてね」
そう言って潤の母は、ケーキを机に置いてくれる。
何度見ても美味しそうなケーキを前に、自分が作るのに参加したことが信じられなくなる。
しばらくすると、潤もお風呂から上がってきた。
「お。ケーキ!もう食べよっか」
潤の母が用意してくれたケーキ用の包丁を使い、六等分に切る。
「じゃあ、いただこうか」
「うん」
「生クリームが溶ける」
「ほんとだ。今日のケーキは守も一緒だから、特に美味しい」
潤の甘い言葉に、ドキッとする。
ケーキは、ちょうどいい甘さの生クリームと果物の甘さがマッチして、絶妙な味でとても美味しい。
「今日、一日潤と過ごせて本当に幸せだった」
「それはこちらこそだよ。ありがとう」
「また来年も一緒に思い出作れたらいいよな」
「うん。再来年も、その先も」
二人の手が重なる。
「クリスマスプレゼント、あと一つお願いしていい?」
「うん。なに?」
「守がほしい」
「うん……最後まではいけないと思うけど」
俺の手を潤が強く握る。
「じゃあ、そろそろケーキは片付けようか」
「そうだね」
完
