「では……付き合うということで、よろしいでしょうか」
「はい。よろしいです」
「あ、じゃあ、よ……よろしくお願いします?」
「よろしくお願いします」
稽古終わりの帰り道、二人はファミレスに向かって並んで歩いていた。勝負に負けた冬梧はまだ若干不貞腐れている。
「まあ別に、勝っても負けても付き合うつもりだったから」
そんな負け惜しみを言い始める。
瑛斗は「はいはい」と半目で頷きつつも、やっと付き合えるという感慨にどっぷりと浸っていた。
……あれ? 付き合うって、なんだ?
いっつもニコイチで一緒にいた俺ら、付き合って何か変わることある?
「大変だ冬梧」
「え。なに」
「付き合うって……何?」
「ええ……そこから?」
冬梧は呆れたように鼻を鳴らしたが、「付き合うっていうのは……」と言いかけたまま、ピタッと固まった。
「……なんだ?」
すんごい真面目な顔で問い返してくる。絶望的だ。
瑛斗は「こういう時は」とさっそくスマホを取り出し、ブラウザの検索欄に『付き合うとは』と打ち込んだ。
『モテ子:付き合うっていうのは、恋人として交際することだよ★ 恋人らしいことをして、さらに関係を深めよう♡』
出てきたモテ子先生の格言を、どや顔で冬梧に見せる。冬梧は「……恋人」と呟いたまま、深く考え込んでしまった。
瑛斗はそのままモテ子のページをスクロールし、『恋人に喜ばれること』の項目を熟読した。
一番上に『手料理を振る舞う』があるじゃん!
これは絶好の恋人チャンスでは!?
「冬梧! ファミレス、行くのやめ!」
「え」
「冷凍ご飯がたくさん残ってたから、俺が家でカレーピラフを作ってやろう。綾音の帰りも遅いし」
ドヤ顔で提案すると、冬梧が真顔のままフリーズした。
「……瑛斗んち、これから行くってこと?」
しばらくして、そんな当たり前のことを聞いてくる。
「え、うん」
「……ほぉ」
「え、カレーピラフ、やだ?」
「いや。……食べる」
何をそんなに硬直してるんだこいつ。
俺の飯は美味いっつーの。
瑛斗がレシピサイトで足りない食材がないかチェックしながら歩く間、隣の冬梧はずっと、どこか落ち着かない様子で無言だった。
*
「美味い」
瑛斗が手際よく作ったカレーピラフを一口食べ、冬梧は驚いたように顔を上げた。
「だろ?」
キッチンで包丁片手にその様子を見ていた瑛斗は、そっと包丁をまな板の上に置いた。
よしよし。恋人らしいことその一、達成じゃん。
余り物のカレーピラフをキッチンで立ち食いしながら、片手でスマホをスクロールする。
『手料理を振る舞って、彼の胃袋を掴んだら、お待ちかねの夜のスキンシップチャンス★』
「ブホッ!!」
カレーピラフを盛大に吹き出す。
「汚ねぇな」
ダイニングテーブルから冬梧が怪訝な顔で見てくる。瑛斗は激しくむせつつ、キッチンペーパーでシンクに散らばったピラフを慌ててかき集めた。
スキ……スキンシップ!?
モテ子、おま、それはいきなり大胆すぎるだろ!!
「ごちそうさま。美味かった、マジで」
冬梧が空になった皿を持って立ち上がり、キッチンに入ってきた。顔を真っ赤にしながらシンクを拭く瑛斗を見て、「……次はモテ子の何を見た?」と静かに聞いてくる。
ちょ、そういうとこ、急に察しがよくなるんじゃねぇよ。
瑛斗が黙って掃除を続けていると、さっと手からスマホを掠め取られた。
「あ!!」
「……へぇ」
画面を見た後、冬梧がニヤニヤしながら横目で見てくる。瑛斗は「返せ!」とひったくるようにスマホを取り返した。
「冬梧くん、僕たちは、健全な高校生だから……!」
「しないの?」
「は!?」
「スキンシップ」
冬梧が一歩、スッと間合いを詰めてくる。
「……いや、あの、僕たちはね、健全な」
パシッ、と手を取られた。「え?」と瑛斗は冬梧を見上げる。
「手をつなぐとかのことだろ」
あーはーん。なーーんだ、そうだよねぇ! モテ子も、そんな急にハレンチな……ねぇ!?
「瑛斗さんは、何を考えてたんでしょうねえ」
「俺も、手を繋ぐとか、ちゅーとか、そういうの考えてただけだし!」
「へぇ。……ちゅー、考えてたんだ?」
あ、やだ。俺、また余計なこと言った?
逃げようとするも、逆に握られた手をグイッと引っ張られる。
「ちゅー、してみる?」
「い、いやぁ……」
「瑛斗には早いか。バカなガキのままだから……」
「はぁ!? んなことねぇし!!」
「じゃあ、する?」
「のぞむところよ!」
挑発に乗って潔く冬梧に向き直ると、冬梧の端正な顔がぐんっ、と近づいてきた。
「あ! ちょ、近くね!? 間合いが……!」
「キスすんのに遠間取ってどうすんだよ」
「いや一回待て、仕切り直し!」
「何を仕切り直すんだよ」
「開始線まで戻れ!」
「キスに開始線ないから」
ふ、と。冬梧が吹き出した音がして、パニックになってずっと視線を逸らしていた瑛斗は、恐る恐る冬梧を見た。
楽しげに笑っていた冬梧と、至近距離でばっちり目が合う。
すると、冬梧の顔がふと真面目な色を帯びた。そのまま、逃げ場を塞ぐように顔が近づいてくる。
一瞬だけ、唇が重なった。
「…………」
「…………」
え。今、した?
ちょっと一瞬すぎてよくわかんなかったけど、多分したよな?
頭の中で処理が追いつかずフリーズしていると、至近距離の冬梧が、ぼそりと「六キロカロリー」と呟いた。
「は?」
「キスって、最大六キロカロリー消費するらしい」
「……マジかよ……え、じゃあ百回すれば牛丼並盛り帳消しになるってこと?」
「そういうことになるかもしれない」
「マジか……すげえな」
「チャレンジしてみる?」
冬梧が悪戯っぽく口端を上げて聞いてきた。瑛斗も負けじと同じようにニヤリと笑う。
「……するっきゃないっしょ」
【検証結果】:20回目くらいで唇が荒れてヒリヒリしてきたので断念した。
*
ネオンの長い蛍光灯が天井を走る廃地下鉄。Zは、数台の自律式のアンドロイドに追い詰められていた。迫り来るアンドロイドたちの腕の先に、高出力のエネルギー波が溜まっていく。
まずい。やられる。
そう思った瞬間、廃地下鉄の天井にノイズと共に四角いデジタルの穴が空いた。その空間の裂け目から、バリバリッ!と青白い電流がほとばしり、アンドロイドたちが一気に焼け焦げて崩れ落ちた。
GON:PICO、強w
MIKAN:どのジョブもできるの頼もしすぎんな
LINA:Zちゃーん、大丈夫!?
ASTRA:Z、マジでお前突っ込みすぎだから。
PICO:手がかかる
Z:めんごめんご
晴れて冬梧から一本を取った瑛斗は、秋也との約束を果たすべく『オルリン』に復活した。「お前がファミレスに行かないなら仕方ない」と、冬梧もぴこたんとして再びログインするようになり、最近やっとクラン【Relay】に入ってくれたのだ。
クランのみんなには、Zの中身が男であること、ASTRAのリア友で、正体を隠して近づいていたことも全部明かした。
みんなは特に気にした様子もなく、「おかえり」とあっさり受け入れてくれた。こういう気楽さは、ネットフレンド特有の距離感なんだと思う。
ASTRA:いいかZ、このダンジョンはだな——
長々と秋也がボイチャ並みのテキストで説明を開始する。
Z:いいから!やってみりゃわかるって!
PICO:指示厨乙
ASTRA:おい!指示厨じゃねえって言ってんだろ!
GON:あすとらの年相応な感じが可愛いわ
MIKAN:さっさと行くぞガキども
LINA:なんか、うちのクラン全体的にガラ悪くなった…?
画面の中のZは、肩ぴこを乗せた完璧な美少女アバターのままだ。ただ、もう何も取り繕わずに素のままの自分でやるMMOは、以前よりもずっと気楽で楽しいものだった。
ダンジョンを無事クリアし、パーティを解散する。
何も言わずとも、すぐにぴこたんからパーティの招待が届いた。
瑛斗はZをいつもの街に転送し、屋台へと向かった。そこには、すでにぴこたんがいつものベンチに腰掛けて待っている。
瑛斗もその隣に『座る』コマンドを入力した。
PICO:今日はレイド回す?
Z:あー、どうしよっかな。メインストーリーももうすぐ終わりそう
PICO:ストーリー終わったらできること増えるよ
Z:マジかよ!これで終わりかと思ってた
PICO:オルリン婚できるのもメインクリア後
Z:ほほぉ?
PICO:結婚するか
Z:マジ?
えー、結婚とか……マジ?
いくらゲーム内とはいえ、なんか、ガチでプロポーズされてるみたいじゃん……!
キーボードの上で指を止め、少しだけ顔を熱くしていると、画面の向こうから容赦ない追撃が飛んできた。
PICO:結婚でもらえるバフアイテムの性能知りたい
……アイテム目当てかよ!!
Z:情緒!!
ぴこたんが腹を抱えて笑うエモートをする。瑛斗はすかさず、Zにシャドーボクシングで威嚇するエモートをさせた。
今日も定位置のベンチからは、錆だらけの賑やかな商店街と、その奥の霧の中に聳え立つ摩天楼が見えている。多種多様なアバターに身を包んだプレイヤーたちが、それぞれの目的を持って、その通りを縦横無尽に駆け巡っていた。
ふと、摩天楼の巨大な電光掲示板に、新しい大型拡張パックの宣伝映像が流れる。
新拡張か。バイト、増やさないと。
そんなことを考えていると、掲示板の映像が切り替わり、文字が現れた。
「接続先が、あなたを見つけました。——ALTER-LINK」
(終)
「はい。よろしいです」
「あ、じゃあ、よ……よろしくお願いします?」
「よろしくお願いします」
稽古終わりの帰り道、二人はファミレスに向かって並んで歩いていた。勝負に負けた冬梧はまだ若干不貞腐れている。
「まあ別に、勝っても負けても付き合うつもりだったから」
そんな負け惜しみを言い始める。
瑛斗は「はいはい」と半目で頷きつつも、やっと付き合えるという感慨にどっぷりと浸っていた。
……あれ? 付き合うって、なんだ?
いっつもニコイチで一緒にいた俺ら、付き合って何か変わることある?
「大変だ冬梧」
「え。なに」
「付き合うって……何?」
「ええ……そこから?」
冬梧は呆れたように鼻を鳴らしたが、「付き合うっていうのは……」と言いかけたまま、ピタッと固まった。
「……なんだ?」
すんごい真面目な顔で問い返してくる。絶望的だ。
瑛斗は「こういう時は」とさっそくスマホを取り出し、ブラウザの検索欄に『付き合うとは』と打ち込んだ。
『モテ子:付き合うっていうのは、恋人として交際することだよ★ 恋人らしいことをして、さらに関係を深めよう♡』
出てきたモテ子先生の格言を、どや顔で冬梧に見せる。冬梧は「……恋人」と呟いたまま、深く考え込んでしまった。
瑛斗はそのままモテ子のページをスクロールし、『恋人に喜ばれること』の項目を熟読した。
一番上に『手料理を振る舞う』があるじゃん!
これは絶好の恋人チャンスでは!?
「冬梧! ファミレス、行くのやめ!」
「え」
「冷凍ご飯がたくさん残ってたから、俺が家でカレーピラフを作ってやろう。綾音の帰りも遅いし」
ドヤ顔で提案すると、冬梧が真顔のままフリーズした。
「……瑛斗んち、これから行くってこと?」
しばらくして、そんな当たり前のことを聞いてくる。
「え、うん」
「……ほぉ」
「え、カレーピラフ、やだ?」
「いや。……食べる」
何をそんなに硬直してるんだこいつ。
俺の飯は美味いっつーの。
瑛斗がレシピサイトで足りない食材がないかチェックしながら歩く間、隣の冬梧はずっと、どこか落ち着かない様子で無言だった。
*
「美味い」
瑛斗が手際よく作ったカレーピラフを一口食べ、冬梧は驚いたように顔を上げた。
「だろ?」
キッチンで包丁片手にその様子を見ていた瑛斗は、そっと包丁をまな板の上に置いた。
よしよし。恋人らしいことその一、達成じゃん。
余り物のカレーピラフをキッチンで立ち食いしながら、片手でスマホをスクロールする。
『手料理を振る舞って、彼の胃袋を掴んだら、お待ちかねの夜のスキンシップチャンス★』
「ブホッ!!」
カレーピラフを盛大に吹き出す。
「汚ねぇな」
ダイニングテーブルから冬梧が怪訝な顔で見てくる。瑛斗は激しくむせつつ、キッチンペーパーでシンクに散らばったピラフを慌ててかき集めた。
スキ……スキンシップ!?
モテ子、おま、それはいきなり大胆すぎるだろ!!
「ごちそうさま。美味かった、マジで」
冬梧が空になった皿を持って立ち上がり、キッチンに入ってきた。顔を真っ赤にしながらシンクを拭く瑛斗を見て、「……次はモテ子の何を見た?」と静かに聞いてくる。
ちょ、そういうとこ、急に察しがよくなるんじゃねぇよ。
瑛斗が黙って掃除を続けていると、さっと手からスマホを掠め取られた。
「あ!!」
「……へぇ」
画面を見た後、冬梧がニヤニヤしながら横目で見てくる。瑛斗は「返せ!」とひったくるようにスマホを取り返した。
「冬梧くん、僕たちは、健全な高校生だから……!」
「しないの?」
「は!?」
「スキンシップ」
冬梧が一歩、スッと間合いを詰めてくる。
「……いや、あの、僕たちはね、健全な」
パシッ、と手を取られた。「え?」と瑛斗は冬梧を見上げる。
「手をつなぐとかのことだろ」
あーはーん。なーーんだ、そうだよねぇ! モテ子も、そんな急にハレンチな……ねぇ!?
「瑛斗さんは、何を考えてたんでしょうねえ」
「俺も、手を繋ぐとか、ちゅーとか、そういうの考えてただけだし!」
「へぇ。……ちゅー、考えてたんだ?」
あ、やだ。俺、また余計なこと言った?
逃げようとするも、逆に握られた手をグイッと引っ張られる。
「ちゅー、してみる?」
「い、いやぁ……」
「瑛斗には早いか。バカなガキのままだから……」
「はぁ!? んなことねぇし!!」
「じゃあ、する?」
「のぞむところよ!」
挑発に乗って潔く冬梧に向き直ると、冬梧の端正な顔がぐんっ、と近づいてきた。
「あ! ちょ、近くね!? 間合いが……!」
「キスすんのに遠間取ってどうすんだよ」
「いや一回待て、仕切り直し!」
「何を仕切り直すんだよ」
「開始線まで戻れ!」
「キスに開始線ないから」
ふ、と。冬梧が吹き出した音がして、パニックになってずっと視線を逸らしていた瑛斗は、恐る恐る冬梧を見た。
楽しげに笑っていた冬梧と、至近距離でばっちり目が合う。
すると、冬梧の顔がふと真面目な色を帯びた。そのまま、逃げ場を塞ぐように顔が近づいてくる。
一瞬だけ、唇が重なった。
「…………」
「…………」
え。今、した?
ちょっと一瞬すぎてよくわかんなかったけど、多分したよな?
頭の中で処理が追いつかずフリーズしていると、至近距離の冬梧が、ぼそりと「六キロカロリー」と呟いた。
「は?」
「キスって、最大六キロカロリー消費するらしい」
「……マジかよ……え、じゃあ百回すれば牛丼並盛り帳消しになるってこと?」
「そういうことになるかもしれない」
「マジか……すげえな」
「チャレンジしてみる?」
冬梧が悪戯っぽく口端を上げて聞いてきた。瑛斗も負けじと同じようにニヤリと笑う。
「……するっきゃないっしょ」
【検証結果】:20回目くらいで唇が荒れてヒリヒリしてきたので断念した。
*
ネオンの長い蛍光灯が天井を走る廃地下鉄。Zは、数台の自律式のアンドロイドに追い詰められていた。迫り来るアンドロイドたちの腕の先に、高出力のエネルギー波が溜まっていく。
まずい。やられる。
そう思った瞬間、廃地下鉄の天井にノイズと共に四角いデジタルの穴が空いた。その空間の裂け目から、バリバリッ!と青白い電流がほとばしり、アンドロイドたちが一気に焼け焦げて崩れ落ちた。
GON:PICO、強w
MIKAN:どのジョブもできるの頼もしすぎんな
LINA:Zちゃーん、大丈夫!?
ASTRA:Z、マジでお前突っ込みすぎだから。
PICO:手がかかる
Z:めんごめんご
晴れて冬梧から一本を取った瑛斗は、秋也との約束を果たすべく『オルリン』に復活した。「お前がファミレスに行かないなら仕方ない」と、冬梧もぴこたんとして再びログインするようになり、最近やっとクラン【Relay】に入ってくれたのだ。
クランのみんなには、Zの中身が男であること、ASTRAのリア友で、正体を隠して近づいていたことも全部明かした。
みんなは特に気にした様子もなく、「おかえり」とあっさり受け入れてくれた。こういう気楽さは、ネットフレンド特有の距離感なんだと思う。
ASTRA:いいかZ、このダンジョンはだな——
長々と秋也がボイチャ並みのテキストで説明を開始する。
Z:いいから!やってみりゃわかるって!
PICO:指示厨乙
ASTRA:おい!指示厨じゃねえって言ってんだろ!
GON:あすとらの年相応な感じが可愛いわ
MIKAN:さっさと行くぞガキども
LINA:なんか、うちのクラン全体的にガラ悪くなった…?
画面の中のZは、肩ぴこを乗せた完璧な美少女アバターのままだ。ただ、もう何も取り繕わずに素のままの自分でやるMMOは、以前よりもずっと気楽で楽しいものだった。
ダンジョンを無事クリアし、パーティを解散する。
何も言わずとも、すぐにぴこたんからパーティの招待が届いた。
瑛斗はZをいつもの街に転送し、屋台へと向かった。そこには、すでにぴこたんがいつものベンチに腰掛けて待っている。
瑛斗もその隣に『座る』コマンドを入力した。
PICO:今日はレイド回す?
Z:あー、どうしよっかな。メインストーリーももうすぐ終わりそう
PICO:ストーリー終わったらできること増えるよ
Z:マジかよ!これで終わりかと思ってた
PICO:オルリン婚できるのもメインクリア後
Z:ほほぉ?
PICO:結婚するか
Z:マジ?
えー、結婚とか……マジ?
いくらゲーム内とはいえ、なんか、ガチでプロポーズされてるみたいじゃん……!
キーボードの上で指を止め、少しだけ顔を熱くしていると、画面の向こうから容赦ない追撃が飛んできた。
PICO:結婚でもらえるバフアイテムの性能知りたい
……アイテム目当てかよ!!
Z:情緒!!
ぴこたんが腹を抱えて笑うエモートをする。瑛斗はすかさず、Zにシャドーボクシングで威嚇するエモートをさせた。
今日も定位置のベンチからは、錆だらけの賑やかな商店街と、その奥の霧の中に聳え立つ摩天楼が見えている。多種多様なアバターに身を包んだプレイヤーたちが、それぞれの目的を持って、その通りを縦横無尽に駆け巡っていた。
ふと、摩天楼の巨大な電光掲示板に、新しい大型拡張パックの宣伝映像が流れる。
新拡張か。バイト、増やさないと。
そんなことを考えていると、掲示板の映像が切り替わり、文字が現れた。
「接続先が、あなたを見つけました。——ALTER-LINK」
(終)

