そうして今夜もまた、消灯の時間になった。
スタンドライトだけが灯る室内。同じベッドの中で、おれたちは向かい合っている。
「……なんか、あれだな」
ごほんと咳払いしながら藤倉が言った。
「ちゃんとした同衾って思うと、無性に照れるな」
「言い方……」
(そんでそういうこと言わないでよ。おれも照れる……)
というか、正直言えば指摘される前から照れている。駆け足の心拍が伝わっていないかと心配なほどだ。
──ほんの数十分前、おれたちは恋人同士になった。
今目の前にいるのはおれの彼氏。そう思うと、暗闇の怖さもほとんど気にならないのはどうしてだろう。
「……柏木」
「なに?」
「キスしていい?」
ひときわ大きく心臓が跳ね上がる。一気に体温が上がっていくのがはっきりわかる。
「……うん」
「…………」
か細い声で答えたおれを、腰に回ってきた手がそっと抱き寄せた。
(うわ……)
今までにない近さで見つめ合う。
藤倉の顔は緊張していた。きっとおれも同じような顔をしているだろう。
さらに近づいてきた時、おれは目を閉じた。
闇に閉ざされた視界の中、唇の触れ合う感触だけをはっきり感じる。柔らかくて温かい。
(……すごい。この暗闇、今までで一番怖くない)
(それどころか……幸せ)
こんなに幸福な暗闇があるなんて、生まれて初めて知ってしまった。
触れて、離れて。何度か繰り返して、終わってからも静かに余韻に浸っていると……
「……やばい」
藤倉が吐息混じりの声をこぼす。
「勃つかも」
「えっっ」
一瞬で余韻が吹き飛んで、目を剝いた。
「えっ、あのっ……我慢できるんじゃ……!?」
(さ、さすがに交際初日でそこまでは……! そもそもここ寮だし……!)
「で、できるできる……大丈夫…………多分」
(多分!)
余裕のない笑みを浮かべて、藤倉はもう一度チュッと軽いキスをした。
「俺の我慢の限界が来るまでに、柏木には一人寝にも慣れてもらわなきゃな」
(つまり、ベッドを分ければ我慢できるってこと?)
「が、頑張る」
平穏な寮生活のために、精いっぱい努力しよう。
そう誓いながら大きくうなずいた。
●END●



