今日のグループワークも天馬を捕まえるところから始まった。
先日の授業の二時限目は、天馬を探し回ったが見つけられずに、教室に戻ったら、窓際の席で悠々とそよ風に吹かれていやがった。
遅れて教室に来た先生よりも遅れてしまっていて、「どこへいってたのか」という先生の問いに、図書室ですと適当な嘘で誤魔化した。
遅刻扱いにはならなかったが、天馬の呆れ顔がかなりむかついた。
結局、野球選手について調べることになったのだが、あ、いや、もうそれで勝手に決定にさせてもらったんだけど、天馬はそれならやっておいてと興味ない表情で走りに行ってしまった。
勝手に決めたのは悪かったけどさ、やっておいてもひどくないか?
グループワークって意味わかってるか?
天馬を探し疲れ、渡り廊下の窓にもたれると、すぐ下にチーターの尻尾が見えた。
え、いるじゃん。
何してんの、あいつ。
校門から駐輪場までの一直線の道を、天馬は走っていた。
バネのように足が動き、一瞬で駐輪場に停めてある自転車まで走りきっている。
流れるような動きに、尻尾が付いていき、耳の毛と柔らかそうな色素の薄い髪が靡いている。
綺麗……
そう感じた。
そして次の瞬間には、スタート地点に戻ってきていた。
走りきった天馬は、制服のシャツのボタンを外し、胸元を開けてパタパタと風を送っている。
息切れしながらも、満足そうな顔をしているのは、走るのが好きだからだろう。
あれだけ綺麗に走れるのだから、それは納得だ。
なんとなく、頭の上の耳も、だらんと垂れているだけの尻尾も嬉しそうに動いているように見えるのは絶対錯覚だってわかっている。
でも、そう見える。
あいつ、チーターなのかもな……。
いや、違う。
教室に戻らせたいんだった。
俺は、窓を開けて天馬に向かって叫んだ。
「天馬っ! 教室戻るぞ!」
サッとこっちを見た天馬の耳が、ギッと伏せられたように見えて、一瞬でまたいなくなった。
「あっ、逃げんなって!」
どこいくつもりだよ、サボってるのバレるぞ。
俺は慌てて階段を降りていったが、もう天馬の姿は見つけられなかった。
「あーもう、どうすりゃいい……」
先まで天馬がいた校門の門に寄りかかって、空を見上げれば、流れる雲の間に鳥が飛んでいた。
すぐ横の木の上にはスズメがちゅんちゅんと言っている。
「こいつらの方が捕まえやすそうじゃね?」
俺はおもむろにスマホを取り出すと『すずめ 捕まえ方』と入力する。
検索結果がつらつらと画面に出てくるが、それを読む前にハッとした。
「違うしっ! あ、いや、でも……」
次に検索窓に入れたのは『チーター 捕まえ方』
その検索結果を読みながら、俺はまた校舎の中に入っていく。
「大きな檻、麻酔銃…………」
スマホの画面には今は到底準備できないものが並べられ、俺はため息をついた。
いや、捕まえたいのは人間か。
スクロールを続けると、関連記事に、野球選手の名言があった。
なんとなく流し読みしながら、階段を上がる。
もう面倒だな、今日は諦めて教室に戻るか。
いや、もう戻ってるかもしれないな。
この前も先に戻ってた。
あの時のあいつの顔……
あー、むかついてきた~。
教室のある階の廊下に出ようとした角で、ポスっと誰かとぶつかった。
「あ、すいません!」
「いや……」
俺の胸元にぶつかってきたのは、猫耳……じゃなかった、チーターのつけ耳で、パシッと膝に当たったのは、チーターのつけしっぽだった。
「天馬っ!」
「げっ……」
俺の反応速度は速かった。
咄嗟に天馬の腕を掴んで、壁に押し付ける。
バンと天馬の顔の横の壁を勢いよく叩いて退路を断つ。
天馬の肩が驚くほど跳ね上がって、ギュッと目をつぶられた。
「あ、悪い……」
乱暴をするつもりはなかったが、俺より小柄な天馬には乱暴な扱いに感じただろう。
「…………」
天馬は、ゆっくりと俺を見上げ、不安そうな顔をした。
童顔がより幼く見える。
つけ耳としっぽも萎れているように見えて、すごく申し訳なくなった。
しかし、この自由人、いや、自由なチーターに、言うことは言わないといけない。
先日の授業の二時限目は、天馬を探し回ったが見つけられずに、教室に戻ったら、窓際の席で悠々とそよ風に吹かれていやがった。
遅れて教室に来た先生よりも遅れてしまっていて、「どこへいってたのか」という先生の問いに、図書室ですと適当な嘘で誤魔化した。
遅刻扱いにはならなかったが、天馬の呆れ顔がかなりむかついた。
結局、野球選手について調べることになったのだが、あ、いや、もうそれで勝手に決定にさせてもらったんだけど、天馬はそれならやっておいてと興味ない表情で走りに行ってしまった。
勝手に決めたのは悪かったけどさ、やっておいてもひどくないか?
グループワークって意味わかってるか?
天馬を探し疲れ、渡り廊下の窓にもたれると、すぐ下にチーターの尻尾が見えた。
え、いるじゃん。
何してんの、あいつ。
校門から駐輪場までの一直線の道を、天馬は走っていた。
バネのように足が動き、一瞬で駐輪場に停めてある自転車まで走りきっている。
流れるような動きに、尻尾が付いていき、耳の毛と柔らかそうな色素の薄い髪が靡いている。
綺麗……
そう感じた。
そして次の瞬間には、スタート地点に戻ってきていた。
走りきった天馬は、制服のシャツのボタンを外し、胸元を開けてパタパタと風を送っている。
息切れしながらも、満足そうな顔をしているのは、走るのが好きだからだろう。
あれだけ綺麗に走れるのだから、それは納得だ。
なんとなく、頭の上の耳も、だらんと垂れているだけの尻尾も嬉しそうに動いているように見えるのは絶対錯覚だってわかっている。
でも、そう見える。
あいつ、チーターなのかもな……。
いや、違う。
教室に戻らせたいんだった。
俺は、窓を開けて天馬に向かって叫んだ。
「天馬っ! 教室戻るぞ!」
サッとこっちを見た天馬の耳が、ギッと伏せられたように見えて、一瞬でまたいなくなった。
「あっ、逃げんなって!」
どこいくつもりだよ、サボってるのバレるぞ。
俺は慌てて階段を降りていったが、もう天馬の姿は見つけられなかった。
「あーもう、どうすりゃいい……」
先まで天馬がいた校門の門に寄りかかって、空を見上げれば、流れる雲の間に鳥が飛んでいた。
すぐ横の木の上にはスズメがちゅんちゅんと言っている。
「こいつらの方が捕まえやすそうじゃね?」
俺はおもむろにスマホを取り出すと『すずめ 捕まえ方』と入力する。
検索結果がつらつらと画面に出てくるが、それを読む前にハッとした。
「違うしっ! あ、いや、でも……」
次に検索窓に入れたのは『チーター 捕まえ方』
その検索結果を読みながら、俺はまた校舎の中に入っていく。
「大きな檻、麻酔銃…………」
スマホの画面には今は到底準備できないものが並べられ、俺はため息をついた。
いや、捕まえたいのは人間か。
スクロールを続けると、関連記事に、野球選手の名言があった。
なんとなく流し読みしながら、階段を上がる。
もう面倒だな、今日は諦めて教室に戻るか。
いや、もう戻ってるかもしれないな。
この前も先に戻ってた。
あの時のあいつの顔……
あー、むかついてきた~。
教室のある階の廊下に出ようとした角で、ポスっと誰かとぶつかった。
「あ、すいません!」
「いや……」
俺の胸元にぶつかってきたのは、猫耳……じゃなかった、チーターのつけ耳で、パシッと膝に当たったのは、チーターのつけしっぽだった。
「天馬っ!」
「げっ……」
俺の反応速度は速かった。
咄嗟に天馬の腕を掴んで、壁に押し付ける。
バンと天馬の顔の横の壁を勢いよく叩いて退路を断つ。
天馬の肩が驚くほど跳ね上がって、ギュッと目をつぶられた。
「あ、悪い……」
乱暴をするつもりはなかったが、俺より小柄な天馬には乱暴な扱いに感じただろう。
「…………」
天馬は、ゆっくりと俺を見上げ、不安そうな顔をした。
童顔がより幼く見える。
つけ耳としっぽも萎れているように見えて、すごく申し訳なくなった。
しかし、この自由人、いや、自由なチーターに、言うことは言わないといけない。
