私立榎原高校。
『自由』それが俺の通う学校の校風だが、俺の目の前には、明らかに自由すぎる男が座っている。
「天馬くん、気になる職業についてだって。何かある?」
今週の自由課題はグループワークで、気になる職業について二人で調べ発表するというものだ。
出席番号順でグループを作られ、俺のすぐ後ろの席の天馬駆と一緒にやることになってしまった。
天馬は窓の外を見ていた視線を面倒臭そうに俺に向けて、頭の上についた丸いつけ耳に触れる。
何か違和感がある?
あぁ、つけ耳? 私立榎原高校は『自由』が校風だからさ。
ちなみに、やつの腰からは床に向かってしっぽも垂れている。
なんでかって? 多分今から天馬が言うよ。その理由。
「俺さ、チーターになるから」
はい、出ました。
幼稚園児の将来の夢みたいな事を真面目な顔して言うんだよ、こいつは。
幼稚園児まではいかないけれど、まぁまぁ童顔な顔で、表情もなく、天馬はまた外へ視線を戻した。
「じゃ、じゃあ、動物園の飼育員とか? 調べる?」
「チーターだって」
「チ……ター……ね……」
会話が成立しないんだけど!
チーターになるって何?
どういうこと?
どう言ってあげればいいの?
俺は配られたワークプリントに天馬の名前を入れて、将来の夢の欄にチーターと書いた。
文字が大きくため息と共に歪んでいく。
「隆平は?」
「へ?」
天馬から名前を呼ばれて驚く。それも下の名前を呼び捨てだ。
今まで一度たりとも名前を呼ばれたことはない。
後ろの席だというのに会話すらまともにしたことがなかったから。
いや、だって耳と尻尾がついてる高校生だぞ?
なかなか会話の糸口は見つけられないだろ。
「将来の夢だよ。気になる職業だっけ?」
「あ、あー、野球選手、かな?」
「ふっ、小学生かよ」
はぁ? お前に言われたくないんだけど?!
思わず持っていたプリントを握りしめてくしゃくしゃにしてしまった。
俺は言い返す言葉を探すが、天馬は窓の外に興味があるのか、首を伸ばして階下を覗き込んでいた。
まぁ、ここでキレても話は進まない。
とりあえず、今日は調べる職業だけでも決めないと。
俺が天馬に向き直ろうとしたところで、無情にも終業のチャイムが鳴った。
先生は、二時間続けてのコマ割りだからと自由に休憩しろとだけ言って教室を出て行った。
これは次の時間の始まりに遅れてくる気だ。
「なぁ、とりあえず何でもいいから調べるもの決めねぇ?」
俺がプリントから天馬に顔を上げると、天馬は椅子から立ち上がって、窓に身を乗り出していた。
何? なんかあんの?
天馬のつけ耳の毛が、風に揺れている。
尻尾の先が椅子に乗っていて、天馬が動くたびにクネクネと動いている。
その尻尾の根元は、天馬の細い腰につながっていて……。
綺麗な身体してんだよな。
無駄がないっていうか、スプリントタイプ。
短距離走で全国行くレベルだって聞いたことあったな。
あながちチーターも夢じゃないのかもな。
「俺さ、ちょっと走ってくる」
「はっ?」
天馬はそう言うと、すごい速さで教室の出口に向かって行った。
いや、待てよ!
グループワークどうするつもりだよ!
絶対次の時間サボるだろ!
俺は慌てて立ち上がり、天馬を追いかけた。
くしゃくしゃになったプリントが、ヒラヒラと机から落ちていくのが見えたが、とりあえずは天馬を捕まえるのが先だ。
しかし、廊下に出た瞬間にはもう、天馬を見失っていた。
『自由』それが俺の通う学校の校風だが、俺の目の前には、明らかに自由すぎる男が座っている。
「天馬くん、気になる職業についてだって。何かある?」
今週の自由課題はグループワークで、気になる職業について二人で調べ発表するというものだ。
出席番号順でグループを作られ、俺のすぐ後ろの席の天馬駆と一緒にやることになってしまった。
天馬は窓の外を見ていた視線を面倒臭そうに俺に向けて、頭の上についた丸いつけ耳に触れる。
何か違和感がある?
あぁ、つけ耳? 私立榎原高校は『自由』が校風だからさ。
ちなみに、やつの腰からは床に向かってしっぽも垂れている。
なんでかって? 多分今から天馬が言うよ。その理由。
「俺さ、チーターになるから」
はい、出ました。
幼稚園児の将来の夢みたいな事を真面目な顔して言うんだよ、こいつは。
幼稚園児まではいかないけれど、まぁまぁ童顔な顔で、表情もなく、天馬はまた外へ視線を戻した。
「じゃ、じゃあ、動物園の飼育員とか? 調べる?」
「チーターだって」
「チ……ター……ね……」
会話が成立しないんだけど!
チーターになるって何?
どういうこと?
どう言ってあげればいいの?
俺は配られたワークプリントに天馬の名前を入れて、将来の夢の欄にチーターと書いた。
文字が大きくため息と共に歪んでいく。
「隆平は?」
「へ?」
天馬から名前を呼ばれて驚く。それも下の名前を呼び捨てだ。
今まで一度たりとも名前を呼ばれたことはない。
後ろの席だというのに会話すらまともにしたことがなかったから。
いや、だって耳と尻尾がついてる高校生だぞ?
なかなか会話の糸口は見つけられないだろ。
「将来の夢だよ。気になる職業だっけ?」
「あ、あー、野球選手、かな?」
「ふっ、小学生かよ」
はぁ? お前に言われたくないんだけど?!
思わず持っていたプリントを握りしめてくしゃくしゃにしてしまった。
俺は言い返す言葉を探すが、天馬は窓の外に興味があるのか、首を伸ばして階下を覗き込んでいた。
まぁ、ここでキレても話は進まない。
とりあえず、今日は調べる職業だけでも決めないと。
俺が天馬に向き直ろうとしたところで、無情にも終業のチャイムが鳴った。
先生は、二時間続けてのコマ割りだからと自由に休憩しろとだけ言って教室を出て行った。
これは次の時間の始まりに遅れてくる気だ。
「なぁ、とりあえず何でもいいから調べるもの決めねぇ?」
俺がプリントから天馬に顔を上げると、天馬は椅子から立ち上がって、窓に身を乗り出していた。
何? なんかあんの?
天馬のつけ耳の毛が、風に揺れている。
尻尾の先が椅子に乗っていて、天馬が動くたびにクネクネと動いている。
その尻尾の根元は、天馬の細い腰につながっていて……。
綺麗な身体してんだよな。
無駄がないっていうか、スプリントタイプ。
短距離走で全国行くレベルだって聞いたことあったな。
あながちチーターも夢じゃないのかもな。
「俺さ、ちょっと走ってくる」
「はっ?」
天馬はそう言うと、すごい速さで教室の出口に向かって行った。
いや、待てよ!
グループワークどうするつもりだよ!
絶対次の時間サボるだろ!
俺は慌てて立ち上がり、天馬を追いかけた。
くしゃくしゃになったプリントが、ヒラヒラと机から落ちていくのが見えたが、とりあえずは天馬を捕まえるのが先だ。
しかし、廊下に出た瞬間にはもう、天馬を見失っていた。
