パタパタほんわか日常

「なにかしら?何か悩みでもある?」

「いいえ。健康そのものです。…はい、あんぱん。2人で食べましょ?」

2つのうち1つを木内さんの前に差し出す。すると不意をつかれたように1度目を丸くしたあとふんわりと笑顔を広げた。

「まあ、良いの?これ、朱音ちゃんのでしょう」

「全然いいんです。木内さんと食べたくて2つ買ったんですから。お客さんもいないし、お茶会しましょうよ」

わたしの言葉に更に笑みを深める。まるでたんぽぽのようだ。

「わたしのために買ってくれていたの?ありがとう。お茶会ならお茶が必須じゃない。緑茶で良ければ取ってくるから待っていてね」

照れたように席を立ち、店の奥に消えていく。どこまでも可愛らしい人だ。

「はい、お茶。こんなものしかなくてごめんねぇ。もう少し飲み物のラインナップを増やしてもらおうかしら?」

2人分の紙コップにお茶を注ぎながら彼女は首を傾げる。わたしも木内さんとは反対方向に首を傾げる。

「ありがとうございます。そうですかね?充分な気がしますが…」

お茶、お水、お酒、ジュース、飲むヨーグルト、ラテに季節の飲み物…本当に充分だと思う。もしかしてさらに抹茶とか言い出すのだろうか…。

「朱音ちゃんが充分と感じているなら当分は増やさなくても良いわね。ふふっ」

「わたし基準ですか!?」

「あら、わたしの中では朱音ちゃんが基準よ?」

当然というように堂々と言い放つ。なんて自信満々なんだ。

「さ、せっかく朱音ちゃんが分けてくれたんだから早く食べましょう。本当にありがとうね」

「あ、そうですね。いえいえ、わたしも食べるの楽しみです」

「「いただきます」」

2人で手を合わせていただきますを言う。いただきますは日本人の常識でしょ?

口に入れた瞬間、ほわっとしたあんぱん特有の食感が当たった。パン生地はほんのり甘い軽い口当たりで、程よくあんこを引き立てる美味しさだ。あんこはこし餡でしっかりどっしりとした甘みがある。隅から中までたっぷり詰まっていてとても美味しい。企業努力にあっぱれだ。

思わず身悶えしそうになる美味しさに頬を押さえていると木内さんも笑いながら幸せそうな笑顔を浮かべていた。

「美味しいでしょう、これ。なんでも、この社長があんぱんが大好きなんだってね」

「ほんっとうに美味しいです!凄く美しい美味しさ…」

「美しいって…うふふ、朱音ちゃんは面白い感想を言うのねぇ」

決して普段から面白い感想を言う訳ではなく、想像以上の美味しさに語彙力が飛んでいっているだけだ。

美味しいね、と言い合いながら食べることはなんて幸せなんだろうか。