胸の突起を唇でやさしく挟み、舌先で転がすと、切ない声が上がった。
「ここ、感じるんだ?」
契斗が髪を乱す。頷いたのか、それとも首を振って否定したのか、判別しにくい。ただ全身を震わせ、肌は粟立っていた。拳を唇に圧しつけ、おれを見下ろしている。視線が合うと、何度も瞬きした。はじめて受ける刺激に戸惑っているように見えた。
安心させるように掌で胸元を円を描きながら撫で、指の付け根で乳首を挟む。もう片方は舌の表面で圧し潰した。
視線を上げて契斗の様子を確認する。契斗はもうおれを見ていなかった。それどころではないというように顎を持ち上げ、後頭部をシーツに擦りつけて感じている。
昔のおれはなぜ、ここに触れようとしなかったのか。これほどまでに契斗が身悶えするとは想像していなかった。
いや、契斗がどこに弱くどうすれば快感を得られるのか、それ自体に興味がなかった。いつも自分本位で、自分の欲求を満たすことしか考えていなかった。
「ちょ……」
臍の下に唇を落とすと、契斗が慌てて頭を持ち上げた。おれがしようとしていることに気づき、息を飲み込む。
「待ってよ、うそ……」
胸への刺激で硬直し上を向いていた器官に唇を這わせた。躊躇いも嫌悪もなかった。当然のように口に含んだ。そのまま強く吸い、手でも刺激を加える。
契斗にやらせるだけで、おれのほうがしたことはなかった。契斗はたちまち身をのけぞらせ、あっという間に爆ぜた。口中に溜まった体液が溢れ、顎を伝い落ちる。契斗が放出したもののほとんどをおれは飲み込んだ。
「ごめ……」
契斗はシーツの上で体を小さく断続的に跳ねさせていた。なにか話そうと唇を震わせているが、呼吸が烈しく乱れていて言葉にならない。
「おれ……こんなんはじめてやったから……」
「そうだよな。ごめん」
混乱した様子の契斗を抱きしめて頭を撫でる。契斗が射精したことはもちろん前にもあった。しかし、こんなふうに奉仕を受けて絶頂に達したのははじめてだった。
こんなに簡単なことを、なぜ今まで一度もしてやれなかったのか。自分を呪いたくなった。
発熱し、細かく痙攣している体を擦っていると、いとおしさがこみ上げてきた。もっとしてやりたいと思った。もっと感じている顔が見たいと思った。
「庸介くん……」
甘い声に耳を擽られながら、身を起こした。契斗の体を裏返し、背中にキスする。引き締まった腰から臀部にかけて指を這わせ、やわらかい皮膚に歯を立てた。
「……なにすんの?」
それもまた、今まで一度もしてやったことがなかった。だから、窄まった部分に舌先が触れたとき、契斗は驚いて首を捻った。臀の肉を指先で割って中心に顔を埋めているおれを見て、信じられないというような声を上げた。
「嫌や、汚い……」
腰をくねらせて離れようとしたが、逃がさなかった。粘膜を舌で刺激し、唾液を送り込む。
嫌がる素振りは見せていたものの、数分前に達したばかりの器官は再び首を擡げはじめている。感じているのだ。
男の性器をしゃぶり、臀の穴に舌を突っ込んでいるというのに、自尊心が損なわれるどころか、おれは確かに満足感を得ていた。自分の手で契斗に傷以外のものを与えている実感に、胸を震わせていた。
契斗の声が烈しくなり、ひときわ高まった。ベッドを軋ませながら、体を波打たせた。立て続けに2度極まって、契斗は脱力した。片脚に下着を引っかけたまま、ベッドに体を横たえ、大きく息を継ぐ。
「おれもしたい……」
「だめ。今日はおれがする」
伸ばされた手をつかみ、手首や手の甲に唇をつける。何度も夢想した契斗の痴態を目の当たりにして、おれも興奮していたが、それよりも契斗をもっと気持ちよくさせてやりたかった。
「かわいい。契斗、かわいい……」
熱に浮かされたように何度も呟いた。
脚を持ち上げ、かろうじて足首に絡みついていた下着を滑り落とした。太腿や脚の付け根、ふくらはぎ、足首と、唇で辿っていく。
舌の根に痺れを感じるほど執拗に全身を嘗めた。皮膚に歯を立て、内部を指でさぐる。どれほどそうしていたのか。時間を忘れるほど夢中になっていた。やがて、契斗が絞り出すような声を上げた。
「もう……無理……」
ほとんど懇願だった。眉間に深く皺を刻み込み、額には汗が光っている。限界なのだった。
シーツを握りしめていた手を弱々しく持ち上げ、おれの腕をつかむ。おれも汗だくで、契斗の指先を滑らせた。
「もういれてよ……」
上擦った声でねだる。おれは契斗の臀部に突っ伏して、肉の割れ目に顔を突っ込んでいた。契斗の体液とおれの唾液で内腿までぐっしょり濡れている。
「待って、あとすこし……」
「もう無理って……」
契斗が上半身を捻って体の向きを変えた。両腕でおれの首にしがみつき、脚を絡めてくる。下腹を擦りつけられ、まずいと思ったときには契斗の腹の上に白濁を撒き散らしていた。
契斗が息を弾ませながら腹の上に溜まった体液を見下ろしている。
「……おれも久しぶりだから」
よけいな弁解を口にしてしまう。契斗は笑わなかった。目を大きく見開き、おれを見上げた。
「どのくらい?」
「……おまえと別れてからだれともしてない」
「嘘や」
あえてなにもいわなかった。信じられないのも当然だ。しかし、契斗は黙っておれを見つめていた。そして昔のようにあっさりおれの言葉を信じた。渾身の力で抱きついてきた。
おれたちは失った時間を埋めるかのように互いの体を抱きしめ、何度も体勢を入れ替えながら腕と脚を絡め、舌を絡めた。
そうしているうちに、再び昂ぶった。硬直した先端を契斗の下腹に圧しつける。
「いれて……」
「待って、ゴム……」
「そんなんええから」
「だめだって」
「お願い、今日だけ」
今日だけ。それはこの瞬間が一瞬だけの幻ではなくこの先もずっとつづいていくのだと実感させてくれた。
思わず言葉を失っていると、胸を圧された。契斗はおれの上に跨がり、ゆっくりと腰を落とした。あっという間に飲み込まれてしまう。
求め、焦がれ、たまらなく切望した瞬間だった。体の奥から突き上げる感情。快感だけではなかった。ほかのなににも形容しがたい熱が全身を駆け抜けた。
「庸介くん……」
体内におれをすべておさめてしまうと、契斗はゆっくりと上半身を倒し、おれの額にくちづけた。花の蕾をあつかうかのように両方の掌でおれの顔を包む。あたたかい息が鼻先を掠めた。
「契斗、好きだ」
声が掠れて震えた。自分が泣いていたかどうか、判然としない。おれは赤ん坊のように契斗の胸に顔を埋めていた。
「ものすごく好きなんだよ。愛してる、ほんとに……」
契斗は頷いておれの頭を抱きしめた。おれを包み込み、受け容れてくれた。おれの髪に頬を擦りつけ、いった。
「おれも好き」
途轍もなく情けない顔をしていただろう。おれを見つめ、契斗は笑った。
「……信じてへんの?」
「いや……」
疑っているわけではない。だが、あまりにも現実感がなかった。おれの愛が一方的でないのなら、人生を終えても構わないと思った。
「庸介くんとおなじくらいかどうかはわからへんけど」
しっとりとした掌をおれの胸にあてて、契斗はいった。
「でももう離れたくない。ずっといっしょにいたい」
唇が重なる。言葉はもう不要だった。おれは契斗の体を揺さぶり、契斗は体を撓らせた。魂が結びつき、心も体もなにもかも溶けあってひとつになっていた。
小さなソウルの部屋のなかで、おれたちは朝がくるまで互いの体を一瞬も離さなかった。
「ここ、感じるんだ?」
契斗が髪を乱す。頷いたのか、それとも首を振って否定したのか、判別しにくい。ただ全身を震わせ、肌は粟立っていた。拳を唇に圧しつけ、おれを見下ろしている。視線が合うと、何度も瞬きした。はじめて受ける刺激に戸惑っているように見えた。
安心させるように掌で胸元を円を描きながら撫で、指の付け根で乳首を挟む。もう片方は舌の表面で圧し潰した。
視線を上げて契斗の様子を確認する。契斗はもうおれを見ていなかった。それどころではないというように顎を持ち上げ、後頭部をシーツに擦りつけて感じている。
昔のおれはなぜ、ここに触れようとしなかったのか。これほどまでに契斗が身悶えするとは想像していなかった。
いや、契斗がどこに弱くどうすれば快感を得られるのか、それ自体に興味がなかった。いつも自分本位で、自分の欲求を満たすことしか考えていなかった。
「ちょ……」
臍の下に唇を落とすと、契斗が慌てて頭を持ち上げた。おれがしようとしていることに気づき、息を飲み込む。
「待ってよ、うそ……」
胸への刺激で硬直し上を向いていた器官に唇を這わせた。躊躇いも嫌悪もなかった。当然のように口に含んだ。そのまま強く吸い、手でも刺激を加える。
契斗にやらせるだけで、おれのほうがしたことはなかった。契斗はたちまち身をのけぞらせ、あっという間に爆ぜた。口中に溜まった体液が溢れ、顎を伝い落ちる。契斗が放出したもののほとんどをおれは飲み込んだ。
「ごめ……」
契斗はシーツの上で体を小さく断続的に跳ねさせていた。なにか話そうと唇を震わせているが、呼吸が烈しく乱れていて言葉にならない。
「おれ……こんなんはじめてやったから……」
「そうだよな。ごめん」
混乱した様子の契斗を抱きしめて頭を撫でる。契斗が射精したことはもちろん前にもあった。しかし、こんなふうに奉仕を受けて絶頂に達したのははじめてだった。
こんなに簡単なことを、なぜ今まで一度もしてやれなかったのか。自分を呪いたくなった。
発熱し、細かく痙攣している体を擦っていると、いとおしさがこみ上げてきた。もっとしてやりたいと思った。もっと感じている顔が見たいと思った。
「庸介くん……」
甘い声に耳を擽られながら、身を起こした。契斗の体を裏返し、背中にキスする。引き締まった腰から臀部にかけて指を這わせ、やわらかい皮膚に歯を立てた。
「……なにすんの?」
それもまた、今まで一度もしてやったことがなかった。だから、窄まった部分に舌先が触れたとき、契斗は驚いて首を捻った。臀の肉を指先で割って中心に顔を埋めているおれを見て、信じられないというような声を上げた。
「嫌や、汚い……」
腰をくねらせて離れようとしたが、逃がさなかった。粘膜を舌で刺激し、唾液を送り込む。
嫌がる素振りは見せていたものの、数分前に達したばかりの器官は再び首を擡げはじめている。感じているのだ。
男の性器をしゃぶり、臀の穴に舌を突っ込んでいるというのに、自尊心が損なわれるどころか、おれは確かに満足感を得ていた。自分の手で契斗に傷以外のものを与えている実感に、胸を震わせていた。
契斗の声が烈しくなり、ひときわ高まった。ベッドを軋ませながら、体を波打たせた。立て続けに2度極まって、契斗は脱力した。片脚に下着を引っかけたまま、ベッドに体を横たえ、大きく息を継ぐ。
「おれもしたい……」
「だめ。今日はおれがする」
伸ばされた手をつかみ、手首や手の甲に唇をつける。何度も夢想した契斗の痴態を目の当たりにして、おれも興奮していたが、それよりも契斗をもっと気持ちよくさせてやりたかった。
「かわいい。契斗、かわいい……」
熱に浮かされたように何度も呟いた。
脚を持ち上げ、かろうじて足首に絡みついていた下着を滑り落とした。太腿や脚の付け根、ふくらはぎ、足首と、唇で辿っていく。
舌の根に痺れを感じるほど執拗に全身を嘗めた。皮膚に歯を立て、内部を指でさぐる。どれほどそうしていたのか。時間を忘れるほど夢中になっていた。やがて、契斗が絞り出すような声を上げた。
「もう……無理……」
ほとんど懇願だった。眉間に深く皺を刻み込み、額には汗が光っている。限界なのだった。
シーツを握りしめていた手を弱々しく持ち上げ、おれの腕をつかむ。おれも汗だくで、契斗の指先を滑らせた。
「もういれてよ……」
上擦った声でねだる。おれは契斗の臀部に突っ伏して、肉の割れ目に顔を突っ込んでいた。契斗の体液とおれの唾液で内腿までぐっしょり濡れている。
「待って、あとすこし……」
「もう無理って……」
契斗が上半身を捻って体の向きを変えた。両腕でおれの首にしがみつき、脚を絡めてくる。下腹を擦りつけられ、まずいと思ったときには契斗の腹の上に白濁を撒き散らしていた。
契斗が息を弾ませながら腹の上に溜まった体液を見下ろしている。
「……おれも久しぶりだから」
よけいな弁解を口にしてしまう。契斗は笑わなかった。目を大きく見開き、おれを見上げた。
「どのくらい?」
「……おまえと別れてからだれともしてない」
「嘘や」
あえてなにもいわなかった。信じられないのも当然だ。しかし、契斗は黙っておれを見つめていた。そして昔のようにあっさりおれの言葉を信じた。渾身の力で抱きついてきた。
おれたちは失った時間を埋めるかのように互いの体を抱きしめ、何度も体勢を入れ替えながら腕と脚を絡め、舌を絡めた。
そうしているうちに、再び昂ぶった。硬直した先端を契斗の下腹に圧しつける。
「いれて……」
「待って、ゴム……」
「そんなんええから」
「だめだって」
「お願い、今日だけ」
今日だけ。それはこの瞬間が一瞬だけの幻ではなくこの先もずっとつづいていくのだと実感させてくれた。
思わず言葉を失っていると、胸を圧された。契斗はおれの上に跨がり、ゆっくりと腰を落とした。あっという間に飲み込まれてしまう。
求め、焦がれ、たまらなく切望した瞬間だった。体の奥から突き上げる感情。快感だけではなかった。ほかのなににも形容しがたい熱が全身を駆け抜けた。
「庸介くん……」
体内におれをすべておさめてしまうと、契斗はゆっくりと上半身を倒し、おれの額にくちづけた。花の蕾をあつかうかのように両方の掌でおれの顔を包む。あたたかい息が鼻先を掠めた。
「契斗、好きだ」
声が掠れて震えた。自分が泣いていたかどうか、判然としない。おれは赤ん坊のように契斗の胸に顔を埋めていた。
「ものすごく好きなんだよ。愛してる、ほんとに……」
契斗は頷いておれの頭を抱きしめた。おれを包み込み、受け容れてくれた。おれの髪に頬を擦りつけ、いった。
「おれも好き」
途轍もなく情けない顔をしていただろう。おれを見つめ、契斗は笑った。
「……信じてへんの?」
「いや……」
疑っているわけではない。だが、あまりにも現実感がなかった。おれの愛が一方的でないのなら、人生を終えても構わないと思った。
「庸介くんとおなじくらいかどうかはわからへんけど」
しっとりとした掌をおれの胸にあてて、契斗はいった。
「でももう離れたくない。ずっといっしょにいたい」
唇が重なる。言葉はもう不要だった。おれは契斗の体を揺さぶり、契斗は体を撓らせた。魂が結びつき、心も体もなにもかも溶けあってひとつになっていた。
小さなソウルの部屋のなかで、おれたちは朝がくるまで互いの体を一瞬も離さなかった。



