侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜



アレク叔父さんとの話を終え、道具を新調し、在庫の少ない素材を購入して、屋敷に戻ってきた。

「あれ?エミール兄さんとフィリップ兄さん、もう帰って来てたんだ?」

玄関ホールに2人がいた。

「あぁ。騎士団も魔導師団も避暑休暇は交代で取ることになっているからな」

そう言えばそんなことを言っていたような気がする。

「父さんは?」

「父上は侯爵として、避暑中も忙しそうにしていたよ」

……避暑に行った時、父さんだけ別行動の時があったな。あれ、仕事してたのか。

避暑中に仕事……大変だな。

「フィンはみんなとゆっくり出来たか?」

「まぁね。ゲームしたり……。あ、遠乗りも行った」

……ほとんどゲームをしていたな。

「ゲーム?」

「うん、あとで二人もやってみる?今後、男性陣の社交でやるようになると思うよ」

「なるほど。それで今日は叔父上のところへ行っていたのか」

「そういうこと」

いつもの俺の動きを分かってるエミール兄さんは、やっぱり話が早くて助かる。

「それにしても、フィリップ兄さんどうしたの?今にも倒れそうな感じだけど。避暑に行ってたんでしょ?」

「……ちょっと気になることが出てきて、ずっと魔法の研究をしていたんだよ」

「単なる寝不足だろ。母上やティアナに怒られて、やっと食事の時間を作ったかと思えば、すぐに部屋にひきこもって……」

……。

「心配して損した」

「とりあえず、フィリップは夕食まで仮眠を取ったらどうだ?ゲームは夕食後にでもしよう」

「……そうだね。じゃあ、先に部屋へ行くよ」

……俺より酷いな。

「母さんたちはあと1週間くらい向こうにいるんだよね?」

「あぁ。向こうでお茶会の予定があるとか言っていたな」

「そうなんだ」

ティアナのデビュタント前だから、少しでも慣れさせるためのお茶会だろうな。

……俺も経験がある。


「エミール様、フィン様。応接室にお茶をご用意しておりますので、そちらへどうぞ」

そういえば、まだ玄関ホールにいたな。

俺とエミール兄さんは応接室に移動した。


「そういえば、ゲームは魔導具なのか?」

「違うよ。あ。アレク叔父さんに渡したから、ゲームがない」

「じゃあ、食後にゲームはできないのか」

……いや、まだ時間あるし――

「魔導具じゃないから、すぐに作れるよ」

「そうか。それは楽しみだ。それにしても、魔導具じゃない物を作るとは珍しいな」

「うん。せっかくなら何かあった方が、避暑中楽しいかなって思って作ったんだ。まぁ、前世でやってたゲームだから、すぐに作れたんだけどね」

「なるほど。フィンが作ったものだから、また人気になるのだろうな」

娯楽が少ない世界だから、ある程度売れはするだろう。

「あ。整髭《グルーム》とか旋髭《ローテム》、鼻整《トリーム》も作ったんだ。結構便利だと思うよ。でも、作るのが細かくてめんどくさいから、今回はプレゼントできそうにない」

「整髭《グルーム》と旋髭《ローテム》、鼻整《トリーム》とはなんだ?もちろん、毎回作ってもらうのは気が引けるからな」

「髭剃り型魔導具と鼻毛を整える魔導具だよ」

「……鼻毛?また面白いものを作ったんだな」

「鼻毛を整えるのって、意外とめんどくさいでしょ?鼻整《トリーム》だったら、さっと整えられるから楽だよ」

「楽なのはありがたいな。騎士団の朝は早いから、少しでも朝の準備が楽に終わるなら、もう少し寝ていられる」

「それなら整髭《グルーム》と旋髭《ローテム》も、さっと使えるからちょうどいいと思う」

「それは楽しみだな。いつ頃に販売が始まるんだ?」

「冬の社交シーズンには始まるはずだよ」

「冬か。冬は特に起きるのが辛いからなぁ。簡単に身支度が出来るものは重宝するだろう。騎士団でも欲しい者は多そうだ」

「あ。春頃に食事処を出すんだけど」

「ん?フィンが店を始めるのか?」

「うん。前世の料理を出そうかなって思ってるんだよね。で、その時は騎士団で広めて欲しいなって思って」

「おぉ!もちろんだ!毎日でも通う者は出てくるだろうな」

そうなれば、食事処の治安の心配はなくなる。

「ちなみにどの辺に店を出す予定なんだ?」

「ガレスの屋敷の近く」

「レイグレン伯爵家の近くだと、王城からも近いな。通いやすそうだ。それにしても、フィンが食事処を始めるとは思わなかったな。叔父上に勧められたのか?」

「ガレスとウィルフリード殿下に言われて。俺もふらっと気軽に寄れる店があればいいなって思ったんだよね」

「……?普段部屋にひきこもっているのに?」

「……。たまには出かけてる。今日もリリエン商会に行ってきたし」

……はぁ。エミール兄さんって時々ストレートだよな。
こんなんだから彼女の一人や二人、出来ないんだ。弟として心配だ。

「そういえば、時間で区切って、昼と夜の間の時間は別の店になりそう」

「へぇ。どんな物を出す店なんだ?街の見回り後の休憩時間に寄れるのも良さそうだな」

「街の見回りって警邏の仕事だと思ってた」

「基本はそうだな。でもたまに騎士団も見回りに参加してるんだよ。情報共有みたいなものだな」

「そうなんだ。今まで見たことなかった」

「そりゃあ引きこもっているからな」

「……」

……二度も言わなくていいと思う。

「……多分空いてる時間はカフェが入るんじゃないかな」

「そうか。それならちょうど良さそうだな」