侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜



……。

俺、もう帰ってもいいんだろうか?
さっきからずっとアレク叔父さんが一人でブツブツ言ってるから、俺はもう今日はいい気がするんだけど。

「アレク叔父さん」

「……ん?」

「俺、もう帰っていいかな?」

「いや、まだ何も決まってないよ?場所の候補は何件かあるけど、どのくらいの規模でやりたいとか決めてる?」

「んー……。個室が二、三個あった方がいいかなとは思ってる。あと、軽く飲みたい時にはカウンターでサクッと飲んで帰れたらいいかな」

「個室か……そうなると、改装費もその分かかってくるけど……」

「大丈夫。俺、全然お金使ってないから、結構貯まってると思うし」

魔導具が売れる度に、月に一度まとまって振り込まれる。
それが子どもの頃からだから……今いくらくらい貯まってるんだろう?

「予算を決めるためにも、一度どのくらいの資産があるのか見ておこうか?」

「そうだね」

俺はギルドカードをアレク叔父さんに渡した。

「……」

「……どうかした?」

「フィン……自分の資産額を把握しているかい?」

「いや、全然」

「……そうか」

「え、なに」

「……これだけあれば爵位も簡単に買えてしまうよ」

「爵位?別にいらないけど」

「まあ、フィンはそうだろうね。私だって、最初から欲しかったわけじゃないしね」

「そうなの?」

「私がリリエン伯爵を名乗っているのも、父上が功績を認められて伯爵位をいただいたからだからね」

「じぃちゃんが?」

「そう。魔導具師としての功績でね。その爵位を私が継いだんだ」

「そうだったんだ」

……初めて知った。
いや、聞いたことあったかもしれないけど、興味がなくて話を聞き流してた可能性の方が高いな。

「まぁ、でもフィンは買うまでもなく、男爵位くらいならすぐにでも貰えるかもしれないね」

「え、いらない。快適な生活が、忙しい生活に変わってしまう……」

「でも、そういった話もあったからね。フィンのことをどうするかっていう話し合いの時に。その頃はまだ子供だったから、話は保留になってるはずだよ」

「聞いた事ない話なんだけど」

「フィンは屋敷を出て一人暮らししたいって、兄上や義姉さんに言ったことがないんじゃない?」

「ないね。今なところ快適だし」

「だからじゃないかな?ローゼン家にいる間はなにも問題ないけど、一人暮らしを始めるとなると、それこそ安全面を考えて、男爵位くらい……って話になると思うよ」

「俺的には、エミール兄さんが結婚して、ローゼン家に住むってなったら、家を出ようかなって考えてはいたけど」

「なるほど。フィンが屋敷を出る可能性があるなら、爵位の話が再浮上するかもしれないね」

……。

「……隠居したい」

「何を言ってるんだ? 爵位を貰ったところで、領地はいらないと言えばいいだけだと思うけど? そうすれば、今と忙しさはほとんど変わらないと思うよ」

……そういえば、隠居してスローライフを楽しむみたいな、小説が前世にあった。
楽しそうだったなぁ……。

いいなぁスローライフ。
そうなると、自分の領地があって、好きなように改革出来るなら……いや、やっぱり忙しくなるだけだな。

「そんなことより、食事処どうしよう」

「そんなこと……。そうだね、営業時間はどうしたい?それによっても変わってくるけど」

「昼食と夕食が食べられる店がいいかな」

「昼食と夕食か……。朝と、昼と夕食の間の時間に、カフェのような時間を作るのもいいかもしれないね」

「俺の食事処とは別にってこと?間借りみたいな?」

「そう。最近、家賃が上がって来てて、店を出したくても難しいと思ってる人が結構いるんだ。だから、そういった人向けに時間で区切って営業をしてる店が最近少しずつ増えてるんだよ」

「へぇ」

「そうすることによって、フィンにもメリットが生まれるってわけだね」

「その辺は任せる」

「じゃあ、その方向で進めようか。メニューはフィンが決めるだろう?人員は商人ギルド経由で応募するのがいいと思う。あとは……改装業者の選定と――」

……メニューなにがいいかなぁ。
昼はサッと食べられる物がいいだろう。丼物……うどんもいいな。回転率を考えれば、この二つがいいよな。

夜は酒のあてになるような簡単なものと、食事としてしっかり食べられるものがあるのが理想だな。前世の居酒屋みたいな。

そうなると……ハーブ入りのソーセージはマストだな。ふらっと寄った時に、ビールとソーセージがあれば最高だ。
あ。カプレーゼもいいな。あとは……鍋もいい。小さい一人用の鍋があれば簡単だし、美味い。

季節によってメニューを変えるのもいいな。