侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜



……アレク叔父さん、避暑から帰ってきてるのかな。

大体いつも1週間くらいしか休みを取ってなかったと思うけど……。行って、いなかったら二度手間になるしなぁ。

「アレクシス様でしたら、もうお帰りになっていますよ」

「え?そうなの?」

「はい。私が王都へ帰ってくる時に、たまたまアレクシス様とお会いしました」

「そうなんだ」

……それなら午後から行ってみようかな。


午前中はゆっくり過ごし、昼食を終えてからリリエン商会へ向かった。

「フィン様、いらっしゃいませ。本日はどのようなご要件でしょう」

「魔導具のことでアレク叔父さんに会いに来たんだけど」

「それでは、商会長室へ」

店員に連れられ、商会長室へ向かう。

「アレクシス様。フィン様がお見えです」

「入ってくれ」


「新しい魔導具が出来たから持ってきたよ。はい、これが仕様書と魔導具」

「三つもあるのか?! えぇーっと……これが往復式の髭剃り型魔導具だな。なるほど……この保護板……?があるから、安全に使えると……。それでこっちが回転式だな。この丸い刃は一つではだめなのかい?」

「どうなんだろう?前世の髭剃りを思い出しながら、それをイメージして魔導具化したから」

「そうか。この細かさを一つに三つも付けるとなると……」

「やっぱり小物職人?」

「そうだな。人員の確保が先決になりそうだ」

俺ももうあんな細かいのは作りたくないし、得意な人に任せる方が、安全でもあるからな。

「それで、これが鼻毛を整える魔導具か。……なるほど。髭剃り型魔導具と構造は似ているんだね。とりあえず、この三つを試してみてもいいかい?」

「うん」

そういうとアレク叔父さんは、トイレへ向かった。

……。

窓から光が入って、ポカポカだな。清涼《ブリーズ》で部屋の温度もちょうど良くて……眠い。

……そういえば、なんで松葉杖をついてたんだろう?

……。

「フィン、この三ついいな!全く痛くなかったし、手入れが簡単なのもいい。外して、部分だけ交換も出来るんだったな。そうなると、定期的な売上にもなる」

「……。それなら良かった」

「……あの短い時間の間に寝ていたのかい?」

「……いや、ゆっくりしてただけ」

「そうかい?」

「うん」

「それで、この魔導具だけど――」

―――

「商品名をどうするか、だな」

「いつも通り、候補を出してもらって、そこから決めるよ」

「そうか。そうだなぁ……髭剃り型魔導具は……往復式と回転式で商品名も分けた方が良さそうだな。往復式だと……剃髭《シェイブ》、剃整《ソウ》、整髭《グルーム》なんてどうだろう?
回転式は……旋髭《ローテム》、輪刃《ローテ》、円刃《サークル》。
鼻毛を整える魔導具だと……鼻整《トリーム》、整鼻《トリム》、鼻刃《ノーズ》かな。どうだろう?」

「んー……じゃあ、音が似てたから整髭《グルーム》と旋髭《ローテム》と鼻整《トリーム》で」

「いいな!商品名が揃ってると、セットで売る際にも見栄えがいい」

適当に選んだけど、いい感じの商品名になったなら良かった。

「この三つは早くても……冬の社交あたりに販売開始を目指す感じだな。ウィルも気に入ってたみたいだから、王家に献上する際は、ウィルの分もお願い」

「分かった。……ん?殿下も試したのかい?」

「……一週間くらい、うちでゆっくりしてたんだよ。ガレスとマティアスも。その時に試したというか……。分かってる。王子に試させるな、でしょう?」

「……。そうだな。何事もなくてよかったよ」

あ。

避暑も終わったし、ウィルじゃなくてウィルフリード殿下って呼ぶべきだな。

「今日の要件はこれだけかな?」

「あ、ちょっと相談というか……食堂のような、酒場のような……店を出そうかなって考えてるんだよね」

「おぉ!いいじゃないか!それは前世の料理をってことだろう?」

「そう。ガレスとウィルフリード殿下が、店を出して欲しいって言ってて。俺も、ふらっと寄れるような店があればいいなって思ったんだよね」

「なるほど。そうなると、貴族街に近いところだな」

「ガレスが屋敷の近くに作ってくれって言ってた」

「レイグレン伯爵家か……あの辺は飲食ができる店は少なかったはずだから、客の奪い合いは起きなさそうだ。立地的にもいいな……。商会も割と近いし――」

……商人って切り替えが早いな。