侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜




……暑い。

扇涼《ヴェント》がなかったら地獄だ。

……こんな暑い中、人を乗せて歩いても大丈夫なのか、ちょっと心配になる。
前世だと、暑い時間帯の犬の散歩は注意するようにって話があったし。……あれはアスファルトだったのも関係してるとは思うけど。


……久しぶりに王都から出たな。

領地へ行ったのが……去年か。 それ以来、ずっと王都にいたな。
用事もないし。


「フィン、久しぶりの遠乗りなんだから、もっと楽しそうにしろよ!」

「……こんなに暑いのに?」

「この暑さがいいんだよ! 川に着いたらすぐ泳ごうぜ!」

「そうだね。汗を流すついでに泳ぎたい」

「一応、釣竿も持ってきたから、泳ぎ疲れたら、ゆっくり釣りもできる」

……釣りか。

……そういえば前世に、電動リール……だっけ?そんなのがあったよな?
電動リールか……。作れそうな気がする。

……あ、でも巻き取る時に、糸が絡まないようにしないといけないってことは……糸が絡まないようにするには、速度調整が必要になる。
そうなると……これも細かい作業になるな。

……一旦忘れよう。


休憩を挟みながら、ゆっくり向かい、昼前に到着した。

「着いたー!」

馬の負担を考えて、休憩を多めに取ったから、思っていたよりも時間がかかったけど、昼前に着けて良かった。
もう、すでにお腹すいてきてるし。

「早く行こうぜ!」

「そうだね」

「フィンは行かないのか?」

「……いや、行く」

俺も着替えを持ってきて正解だったな。

「っ! 冷たい! でも最高!」

……!

思ってたよりすごく冷たいっ!

……寒っ!


「変わらずここは綺麗だね」

「だな。流れが穏だから、子供の頃に連れられてたのだろうな」

「そういえば昔、別のところに行った時、ガレスが流されかけたよね。それを助けようとして、私たちまで流されかけて」

「あったな。そんなことも」

……あの時はちょっと、ヒヤッとしたの、今でも覚えてる。

「それ以降じゃないかな。ここに来るようになったのは」

大人になると理由が分かるな。


「こっちの方に魚が結構いるぞー!」

「あ、そっちは――!」

……ガレスが溺れた。

「ガレスっ!」

「っ! ……死ぬかと思ったー! あそこ、深くなってるの忘れてた」

「……ビックリさせないでよ」

「……はぁ。昔から変わらないな」

……水難事故は怖いからな。


「そろそろ昼食にしようか」

「そうだな。汗も流せたし、ちょうどいいだろう」

「だな!俺もお腹すいたし!」


木陰に移動すると、侍従たちが昼食を並べ始めた。

手軽に食べられるように、サンドイッチを作ってもらった。
野菜たっぷりのサンドイッチ、たまごサンド、カツサンド。あとはフルーツも。

「っ! 美味い!冷めても肉が柔らかいんだな!」

「このたまごサンドも美味しいよ。ふわふわの玉子がたっぷり入ってるのに、全然重さを感じないから、いっぱい食べられそうだ」

「野菜サンドも美味い。新鮮なのがすごくよく分かる」

あ。

この野菜、料理長が育ててるやつだろうな。
そりゃ、新鮮だ。

このシャキシャキ具合最高だな。このレタスで鍋もいいかも。
……明日が最終日か。
それなら、夕食に鍋……ありだな。

「フィン、どうかしたか?」

「……いや、休みは明日で終わりだろ?だから、明日の夕食、鍋なんてどうかなって思って」

「夏に鍋食べるのか?あれ、冬だけかと思った。フィンが冬に食べる鍋、最高って言ってたし」

「まぁ、冬に食べたくなるのは事実だけど。今は清涼《ブリーズ》があるから。少し低めの温度に設定すれば、最高だったよ」

「もうすでに夏の鍋を食べていたのか」

「うん。この前の夜会で着た礼服が、ちょっとサイズが合わなくて、少しの間だけダイエットしてたんだけど、その時に鍋を食べてたんだ。清涼《ブリーズ》付けて」

「へぇ。じゃあ、明日は鍋だな!」

「それなら、魚釣って帰るのもありだね」

……鶏鍋と魚を使った鍋……二つ用意してもらうのもいいな。

「じゃあ、食べ終わったら少し釣りでもするか」

「そうだね」


食べ終えて、少し休憩してから釣りを始めた。


「……」

「……」

「……」

いるのは分かってるのに、なかなか釣れないな。

……魚を使った鍋はむずかしそうだ。