侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜




「たまに違和感を感じていたんだが、やっと理由が分かった。 確かにこんな話は一部の人間にしか話せないだろうな」

「俺たちも最初から知ってた訳じゃないしな」

「そうなのか?」

「あぁ。 フィンが『俺は大人だ!』とかわけのわからないこと言い出して……。前世の記憶があるとかどうとか。その時いたのが俺とウィルだったんだ」

「……」

マティアスが呆れたような顔で、こっちを見てくるんだが。

「心が体に引っ張られてたんだから、しょうがないだろ」

「……フィンはフィンなのだと、改めて思っただけだ」

「なんだそれ」

解せない。

「まぁ、とりあえずそんな感じだ。 今後は前世の話も普通にすると思う」

「……適当すぎだろ」

「マティ、知っての通りフィンはこんな奴だ。だから今まで通りでいいって話だ!」

「……そうみたいだな」

「詳しい話というか、扱いについてなどはクローデン侯爵から聞くと思う。 その時にでもフィンから少し聞いたと、伝えた方がいいかもね」

「あぁ。分かった」


……あ。 この酒美味い。

「それにしても……まさかこんな近くに前世持ちがいるとは思わなかった」

「そうだよね。 そんな人たちが過去にいた事はあったけど、会ったことはないし、本でしか知れなかったからね」

「だよなぁ。 学園でも、ただただ凄い功績を残したってことを、軽く教えられるくらいだしな。」

「各々、本を残されてるけど、それぞれが専門的なことだから、学園では教えていないね。 絵本になってたりする話もあるけど」

「確かに。 絵本になってなかったら、俺はさっぱりだったかも」

「……フィンもいつか、絵本になるのだろうか?」

「いや、それはないだろ。 俺、功績なんて残せるほど、前世の知識なんてないし」

「今までフィンが作ってきた魔導具は、どれも画期的なものだと思うが? この夏の清涼《ブリーズ》や扇涼《ヴェント》はとくにな」

「……あ。でも、その前に世間に公表するのかどうかが、先だよな」

ガレスの言葉に、俺は少し考えた。

「俺は今まで通り自由に暮らせるならどっちでも……いや、このまま静かに暮らしたいな」

「……公表するなら、フィンが結婚する時じゃないかな? 魔導具師としてやっていくなら、フィンの事情を相手も把握しておくのが良いだろうし」

……まぁ、ウィルの言ってることも分かるけど。

「……それ以前に、俺は結婚願望はない。 ……もし、勧められたとしたら、俺と同じ時を生きた前世持ちが相手なら考える!って無理難題を押し付ける!」

「……フィンはフィンだな」

なぜかみんな、憐れむような目で見てきた。

「それは本当に無理難題だね。 今までの記録でも、同じ時代に前世持ちが存在していた記録はないから」

「でも、いたら面白いよな! フィンみたいに変な奴かもしれないし!」

……ガレスに言われたくない。

「だが記録上、前世持ちは男性ばかりだったはずだ。 そうなると、フィンの結婚回避理由は通らないだろうな」

……。

「確かに。 まぁ、私も結婚するのだから、フィンもついでにいい令嬢を探せばいいんだよ。お茶会と公開演習があるから、ちょうどいいじゃないか。 マティも参加するよね?」

「あぁ。どちらも、その予定だ」

「マティも参加するのか! 忙しそうだから、欠席かと思ってた」

ガレスが意外そうに声を上げた。

「……父が乗り気というか、早く相手を決めておけと言っていてな。 だが、私の前に兄上が相手を探すべきだと思うんだが……」

「……フィリップ兄さんと仲良いもんな、マティアスの兄さん」

「……まぁな」

二人が魔導師団で引きこもってるのは有名な話だ。
..... いや、魔導師団全体が、そんな気質の人たちの集まりだな。

「私たちより、ガレスが結婚相手を見つけるのが先だろう」

「両親からは別に急かされてないんだよなぁ。あの二人、仲がいいだろ? 子供の俺たちにも、そうであって欲しいみたいでさ。 余計難しいって話だよなぁ……」

……みんな大変そうだな。