侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜




「マティアス、いらっしゃい」

「……あぁ。 もう飲んでいるのか」

「マティも飲もうぜ!」

「夕食までもう少しみたいだから、それまでゆっくりしよう」

「……そうだな」

久しぶりに四人が揃った。

「マティ、この前会った時よりやつれてるなぁ。忙しかったのか?」

「あぁ。 元々、人手不足なんだが、避暑の期間で休みを取っている人が多いからな」

「憧れて入る人は多いけど、実際に働くと忙しすぎて辞める人が多いみたいだね」

「そうなのか。 それだと新人のマティは余計に大変そうだな」

「まぁな。だが、やりがいはある」

……相変わらず真面目なやつだ。

それからしばらくして、夕食の時間になったから俺たちは食堂へ移動した。


「お!今日はクリームシチューにステーキか! 最高だな!」

「……また貴重なわさびを」

「クリームシチューも食べたかったし、ステーキも食べたかったから、わさびで少しでもさっぱり食べられるようにしたんだ」

「……美味いな。ステーキをわさびで食べるのは初めてだが、気に入った。 クリームシチューも野菜がゴロゴロ入っていて美味い。 やはりローゼン家の食事はいいものだな」

……マティアスも漏れず食事目当てなのだろうか。

「マティ、ここには三日いるんだろう? フィンが作ったゲームがあるから、一緒にやろうぜ!」

「ゲーム? 魔導具ではなくて?」

「みんなが来るってなったから、何かあった方がいいと思って用意したんだ」

「結構面白いんだぜ!」

「そうなのか。 では、私もゲームをしてみたい」

「よし!じゃあ、食べたらやろぜ!」

そんな話をしながら食事を終え、俺たちは応接室へ向かった。


「これがリバーシか。 ルールは簡単そうだな。これならすぐに出来そうだ」

ガレスがルールを軽く教えただけで、マティアスはすぐに理解できたようだ。


――

……。


「……」

「……なるほど。 角か」

早くもマティアスは、ガレスが角を狙っていることに気づいた。

「……角を取れば、挟まれる心配がないのか」

「……?! 気づくの早すぎだろ!」

「そうか? ガレスの置き方を見ていたら、角を狙っているのは分かりやすかったぞ?」

……確かに。

「よくそれで、ウィルから一勝を取れたな。 飲んでたからか?」

ウィルが苦笑いした。

「油断したのは事実だね」

「勝ちは勝ちだ!」

その後も二人は盤面を見ながら、黙々と石を置いていく。

……。

……。

「……ここか」

「……そこだな」

気が付けば、盤面のほとんどが埋まっていた。

「……俺の勝ちだな!」

「……なるほど。そういうことか」

「何がだ?」

「いや、次は勝てそうな気がする」

ちなみに、ガレスも負けず嫌いだが、マティアスも負けず嫌いだ。

「もう一戦やろう」

「おぅ! 何度でも相手してやる!」


それから、何度も対局を繰り返した。

「……また負けた。 マティアス、強すぎるだろ!」

「いや、最初の一戦でコツが分かったからな。 少し休憩するか?」

「そうだな。酒飲もうぜ……」

悔しかったのか、ガレスは最初の一杯を一気に飲み干した。

……

……あ。

「そういえば、マティアス。あの話、宰相から聞いたんだろ? まぁ、そういうことだから」

「何の話だ?」

「え、俺の前世の話だよ」

「……前世? 父からは何も聞いていないが……」

「「「え?」」」

「だから、フィンについて何も聞いていないぞ?」

「ウィル、宰相がマティアスに話したんじゃなかったのか?」

「いや、そろそろ話してるはずなんだけど……」

「……忙しかったんじゃね?」

……。

「それで、何の話だ? 父も関係あるんだろう?」

「……え、これ言っていいのかな? 宰相から聞いた方がいい?」

「もう言っていいんじゃね? 近いうちに知ることになるなら、フィンから直接聞きたいだろ」

「そうだね……」

俺は別にどっちでいいし、話すなら今後は誤魔化さなくて済むから、その方が楽だ。

「……ずっと隠してた事があるんだけど、俺、前世の記憶があるんだ。5歳頃から」

「……え? 二人が驚かないということは、知っていたんだな」

「あぁ。俺が口を滑らせたというか……」

「なぜ私には教えてくれなかったのだ? ……いや、言えないのもわかるが」

「子供だったから、危険に巻き込まれることを懸念して、公表しないことになったんだよ」

「まぁ、そうだろうな……。 それにしても、フィンが……そうか」


よし。これで気が楽になった!