侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜



髭剃り型魔導具の試用を終え、俺たちは食堂へ移動した


「これは何だ? 玉子……だよな?」

「ポーチドエッグだよ。 昔作ったことがあるんだけど、こんなに綺麗に出来たことなかったな。」

「前世の話かい?」

「ポーチドエッグは前世の記憶だけど、作ったのは数年前だな」

「え……フィン、料理出来るのか?!」

「……出来ない。 これ、沸騰したお湯に卵を割って入れるんだけど、俺も試してみたくて……」

「もしかして、作ってる途中で形が崩れたのかい?」

「……」

……普通に卵を割ることすら出来なかったなんて、言いたくないな。

「……まぁ、そんな感じ」

「へぇ。器用なフィンでも、このポーチドエッグ……?を作るのは難しいんだな」

「……」

「おぉ! トロトロだ!」

「とても美味しいね。 パンによく合う! 」

「このスープも美味いな!」

「ずっと研究してるんだけど、何か足りない感じなんだよなぁ……」

「再現って簡単ではないんだね。 フィンがいつも簡単そうに魔導具を作るから、料理もすぐに再現出来てるのだと思ってたよ」

「料理に関しては、何となくしか覚えてないから、料理長に色々試してもらって出来上がるって感じなんだ」

それに前世では、スープは固形や粉末の素とかあったから、それをどう料理長に伝えたらいいのかも難しいし……。
そもそも、その元が、何を材料にしてるかなんて曖昧だし……。俺、前世の知識活かせてなさすぎじゃないか……?
……いや、こんなもんだろ。

「そう考えると、料理長は相当苦労してるんだな」

……確かに。

「でも、ローゼン侯爵家の料理長ってすごく料理好きというか、楽しんでるよね? 料理人の間では有名みたいだよ」

「そうなのか? ていうか、なんでウィルはそんな話を知ってるんだ?」

「俺もそんな話、聞いた事ない」

「え、フィンも知らない話なのか?」

「私はこれでも第二王子だよ? どんな情報でも入ってくるさ」

……なんだかんだウィルは行動力があるから、忙しくしてる中でも色々情報収集しているみたいだな。
怖いやつだ。

「じゃあ、最近の面白かった情報聞きたい!」

「……そうだなぁ、面白いかは分からないけど……今度、騎士団と魔導師団の演習があるんだけど、公開演習になるみたいだよ」

「え、そうなのか? めずらしいな! 俺たちも見に行ってもいいってことだよな? 楽しそう!」

「うん。 秋の終わり頃に予定してるみたいだよ」

「へぇ。 でも、なんで公開演習になったんだ? 今までそんなこと、ほとんどなかっただろう?」

「魔導師団の団長が変わられるそうで、その方の考えでは、もっと騎士団と連携すべきって思ってるみたいだね。その上で、他の人達にも両団の結束が固く、今の平和が続くよう尽力するっていう宣言みたいな感じかな」

「なるほど」

「まあ、それは建前なんだけどね」

「「え?」」

「騎士団員と魔導師団員の、出会いの場を設ける目的があるんだよ」

「え? 出会いの場? なんで?」

「兄上の婚約が決まった今、今度は周りの令息たちの番だけど、お茶会とか開くより、効率がいいんじゃないかって、兄上付きの騎士が言ったみたい」

「あぁ、あの人か。 確かに言いそう」

「あの人はお茶会とか苦手だから、そう提案したんだろ? 王太子殿下が、よく許可したな」

「それこそ、魔導師団の団長をお披露目出来る機会でもあるからね。兄上も、その騎士も効率主義なところがあるから」

「……ということは……」

「どうした、フィン?」

「……公開演習があるってことは、ティアナが行きたがり、それについて行けと、母さんに言われる未来が見える……。 その時は避暑に出かけようかな……」

「秋の終わりに避暑は変だぞ」

「……」

「私も出席予定になっているから、二人も来るべきだと思うよ」

「え?ウィルも行くの? その前に大規模なお茶会があるよな? そこで婚約者候補を決めるんじゃなかったのか?」

「あぁ、私の場合は出席だけど、参加ではないよ。 もちろん、二人は参加してくれてかまわないからね」

「……俺は、多分当日、ティアナの護衛で忙しくなるから!」

「いや、俺も見学に真剣だから、それどころじゃないと思う!」

「二人とも令嬢たちから人気があるのに、残念だね」

「いや、ウィルに言われても……」

「だよなぁ」



そんな話をしながら、俺たちはゆっくりと朝食を終えた。