侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜




夕食の時間になり、食堂へ向かった。

「あれ? なんかウィルやつれてない?」

先に食堂へ来ていたウィルが、心なしかぐったりしているような……。

「……昼、読書を終えてガレスのところへ行ったんだけど……今まで休憩なしで、リバーシの相手をさせられていたんだ」

「だって、マティが明日の夕方には来るんだぞ。それまで、リバーシの特訓に力を入れるべきだろ?」

……どんな脳筋だよ。

「だとしても、休憩は必要でしょ。 避暑に来たはずのウィルが干からびかけてるよ」

「……確かに」

「いや、そこまでではないよ……」

そう言いながら、ウィルは苦笑している。

その間にも、使用人たちが次々と料理を運んできた。

「本日はフィン様ご希望の生姜焼きでございます。料理長から、良い豚肉が手に入ったので、そちらを使わせていただいたとのことです」

「お、それは楽しみだな」

「なんの肉だろうね」

「レッドボアあたりか?」

「肉と脂身のバランス的に、グレートボアじゃないか? それに、レッドボアの生姜焼きは食べたことあるから、わざわざ『いい肉が手に入った』なんて言わないと思うし」

使用人が料理を運び終え、下がった。

ナイフで生姜焼きを一口サイズにカットした。
柔らかく、切れ味もいい。
口に運ぶと、肉の旨みと脂の甘みが、生姜とよく合っている。

「っ!うまっ!」

「……美味しい」

「米が進むな!」

「そうだね。 生姜焼き……だっけ? これ、王城の食堂にあったら最高なんだけどなぁ」

「あぁ、確かに。騎士にも文官にも人気が出そうだな。 結構簡単だからレシピを渡そうか? ちゃんと料理長に書いてもらうし」

「……そうなると、フィンの発案ってことになるから、勝手に王城へ持ち込むわけにもいかないか。ちょっと相談しておくよ」

「分かった」

生姜焼きって、前世では家庭料理だったからか、そんな大事にするのは不思議というか、なんというか……。

「もし、今回の相談が上手くいけば、他のレシピも王城の食堂で……」

「あぁ。俺は別にかまわないよ。 そうなれば、父さんや兄さんたちも食堂で食べられるようになるわけだしね」

「俺は、唐揚げがあれば嬉しいな!」

「……ガレスは王城の食堂で食べないでしょ」

「いや、たまに登城する時があるんだけど、その時に食堂に寄ったりしてるぞ」

「え、それっていいの?」

「マティが一緒だからな」

「文官をしてるマティと一緒なら、問題にはならないけど、あまりいいことでもないね」

「俺、食堂の料理長とか仲良くなったから、大丈夫だろ」

「……そういう問題?」

俺とウィルは苦笑いをした。

「実は、前にこの話を父上にしたことがあるんだ。王城でも食べられるようにならないかって。でも、その時は発案者のフィンがまだ未成年だったから」

「そうなのか? 別に良かったのに。 それこそ、父さんにでも言えば、嬉々として協力してくれたと思うけど」

カツサンドで喜ぶくらいだからな。

「王城の食堂もいいけど、フィンが店を開けばいいんじゃないか?」

「いや、俺、魔導具師なんだけど……」

「いい案かもしれないよ! フィンが店を出して、王城の食堂にレシピの許可を出してくれたら、スムーズに話が通ると思うし」

「それに、リリエン商会に伝手があるんだから、上手くいくんじゃないか? フィンはレシピを渡して、試食するだけでいいんだから」

「えぇ――……」

「そうなったら、俺の屋敷の近くに店を出してくれ! 毎日通うから!」

……自分の欲に忠実だな。


その後も三人で話をしながら食事を続け、食べ終えた。

「なぁ、食後に少し飲まないか?」

「いいね」

「俺もいいよ」

食事を終えた俺たちは、そのまま応接室へ移動した。

使用人に酒とつまみを用意してもらい、三人でソファに腰を下ろす。
ついでに、作業部屋にある髭剃りの魔導具も取ってきてもらった。

「二人に見てもらいたいものがあるんだった」

「ん? なんだ?」

「これ」

そう言って、テーブルの上に完成した髭剃りを置いた。

「……なんだこれ?」

「あ、作っていた髭剃りの魔導具かい?」

「そう。」

「もう出来たのか?! さすがだな!」

「明日の朝、二人に使ってみてもらおうと思ってるんだけど」

「おぉ! 使ってみたい!」

「私も興味がある」

「とりあえず一つ作ったんだけど……朝、髭剃らずに俺の部屋に集合でいい? 使用感とか聞きながら試して欲しいから」

「あぁ。フィンの部屋へ行くよ」

「俺たちが行く時には、ちゃんと起きてろよ」

「……分かってる」

「私たちが起こすことになりそうだね」

……こんな時、ノアがいれば。
休暇中だから仕方ない。

起きられるとは思うが、一応使用人に起こしてもらえるように、あとで頼んでおこう。


このあとも、三人で酒を飲みながら、楽しく過ごした。