「いらっしゃいませ、フィン様」
「こんにちは」
「本日はどのようなご要件でしょうか?」
「柔軟樹脂を一袋と、刃鋼を一枚。あと、魔導回路描写ペンの一番細いペン先を五つ、お願いします」
「かしこまりました。お持ちいたしますので、そちらに掛けてお待ちください」
俺は近くのソファーに座った。
清涼《ブリーズ》と扇涼《ヴェント》を置いてあるスペース、相変わらず人が多いな。
まだ予約販売が続いているのか?
もう落ち着いたと思ってたんだけど……。
まぁ、王侯貴族から順にって、アレク叔父さんが最初に言ってたし。
ふともう一箇所、人が集まっているところに目がいった。
あ。
艶髪《グロウ》と華髪《ブルーム》。
あれは……お試し出来るように設置しているのか。
ということは、あの二つも予約を開始したのかな。
さすがアレク叔父さん。行動が早いというか。
「フィン様、お待たせいたしました」
「ありがとう」
支払いを済ませ、屋敷へ戻った。
さて、続きを再開するか。
刃鋼を小さくカットして、魔力を纏わせ、薄く加工していく。
……これでどうだろう。
……。
全然分厚いな。
最低でも、今の三分の一ほどの厚さに刃先をするべきだな。
薄く伸ばしていった刃鋼を、さらに細かくカットして、また魔力を纏わせ加工していく。
……よし、これくらいでいいだろう。
次は、刃先をより薄くし、鋭利になるように加工だな。
刃先にだけ魔力を纏わせ、より薄く、より鋭くしていく。
……ん?
研いでいくイメージで加工していたが、魔力を纏わせてないところとの段差が出来てしまった。
これだと、使用中に折れてしまいそうだな。
そうなると、刃先だけじゃなくて、全体に魔力を纏わせたまま加工した方が、刃先に向かって滑らかに鋭くできるか……。
最初から、そうすべきだったな……。
気を取り直して、今度は全体に魔力を纏わせて加工していく。
……よし。いい感じだ。
とは言え、切れ味を試したいな。
……腕の毛でいいか。
腕に対して、斜めに刃を持ち、ゆっくり滑らせていく。
……痛っ!
……。
……切れ味は大丈夫そうだ。
小さな切り傷ができた腕を押さえながら、同じように四枚の刃を作った。
次は、風属性と水属性を組み込んでいくか。
ヘッド部分に風属性を組み込み、魔力の流れを丁寧に調整していく。 次に、刃が肌に直接触れないように作った薄い保護板に、水属性を組み込んでいく。
属性同士が接触することもないから、この作業はいつもより楽に感じるな。
……よし。あとは起動と停止だな。
無属性を丁寧に組み込んで、調整しながら仕上げていく。
あ。
肝心のスイッチ部分を忘れてた……。
……とりあえず先に無属性の組み込みを終えよう。
魔力を流し、確認する。 よし。大丈夫そうだな。
スイッチ部分は持ち手同様、薄型鉄板でいいか。
小さくカットし、魔力を纏わせて、指で押しやすい形に形成した。
次に、スイッチ部分に無属性魔法を組み込んだ。
……持ち手部分につける方がいいよな?
そうなると、スイッチからヘッド部分へ魔力を送るための魔導回路も必要か。
持ち手部分に魔導回路を描きこんでいく。
まっすぐ描けばいいだけだから、すぐに終わった。
スイッチ部分を持ち手部分に取り付け、魔力の流れを確認する。
問題なさそうだな。
とりあえずヘッド部分を取り付けて、左右に振動するか、確認も必要だな。
小型の魔核をスイッチの上部にセットして、起動――
……。
……ヘッド部分は左右に振動した。
振動したが! 緩く揺れてるような……電池が切れかけてるみたいな……。
持ち手部分の魔導回路は描き直しだな。
魔導回路修正ペンで回路を修正し、今度は一段太いペン先に変えて描き直した。
……よし、今度はちゃんと振動してるな。
あとは、刃を取り付ければ……
……完成だ。
とりあえず……また腕の毛で試すか。
スイッチを押し、起動させる。
前世の髭剃りより、静かだな。
肌も傷つかない。
……試作にしては良いものが出来たんじゃないかな。
ん――……今この屋敷で髭が生えてるのは……料理長くらいか。
魔導時計を見る。
……この時間だと、ちょうど夕食を作ってるところだな。
そうなると……明日の朝、ウィルとガレスに試してもらう方がいいか。
