侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜



久しぶりに友人と遊んだからか、昨日は早く眠りについた。
朝食まではまだ時間がある。せっかくだし、作業部屋へ向かうことにした。

色々と作りたいものが浮かんできた。
さて、何から作るか……。

……やっぱり髭剃りかな。

夜会でも思ったけど、小さな切り傷が出来ている人がチラホラいた。
あれ、地味に痛いんだよな。
それに丁度、ウィルやガレスもいるし、二日後にはマティアスも来る。
髭剃りが楽になれば、朝も少しゆっくり出来るだろう。

前世で髭剃りと言っても、種類が多かったな。
肌質や髭の濃さ、生え方とかによって合うものが人それぞれだった。
今の俺は髭自体は薄い方だし、髭の色も色素が薄めだから、そこまでこだわる必要もない。

……とはいえ、せっかく作るなら、使いやすくて肌を傷つけにくいものがいいな。

そうなると……刃の安全対策はもちろんだが、ヘッド部分の可動域も出来るだけ広くした方がいいかもな。

前世で新しいものを買う時も、可動域は結構重視していたし。

とりあえず、使い慣れていた往復式を参考にしてみるか。
往復式なら構造も比較的分かりやすい。
刃を左右に動かして髭を剃る仕組みなら、魔導具として再現するのも難しくないだろう。

風属性を組み込めば、振動部分はいける気がする。……いや、安全性を考えれば、水属性をクッション代わりに組み込むのもありだな。

起動と停止は無属性を組み込めばいい。
あとは……一番大事な刃だな。

枚数が多い方が安全だった気がする。
そうなると……五枚くらいある方がいいか。

……いや、五枚も必要か?
刃が多すぎると、魔導回路も複雑になるし……。

でも刃が多ければ、一枚当たりにかかる圧力を減らせる。
そうすれば、肌への負担も減らせるはずだ。
肌が弱い人にも使いやすいものになると思うんだが……。

……あ。刃の角度も重要だよな。

ということは、刃を固定する部分の素材は……薄型鉄板だと微妙か?

でも、ヘッド部分を振動させるとなると、薄型鉄板の方が使いやすいと思うんだよな。……それに作成費も抑えられるし。

でも、振動させ続けるなら耐久性も考えないとな。

魔導鋼板なら、丈夫だし魔力も通しやすい。振動にも耐えられるだろう。……ただ、高い。髭剃りごときには使えないな。

そうなると……薄鋼板か。魔導鋼板より強度は落ちるけど、ヘッド部分を定期的に交換する前提にすれば、問題はないだろう。

あ。刃の種類も変えることが出来るな。

……いや、そこまで考えるのは面倒だな。

そのあたりは仕様書にでも書いて、アレク叔父さんに任せた方がいい!

うん!


コンコン――

「フィン様。朝食のお時間です」

「……あぁ、分かった。今行く」

……もうそんな時間だったのか。

テーブルに散らばったメモを集め、軽く整理してから食堂へ向かった。


食堂へ入ると、すでに朝食が用意されていた。

「おはよう、フィン。」

「お! フィン、寝坊か?」

「おはよう。ウィル、ガレス。 寝坊じゃないよ。作業部屋で魔導具の構想を練っていたんだ」

「朝からすごいな!」

「どんな魔導具を作るのか聞いても?」

「あぁ。髭剃りの魔導具を作ろうと思ってる」

「髭剃り? 俺、侍従に任せてるけど」

「私もだ。髭剃りを魔導具にするという発想は、前世のものからかい?」

「あぁ。 試作品が出来たら、二人も試してみてくれ。滞在中には作れるんじゃないかと思ってるんだ」

「おぉ!楽しみだ!」

「そうだね」



「それにしても、今日も美味そうだな!」

ガレスがさっそく嬉しそうに、料理に手を伸ばした。

「昨日あれだけ食べたのに、もう食べられるんだ」

「美味い飯はいくらでも食えるからな!」

「それは胃が丈夫なだけじゃない?」

ウィルが苦笑する。

「朝は昨日より少し軽めにしてあるよ。焼きたてのパンもあるし」

「朝から最高だ!」

ガレスの目が輝いた。

「あ、これだし巻き玉子だ。久しぶりに食べるけど、やっぱり美味しいね。王宮では出ないから、今日食べられて良かったよ」

「俺、屋敷で作ってもらったことがあるんだけど、こんなにふわふわでジューシーにはならなかったんだよな」

「焼き方の違いかもな。うちの料理人は、だしを多めに入れて焼いてるんだ」

「なるほど……」

ガレスがだし巻き玉子をじっくり眺める。

「……やっぱりフィンのところの料理は美味いな!」

「そうだね。来るたびに何かしら新しい料理もあるし」

「これも美味しいな」

「それ、夏野菜のスープだよ」

「へぇ……朝からこういうものが食べられるのもいいな」

「朝食だから、あまり重くならないようにしてるんだ」

「なるほどなぁ」

ガレスは納得したように頷く。


「俺、今日は作業部屋にこもろうと思ってるんだけど、二人はどうする?」

「私は午前中、持ってきている本を読もうかと思ってる」

「じゃあ俺は二度寝しようかな。こんな贅沢な時間の使い方、最近できてなかったし」

「そうだね。たまにはゆっくりするのもいいと思うよ」

「だろ?」

ガレスは満足そうに頷くと、食後のアイスを手に取った。

「……それ、二度寝する前に食べるんだ」

「別腹だからな! フィンが昔、教えてくれただろう?」

……そんなこともあったか。