侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜




「そういえばさぁ、夜会の帰りにマティに会ったんだけど、あいつすげぇやつれててさ。ちょっと心配になったんだよなぁ」

「あぁ……今は宰相の下で文官として頑張っているみたいだよ。クローデン侯爵のコネだと思われたくないみたい」

「……え? 財務の方に行ったのかと思ってた」

「そのつもりみたいだったんだけど、マティの兄上が魔法師団にいるだろう? だから、クローデン侯爵的にはいずれマティには、宰相補佐になって欲しいみたいだね」

……宰相補佐か。

確かに、マティアスなら向いている気がする。 真面目だし、細かいところにもよく気がつく。

……まぁ、俺にはちょっと細かすぎるけど。

「それで、あんなにやつれてたのか?」

「本人は大丈夫だと言っていたけどね」

「大丈夫には見えなかったけどなぁ。避暑の期間も二、三日しか休めないかもって言ってたし」

……あいつ、昔から真面目すぎるんだよな。
ばぁちゃんみたいにマナーにもうるさいし。

「俺とウィルは、フィンの屋敷でゆっくりするって話したら羨ましがってたけど、結局マティを誘わなかったんだな」

「……三人で決めたことだったから」

「フィン。今の間は、絶対忘れてただけだろう?」

……まぁ、確かに忘れてたというか。

「フィンがいいなら、マティも呼ぶのはどうだろう? そろそろマティも、フィンの前世のことについてクローデン侯爵から聞いてるはずだよ」

あぁ……今後、宰相補佐になるなら聞いてるだろうな。

「じゃあ、これからはマティに誤魔化すこともしなくていいんだな!」

「あぁ。フィンが今まで口を滑らせなかったのが奇跡だよね」

「それ思う!」

「でも、二人に知られるまでは五年くらい、家族と陛下、それに宰相くらいしか言ってなかったんだけど。だから、俺は口が堅いんだよ」

「……口が堅いとかじゃなくて、抜けてると言うか」

……え?

「そうそう! フィンってしっかりしてそうに見えるけど、そうでもないしな」

えぇ――……

「本当に前世では大人だったのかも怪しいよな」

「そうだね」

「……一応、二十六歳くらいまでの記憶はあるんだけど」

「えっ?! そうなのか?!」

「二十六歳……。そんなに大人だったのか……そうは見えないな」

「俺もそう思う!」

「二人とも、ひどくない? まぁ、心が体の年齢に引っ張られてた感じはあったんだけど」

「それなら納得だな!」

……そういえば、他のみんなにも何歳までの記憶があるって、ちゃんと言ってないような気もする。
まぁ俺自身、何歳まで生きてたのか、はっきり分かってないけど。

「……とりあえずマティアスを呼ぶとして。ウィル、手紙を書いてくれ」

「いや、そこはフィンが書くべきだよ。フィンが招待するんだから」

「俺は手紙とか苦手なんだよ」

「分かる! 俺も手紙苦手。要件だけでいいのに、毎回前置きが長々と……」

「それに、俺からの手紙より、ウィルからの方が早く届くだろ?」

「……しょうがない。私が書くよ」

使用人にレターセットを持ってきてもらい、ウィルに手紙を書いてもらった。

「これ、ウィルからだから、早めに届けて」

「かしこまりました」

……よし。完璧だ。

「そろそろ、リバーシを再開しようぜ! 俺、まだ一勝もしてないし。それに、マティが来るならそれまでに少しでも強くなっておきたい」

「そうだね。今のうちにコツを掴んでおけば、マティがリバーシを覚えるまでは勝ち続けられるだろうね」

「……いや、マティアスならすぐにルールを覚えて、なおかつ角を取りに来そう」

「まぁ……確かに。とりあえず出来るだけやり込んでおくべきだね」

「そうだな! 今度こそ俺が勝つ!」

「ガレスには負けないよ」

「望むところだ!」

……二人とも、すっかりリバーシに夢中だな。

それから何度もリバーシを繰り返しているうちに、気づけば夕食の時間になっていた。

「そろそろ食堂へ行こうか」

「あぁ」

「もうそんな時間か!」

俺たちはリバーシを片付け、食堂へ向かった。