侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜



「よし! 次こそ俺が勝つ!」

アイスを食べ終え、食後のお茶もそこそこに、俺たちは再び応接室に戻ってきた。

「これ、前世のゲームを再現したんだよね?と言うことは、フィンはやり込んでるよね?」

「まぁ……リバーシは子供でも出来る簡単なゲームだったから、みんな小さい頃からやってるゲームだったと思う」

「なら、必勝法とかもあるんじゃないか?」

「あぁ――……」

……角を取ることくらいしか知らないな。

「まぁ、実際にやってみた方が早いか」

「おっ、フィンもやるのか?」

「うん。見てもらった方がいいと思って」

俺は二人の向かいに座り、盤面を整えた。

「じゃあ、俺が先にやってみるよ」

「よし!俺が相手だ!」

ガレスが意気込んで向かいに座る。

「……フィン、手加減は?」

「必要?」

「いらねぇ!」

「じゃあ始めよう」

ゲームを進めていくうちに――

「……そこを取るのか?」

「うん」

「あ……こっちもひっくり返された!」

「なるほど。こうやって相手の動ける場所を減らしていくのか」

ウィルが横から盤面を覗き込む。

「だから角を……。そういうことか」

「え、俺まだ分かってないんだけど! ……角を取る方がいいのか?」

「そうみたいだね」

「あ! 角、全部取られた! もっと早く教えてくれよ!」

「……聞かれなかったから」

「そういう問題かよ!」

ウィルが苦笑する。

「では、次は私がフィンとやってみようかな」

「お、いいな! ウィルもやってみろよ! あっ、やられた!」

ガレスとの勝負は、俺の圧勝で終わった。

「じゃあ、次はウィルと俺だな」

「あぁ。手加減はいらないよ」

「分かってる」

盤面を挟んで向かい合う。

「では、始めよう」

「うん」

ウィルは一手置くたびに盤面をじっと見つめる。
先ほどまでとは違い、かなり慎重に盤面を見ている。
……さっきの俺の手を参考にしているのか。

「……ここだ」

ウィルが駒を置く。

「なるほど」

俺も駒を置く。

「……やっぱり、フィンは強いね」

「そう?」

「さっきガレスと対戦していた時より、明らかに考えさせられているよ」

「ウィルがちゃんと考えてるからだろ」

「それでも、簡単には勝てそうにないな」

ウィルが思っていた以上に善戦している。
……ちゃんと俺の手を覚えてるのか。
さすがに、一回目から負けるわけにいかないし、とりあえず角は取っておきたいな。

「……」

「あ、角……。 狙っていたのに、難しいな」

……よし。
これなら大丈夫そうだな。

「……負けたか」

「初めてにしては、かなり強かったよ」

「そう? なら、もう一度やろう」

「え?」

「次は勝てる気がする」

「おい、俺ももう一回だ!」

「では、私とやろうか」

「望むところだ!」

二人は盤面を挟んで向かい合った。

「そこだ!」

「……そう来ると思ったよ」

「なっ……!」

ウィルは冷静に駒を置き、ガレスの駒を次々とひっくり返していく。

「くそっ! またかよ!」

「ガレスは少し勢いがありすぎるんじゃないかな」

「うるせぇ!」

この勝負はウィルの勝ちで終えた。

「さすがに少し疲れたな」

「頭を使うからな」

「俺はまだいけるぞ!」

「ガレス、少しは休もう」

「……仕方ねぇな」

お茶を用意してもらい、三人で一息つく。

「それにしても、リバーシって面白いな!」

「そうだね。最初は簡単なゲームだと思っていたけど、考え始めると意外と難しい」

「俺もまだよく分かってねぇけどな!」

「ガレスはもう少し考えてから置いた方がいいと思うよ」

「分かってるって!」

……二人とも、すっかりリバーシに夢中だな。
こうして何も考えずに三人で遊ぶのも、久しぶりだ。


「そういえば、昔もフィンから色々な話を聞いたよな」

「そうだな。前世の話だけじゃなくて、向こうの世界のことも色々聞いた」

「……そんなに話してたっけ?」

「かなり話していたと思うよ」

「俺たち、フィンが話すことなら何でも面白がって聞いてたからな」

「そうそう。知らないものばっかりだったし」

……そうだったか。
前世の記憶を思い出したばかりの頃は、向こうの世界のことを誰かに話せるなんて思ってもいなかった。

魔導具作りに興味を持って作り始めたのをきっかけに、じぃちゃんに怪しまれてバレてからは、家族くらいしかこのことを知らなかったしな。

……まぁ、商売の関係でアレク叔父さんも巻き込み、陛下へ報告することになったけど。

それでも、ウィルとガレスには話してもいいと思ったんだよな。

二人なら、きっと変に思わない。……いや、変に思ったとしても、気にせず聞いてくれると思ったんだ。

……やっぱり、話してよかったんだろうな。