侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜



「……はぁ。 まさかこんなに早く兄上の婚約が決まるとは思っていなかった。
一ヶ月後には、私の婚約者候補も決まると思うと……少し気が重いな」

「まぁ……お茶会には俺たちも参加するから!」

「どうせ二人は、食事目当てだろう? なるべく私の近くにいて欲しいのだが。一人で対応するのは難しい」

「……まぁ、近くにはいるよ。食事を楽しみながらな!」

……いや、俺は端の方の隅っこがいい。
できることなら、誰にも話しかけられることなく料理だけ食べて帰りたい。

「……俺は端の方で見守ることにするよ」

「……それでは私一人で対応するのと変わらないのだが。私の次は二人の番なのだから、むしろ積極的には参加すべきだと思うよ。素敵な令嬢から相手が決まっていくのだから」

「あぁ……俺はもっと自由でいたい」

「ガレスは次期伯爵なのだから、それこそ早めに婚約者を決めた方がいいんじゃないかい?」

……そうなると、お茶会の時は、二人から離れていた方が良さそうだな。

「フィンも魔導具師として成功しているのだから、令嬢達から声を掛けられると思うよ」

「……いや、だとしても俺は三男だし」

「フィンの場合、少し特殊だから婚約者選びは難航するんじゃないか?」

「……確かに。多少、父上の介入があるかもしれないね」

……え。

何で俺の婚約者選びに、わざわざ陛下が介入するんだ?

「……フィンは時々、抜けているよね」

「まさか自覚がないのか?」

「……え?」

「魔導具師として優秀なのはもちろんだけど、それ以上に、前世の記憶の事があるからだよ。それを利用しようと動く者が出てくることを懸念しているんだ」

「あぁ……それは大丈夫だと思う。俺は自分の快適な生活のために魔導具を作ってるだけだから」

「……余計に心配になってきた。フィンが変な女に引っ掛からないように、俺たちがしっかりしないと!」

「そうだね」

……この歳になって保護者が増えた。



その後もしばらく三人で話していたが、やがて夜会も終わりの時間が近づいてきた。

「じゃあ、次はフィンの屋敷で会おう」

「だな!」

「……あぁ。待ってるよ」


俺たちはそこで別れ、それぞれ家族のもとへ戻ることにした。

「フィン、ここにいたのね」

「母さん」

家族のところへ戻ると、みんな帰る準備をしているところだった。

「夜会は楽しめた?」

「まぁ、それなりに」

「それなり、ねぇ……」

母さんが少し呆れたように笑う。

「あ、避暑の期間にウィルフリード殿下とガレスが、うちに泊まりに来ることになった」

「まぁ、そうなの? ……私達はみんな避暑へ向かうけれど、フィン一人で大丈夫かしら?」

「大丈夫。あの二人の目的は料理だから」

「……フィン兄様、それは楽天的すぎよ」

……え?

「……そういうことなら、料理長には私からも伝えておくわね」

「うん、お願い」

「……本当に料理だけが目的ならいいのだけれど」

「二人とも学園を卒業してから忙しかったみたいで、ゆっくりしたいんだって」

……二人とも、何をそんなに心配しているんだ?


「そう……」

母さんとティアナが顔を見合わせる。

……なんだ?

「何か問題でもある?」

「いいえ。何もないわ」

……絶対に何かあるだろ。

「フィン、屋敷でお二人をもてなすのなら、しっかりやりなさい」

「分かってるよ」

ばぁちゃんまで……

「ほら、もう帰るわよ。馬車の準備もできているでしょうから」

「うん」

こうして俺たちは、王城を後にした。



それから数日、二人のためにリバーシやトランプを作ったり、前世で好きだった料理を料理長と再現したり……慌ただしくも充実した日々を送っていた。


そして――

「フィン様、お客様がお見えになりました」

「分かった。今行く」

玄関へ向かうと、そこにはガレスとウィルフリード殿下の姿があった。

「よう、フィン!今日から世話になるぞ!」

「数日ぶりだな、フィン。今日からしばらく世話になるよ」

「あぁ。二人とも、ゆっくりしていってくれ」

「それで、料理は?」

「……ガレス、まずそれか?」

「だって楽しみにしてたんだからな!」

「私も少し楽しみにしているよ」

「ウィルまで……」

……本当に、この二人は料理が目当てなんだな。