侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜



夕食を終えた俺たちは、そのままティアナの部屋へ向かった。
カールアイロン型魔導具は作業部屋に置いたままだったので、ノアに持ってきてもらうことにした。

「これが巻き髪用なのね。艶髪《グロウ》とは少し違うのね」

「あぁ。この筒状になっている部分に、髪を巻き付けて、挟む部分で固定する。三秒から五秒くらいでいいはずだ」

「……もしかしてフィン兄様、毛先を自分で?」

「……あぁ」

「だから、何だか変だったのね」

「……自分で髪を巻くのが難しかったんだ」

火傷には十分気を付けるよう侍女に伝えて、ティアナの髪で試してもらう。
最初は少し、使い方に手間取っていたが、コツを掴んだのか、すぐに綺麗に巻けるようになった。
さすが、侯爵家の侍女。優秀だな。


「……わぁ! とっても素敵!
元のウェーブを活かしてくれたのね。ふわふわなのに艶も出て、華やかになったわ!」

「太さが違うもので巻いたら、また少し印象が変わりそうですね」

「そうね。これから色んなヘアアレンジを試したいわ!」

「もっと上手く巻けるように練習いたしますね」

.... 三種類作って正解だったな。

「ねぇ、フィン兄様も試しましょう」

「……え?」

「私は一番太めのものを使って巻いたけれど、細い方で巻いた感じも見てみたいわ」

「えぇ――……」

……まぁ、魔導具師としては、魔導具の使い勝手を、ちゃんと自分でも確かめるべきか。

「……じゃあ、お願いするよ」

「お任せ下さい!」

侍女が張り切って俺の髪を巻き始めた。
..... 嫌な予感がする。


「……」

「フィン兄様! 子犬みたい! とってもお似合いよ!」

すごくいい笑顔でティアナに言われた。
侍女は満足そうに頷いている。

……信用できないな。


……。

前世にいたトイプードルのようだ……。
そういえば、今世では見かけないな。

「この魔導具も売り出すのよね?いつ頃からになるの?」

「艶髪《グロウ》が、夏の終わり頃になるって言ってたから……それ以降じゃない?アレク叔父さんが、学園で流行らせて、デビュタントで令嬢たちに使ってもらいたいみたいなことを言ってたから」

「そうよね……」

「どうかした?」

「明日、セレスティア様とアリシア様とお茶会なの。絶対、髪のことを聞かれると思う。王家主催の夜会には二人も出席するって聞いてるわ。だから、二人にも艶髪《グロウ》や巻き髪用の魔導具を使ってもらった方が、きっと話題になると思うのだけれど」

「まぁ、そうだろうね」

ん――……

そうなると、俺が作ることになるか……。

「……アレク叔父さんに聞いてからになるけど、二人の分は話題作りとして、俺が作るよ」

「本当に?ありがとう、フィン兄様!
私一人だけ魔導具を使って夜会に出席なんてしたら、囲まれて質問攻めにされてしまうもの」

あ。

めんどくさかっただけか。

「お祖母様とお母様は、もう夜会に出席されているから、少しずつ艶髪《グロウ》が広がりつつあると思うけれど、令嬢たちに広めるには、セレスティア様とアリシア様が使ってくれれば、すぐに広がるわ」

……ティアナは商人として成功しそうだな。

「アレク叔父様にそう説明すれば、二人の分くらいなら、話題作りを兼ねて、フィン兄様が作るのも特別に許可してもらえると思うの」

……。

……本当に商売人になれそうだな。

「分かった。そうやって話をしてみるよ」

「ありがとう、フィン兄様!
良かったら明日のお茶会、兄様も顔を出す?そのクルクルの髪を見れば、二人とも、より魔導具に興味を持つと思うのだけれど」

「いや、俺は忙しいから遠慮しておく」

「そう? 残念ね。フィン兄様が一緒なら、魔導具について説明してもらえると思ったのだけれど」

「魔導具の説明なら、俺がいなくてもできるだろ」

「実際に使っているところを見てもらった方が、分かりやすいと思うの」

「……じゃあ、明日のお茶会に同席する侍女の髪を使って、艶髪《グロウ》でツヤを出したり、髪を巻いたりすればいいだろ。それこそ、ティアナが最初は真っ直ぐで艶のある髪で二人を迎えて、話題になったところで、巻き髪を披露するのもありだと思うぞ」

「……! それいいわね!その案を採用するわ!」

「そう。よかったな」

……まぁ、これで俺がわざわざお茶会に顔を出す必要もないだろう。