翌日から、ティアナに頼まれたカールアイロンの製作に取りかかった。
艶髪《グロウ》のように、熱を使って髪の形を変える魔導具なら、基本的な考え方は同じだ。
プレートを平らにする必要はない。
筒状にして、その周囲を均一に加熱できればいい。
ティアナは元々、ゆるいウェーブ髪だから、それを活かすなら少し太めの筒が良さそうだな。
……筒の太さを変えれば、カールの大きさも調整できる。
それなら、サイズ別にいくつか作ればいいか。
髪に触れる円筒部分を魔導陶板で作る。
魔導陶板に魔力を纏わせ、ゆっくりと形を整えていく。
太さを変えながら、三種類の円筒を作った。
次は魔導回路だ。
全体を均一に温めるには、艶髪《グロウ》と同じように、円筒全体へ魔導回路を均等に配置する必要がある。
表面に沿って、丁寧に描き込んでいく。
……魔力を流し、各部に均等に行き渡っているか確認する。
わずかなムラを見つけては、魔導回路を調整していく。
よし。問題ないな。
持ち手と先端部分は、艶髪《グロウ》と同じく絶熱樹脂でいいな。
次は、火属性と風属性を組み込む。
火属性で円筒部分を加熱し、風属性で温度を安定させる。
……。
……カールアイロンにも水属性を組み込むべきだよな?
ヘアアイロンでツヤを出せるようになって喜んでたし。
それなら、カールアイロンでも同じようにツヤを出せるようにした方がいいな。
火属性に干渉しないように、風属性の近くに水属性を組み込んでいく。
魔力の流れを調整しながら配置する。
水属性を組み込んだ部分に、少量の魔力を流してみると、円筒部分から白い蒸気が立ち上った。
感温石で蒸気の温度に問題がないことも確認できた。
よし。これなら大丈夫だな。
次は……
艶髪《グロウ》にも使っている、つまみ部分だな。
温度も110℃から160℃でいいだろう。
あとは、髪を押さえるための仕組みが必要か。
パカパカしてたことは覚えてる。
……魔導陶板で作って、外側は絶熱樹脂で覆えばいいか。
髪に触れる部分には熱を伝えたいが、手で触れる部分まで熱くする必要はない。
これなら、使用するときも少しは安全になるだろう。
……あとは、火傷しないようにどうすべきか。
艶髪《グロウ》と違って、今度は加熱部分が外側に露出する。使い方を間違えれば、髪だけじゃなく指や顔にも触れてしまう。
前世でも、カールアイロンで火傷したという話はよく聞いたことがあるし……。
……いや。構造上これ以上の安全対策は難しいな。
ん――……。
使用するときに、気を付けてもらうしかないか。
最後に魔核を取り付ければ……
……完成だ。
太さの違う三種類のカールアイロン型魔導具が完成した。
試しに毛先を巻いてみたが……自分で髪を巻くのは難しいな……。
……あとでティアナに試してもらおう。
「......ふう」
気づけば、もう夕方になっていた。
思ったより時間がかかったな。
……夕食まで、お茶でも飲みながら休憩するか。
いつもの茶葉でお茶を入れ、椅子に深く座り直した。
……それにしても、安全対策は難しいな。
円筒部分に、一回り大きな円筒を作って、直接触れられないようにするとか……?
あとは……前世で、風の力を利用して髪を円筒部分に巻き付けるようなカールアイロンがあった気がする。
なら、風属性を利用して……いや。それは難しいか。
すでに魔導陶板に風属性を組み込んでるし……。
風属性は温度を安定させるために使っている。ここからさらに髪を巻き付ける用途まで持たせるとなると、魔力の流れを調整し直す必要がある。
そうなると、魔導回路から描き直しになるな……。
……今回は、これでいいか。
諦めも肝心だ。
そんなことを考えていると、ノアが夕食の時間だと呼びに来た。
俺は食堂へ向かった。
すでにティアナが食堂に着いていた。
「今日もみんな夜会か?」
「えぇ。……フィン兄様は、本当に王家主催の夜会にしか参加しないのね。私は夜会に参加できるようになるの、楽しみなのに」
「……行ったら分かるよ。……家に帰りたくなるって」
「フィン兄様に聞いた私がバカだったわ……」
「え?」
……すごく呆れられたことだけは分かった。
まぁ、いい。
「それより。ティアナが言っていた魔導具が出来た」
「もう出来たの?!さすがフィン兄様ね!」
……現金なやつだ。
「……食べ終わったら試してみるか?」
「えぇ!楽しみ!」
