侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜



「次は扇涼《ヴェント》を作る?」

「あぁ。だが、そろそろ昼食の時間だろう。キリがいいから、昼食を兼ねて、休憩にしよう」

まだ昼食まで少し時間がある。
俺とじぃちゃんは応接室へ向かうと、そこにはまだみんなが集まっていた。

「あら、ゲレオン。もう扇涼《ヴェント》を作り終えたの?」

そういえば、俺たちが作業部屋へ向かった理由は、扇涼《ヴェント》の制作だった。
話しているうちに、じいちゃんが清涼機《ブリーズ》に興味を持ったから、先に清涼機《ブリーズ》の制作に取り掛かったんだよな。

「いや。清涼機《ブリーズ》を作り終えた。扇涼《ヴェント》は昼から作る予定だ」

「まぁ、そうなの?」

「フィンが、清涼機《ブリーズ》を私たちへの土産として持ち帰ってもらおうと思っていたそうだ。ついでに、できる限り制作して屋敷中に設置しようと思ってな。領地の方が王都より涼しいとはいえ、暑いものは暑いからな」

「まぁ……フィンったら。そんなことを考えていたのね」

咄嗟の言い訳が、どうやら上手くいったようだ。

「まぁね。そのためにも、まずは実際に使って清涼機《ブリーズ》の快適さを知ってもらおうと思ったんだ。二人の部屋にも設置するから、夜も快適に眠れると思うよ」

「……フィンは昔から変わらないわね」

「そうだな。昔から、よく気の利く子だった」

それはそうだ。小さい頃から、前世の記憶があったのだから。
じぃちゃんとばぁちゃんには、優しくしておいて損はない。何かをすれば、いつもそれ以上の優しさが返ってくる人たちだったからな。


コンコン――

「失礼します。昼食の準備が整いましたので、皆様、食堂へお越しください」

「では、参ろうか。ここでの食事は楽しみの一つだからな」


食堂へ向かうと、夏らしい冷たい料理が並んでいた。

トマトとモッツァレラチーズを使った冷製パスタに、サラダと冷製スープ。騎士団に所属する父さんや兄さんたちのために、メインには塩と胡椒で味付けしたシンプルなステーキも用意されている。

「おぉ……冷製パスタか。久しぶりに食べるな」

「そうですね。夏の楽しみの一つでしたね」

それぞれ席に着き、料理へと手を伸ばす。

「やはり美味いな。この暑さで少し食欲が落ちていたが、冷製パスタは食べられる」

「えぇ。トマトもそうですけれど、サラダも夏野菜をふんだんに使っているからでしょうね」

久しぶりに家族全員で囲む食卓は、それだけで賑やかだった。
領地での出来事や、王都での近況。 他愛もない話をしながら、穏やかな昼食の時間が流れていく。


食事が一段落した頃、侍女たちが新しい皿を運んできた。

「まぁ……これは?」

「食後のデザートだよ」

「氷菓子か。珍しいな」

じぃちゃんとばぁちゃんが、チラリと俺を見た。

「最近暑いから、冷たいものが食べたくなって、冷凍する魔導具を作ったんだ。溶けないうちに食べよう」

「「美味い!」」

エミール兄さんとフィリップ兄さんも、初めて食べるアイスを気に入ってくれたみたいだ。

「……美味いな。魔導具を作っていて、頭を使ったからか、甘さが染み渡る」

……分かる!糖分摂取大事!

「……本当に美味しいわね。甘いけれど、くどくなくて、すっと溶けて」

「滞在中にこれも作ってみたいものだ」

「これがあれば、領地にいても氷菓子が食べられるわね」


食後のアイスを楽しみながら、家族との時間を過ごした。
じぃちゃんとばぁちゃんが領地から戻ってきたことで、屋敷の空気もどこか明るくなった気がする。

だが――。
昼食の時間が終わると、じぃちゃんの意識はすぐに制作へ戻っていた。


「さて、フィン。次は扇涼《ヴェント》作りだ。時間がもったいない。早く行くぞ」

「……え。もう行くの?」

……相変わらずのせっかちだ。