侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜



……なんだか、体がだるい。

まさか、風邪か……?

心当たりがあり過ぎる。
清涼機《ブリーズ》の効いた作業部屋で、冷凍庫の調整中に漏れ出した冷気を浴びながら、作業を続けていた......。

それに、凍った箱を抱えて庭まで運ぼうとしたし。

それで体調を崩さない方がおかしいか。

……でも、良かった。 冷凍庫が完成した後で。
もし中途半端なまま体調を崩していたら、魔導具のことで頭がいっぱいになって、ろくに眠ることもできなかっただろう。

……今日は一日ベッドの上だな。


コンコン――

「フィン様。朝食のお時間です」

「……」

「フィン様?失礼します」

扉が開き、ノアが部屋に入ってきた。

「顔色がお悪いですね……。体調が優れないのですか?」

「うん。ちょっと体がだるい……。朝食は部屋で取るから、軽く食べられる物持ってきて。……あ、料理長に氷菓子も出してって伝えて」

風邪を引いた時、前世ではアイスを食べてたんだよなぁ……。
まさか異世界で、自分で作ることになるとは思わなかったけど。

「かしこまりました」


しばらくすると、ノアが軽食と、アイスを持って戻ってきた。

「お待たせいたしました」

「ありがとう」

「では、何かありましたらお呼びください。失礼いたします」

……良かった。ちゃんとアイス出来たんだ。
溶ける前に、先に食べよう。

一口食べる。
……冷たい。
そして、甘い。

完全にアイスだ。
だるい体に、甘さが染み渡っていく感じがする……。

……あっという間に、食べてしまった。
もう一個くらい、食べられそうだな。
とりあえず軽食を食べてから、余裕があればまたアイスを……いや、一人一つ分くらいしか作ってないんだった……。
また料理長に、追加でお願いしておこう。


そんなことを考えていたら、軽食も全て食べ終わった。
だるくても食欲があるのは良いことだな。

とりあえず、もう少し寝ようかな……。

そう思った時、急に眠気が強くなった。
意識が沈んでいく……


――


「また熱が上がって来たわね。何か食べられそう?」

「……アイス」

「はい。どうぞ」

……美味しい。

風邪を引いた時だけ、いつもより少し高いアイスを買ってもらえた。

冷たくて、甘くて。
それだけで、少しだけ元気になった気がした。

「明日も熱が下がらなかったら、病院へ行こうね」

「……注射嫌い」

「それじゃあ、早く風邪を治さないとね」

「……うん」

「おにいちゃん、だいじょうぶ?」

「お兄ちゃんはお熱があるから、――ちゃんは隣のお部屋で遊ぼうね」

「――ちゃん、元気になったら、お兄ちゃんとあそぼうね」

「うん! げんきになったらあそぶ!」

「お兄ちゃん、寝てる間に汗かいたね。お水飲める?」

「......うん」

お母さんがコップを口元まで運んでくれる。

「無理しないで、今日はちゃんと休むのよ」

「....分かってる」

「本当かな?」

そう言って笑うお母さんの声が、優しかった。


その後も、お母さんは何度も様子を見に来てくれた。
汗を拭いてくれて、水を飲ませてくれて。

眠っている間も、近くに誰かがいる気配がした。


――

そこで、目が覚めた。

「……懐かしい夢だったな」

前世で食べたアイス。
あのクオリティは再現できなかったな。
まあ、材料も違うし仕方ないか。


それでも、久しぶりに食べたアイスは美味しかった。


コンコン――

「フィン様。お加減はいかがでしょうか。昼食のお時間ですが、召し上がれそうですか?」

「……うん。また軽食を持ってきてもらっていい?」

「かしこまりました」


懐かしい夢を見たからか、朝より少しだけ体が軽く感じた。