侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜



久しぶりにカツサンドを食べられて満足はした。でも、夕食用に少ししか食べなかったから、まだちょっと物足りない。

夕食までまだ時間があるし、次に作りたいものでも考えるか。


最近、考えていたのは冷凍庫、パソコン、プリンター、3Dプリンターだけど……。

この中で、今のところ作れそうなのは冷凍庫くらいか。

冷凍庫に関しては、冷却魔導具の応用でいけそうだ。

フィリップ兄さんが清涼機 《ブリーズ》を作った時は、魔力量が高すぎて冷却機能が上がりすぎた。
だから、フィリップ兄さんの魔力を中型魔核に置き換えて考えれば、冷却能力を調整して冷凍庫として使えるんじゃないかと思ったんだよな――......。

久しぶりに前世の味を思い出したし、夏だからアイスを食べたいし……。
冷凍庫を作ろうか。

冷凍庫とはいっても、本体は既存の冷蔵庫を改良すればいい。問題は、内部をどれだけ低温に保てるかだな。

そうなると、外側は木材で作るとして、内側は……金属板か。
いや、少し材料費は掛かるけど、魔導断熱板を使った方がいいか。

まずは五十センチくらいの大きさで試しに作ってみる。

魔導断熱板に魔力を纏わせ、四角い箱型へと形作っていく。
冷気を逃がさないためには、僅かな隙間も許されない。
接合部分を丁寧に加工し、完全に密閉された箱を作り上げる。

魔導断熱板で作った箱の内側に、魔導回路描写ペンで魔導回路を描いていく。五十センチ程度の大きさなら、ペン先は(中)を選んだ。

魔力を少しずつ流しながら確認していたら、あることに気付いた。

冷蔵庫の魔核は小型のため、魔導回路はペン先(中)で魔力の通り道としてちょうど良い。
しかし、冷凍庫となると魔核は中型を使うことになる。
その場合、ペン先(中)では長期間使用するうちに、魔導回路が魔力の負荷に耐えられず、脆くなる可能性がある。

そうなると、ペン先は(大)の方が安全かもしれない。

……魔導回路修正ペンで消して、最初から書き直すか。


魔導回路を消していたら――

コンコン――

「フィン様。夕食のお時間です」

「……あぁ。今行く」

どうやら、魔導回路を消すだけで思った以上に時間がかかっていたらしい。


食堂に着くと、父さんと母さん、ティアナがすでに待っていた。

料理が運ばれてくる中、料理長に作ってもらったカツサンドも二切れづつ運ばれた。

「ん?これはサンドイッチに見えるが……中はなんだ?」

「こちら、カツサンドと言って、フィン様から教えていただいた、異国のサンドイッチです。中はキャベツと、豚肉に衣をつけて揚げたものを挟み、トマトとワインで煮詰めたソースを絡めております」

「父さんは多分、気にいると思う」

父さんはカツサンドを手に取ると、大きな口で一口かじった。

「ん?! 美味い! ……肉が柔らかいな」

「本当……とても柔らかくて、衣もサクッとしているわ。もっと油っこいのかと思っていましたけれど、そんなこともないのね」

「美味しい! このソースもすごく合ってる!」

みんな気にいったようで良かった。

「これは仕事の合間に食べたくなるサンドイッチだな」

父さん、お昼は騎士団の食堂でがっつり食べているはずだよな?それに加えてカツサンドまで食べるつもりなのか。

……騎士の食欲って、やっぱり凄いな。


「またフィン兄様の昔の知識なの?」

ティアナが従者たちに聞こえないよう、小声で尋ねてきた。

「まぁね」

「久しぶりに知らない料理を食べられて楽しかったわ」

「また思い出したら、料理長に再現してもらうよ」

こうして和やかな雰囲気のまま食事を終え、食後のお茶を楽しんでいると、ティアナがふと口を開いた。

「そう言えばフィン兄様。ウィルフリード殿下から、お手紙が届いたそうね。夜会への直接のご招待でしたでしょう?」

手紙のこと、すっかり忘れていた。

「……あぁ」

「どうせ、お返事もまだなのでしょう?ちゃんとお返事をしてくださいね。エルーシア殿下と学園でお会いした時に、気まずい思いをするのは、私なのよ」

「まぁ……また殿下へのお返事を後回しにしていたの?」

「まさか、カツサンドのことで頭がいっぱいだったわけではないだろうな。ははは!」

「……」

……半分正解で半分不正解だ。
カツサンドと冷凍庫の事を考えていたからな。

「本当にそうだったの?!はぁ……フィン兄様。殿下へのお返事より、カツサンドの方が優先順位が高いだなんて……。まるで子供じゃない」

……自分でも驚きだ。

「このあと、返事を書くよ」

「えぇ。そうしなさい。小さい頃から仲がいいとはいえ、相手は殿下です。学園時代とは違って、貴方ももう大人なのだから、礼儀はきちんとね」

「……はい」

母さんに釘を刺されてしまった……。


居た堪れなくなったわけでは決してないが、みんなより先に部屋へ戻ることにした。