侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜



「こんな感じはどうかなって」

冷却魔導具と扇子型魔導具の、候補名が書かれメモをアレク叔父さんに渡されて、目を通した。

「……冷却魔導具の候補が、清涼機《ブリーズ》、涼風機《クールマギア》、氷涼器《フロスト》、冷華《セレネ》。扇子型魔導具の候補が、扇涼《ヴェント》、風華扇《フェリシア》、涼雅扇《エレガンス》、花風《フローラ》……と。やっぱり、冷却魔導具と扇子型魔導具でいいと思う」

「それは商品分類だよ。それに、貴族女性が使う商品なら、華やかな名前の方が好まれるからね」

……俺は、できるだけシンプルで分かりやすいものがいいんだけどな。それに、男性も使うだろうし。

「おすすめは、冷却魔導具が冷華《セレネ》で、扇子型魔導具が風華扇《フェリシア》かな」

「……」

「清涼機《ブリーズ》と扇涼《ヴェント》にする!」

「そう?シンプルだけど、商品として分かりやすくていいね」

……危ない危ない。
アレク叔父さんに、すっごく華やかな名前を付けられるところだった!

そんなことを考えていると、アレク叔父さんが書類に名前を書き込んでいく。

「じゃあ、冷却魔導具は清涼機《ブリーズ》、扇子型魔導具は扇涼《ヴェント》で、進めていくね」

「お願いします」

「そろそろ夏の社交シーズンで、王都に人が集まり始める頃だから、急ピッチで取り掛かるよ。予約分を優先するのはもちろんだけど、最初に求められるのは高位貴族からになると思う」

「うん。いつもの流れだね」

「フィンはあまり貴族の付き合いに参加しないから大丈夫だと思うけど、我先に優先しろと言ってくる方もいるからね。商売とはいえ、貴族相手だと調整も必要になるんだ」

「毎回無理なことなのに、どうして毎回言ってくるんだろうね……」

「それが交渉というものなんだろうね」

「その交渉、下手すぎない?非効率だと思うんだけど」

「まぁ……ね」

さすがのアレク叔父さんも、苦笑を浮かべた。

でも、アレク叔父さんは貴族相手の面倒な調整をこなしながら、この商会を支えている。
まだ三十代前半という若さで、リリエン商会をここまで大きく築き上げたアレク叔父さんは、やっぱりすごいと思う。

「まぁ、とにかく、そういう流れで、最初は王族の方々へお贈りすることになる。それでいいかい?」

「うん。そうしてもらえるなら、ウィルフリード殿下から『なぜ自分のところにはないんだ』って文句の手紙が来ることもないだろうし」

「相変わらず仲がいいね」

「……え?」

「え?」

何か変なことを言っただろうか。

ウィルフリード殿下とは、小さい頃からお会いしていたが、学園時代だって魔導具について話をしたり、たまに文句の手紙を送られてくるくらいの関係だ。


「もう話は終わったよね? そろそろ帰ろうかな」

「あぁ。今日は来てくれて助かったよ。早めに商品名を決めて宣伝を始めたかったからね」


そんなことを話しながら、アレク叔父さんは店の外まで送ってくれた。

「じゃあ次は、じぃちゃんが来た時にまたくるよ」

「あぁ、分かった。気をつけて帰るんだよ」


馬車に乗り込もうとした時――

「あ、素材買いに来たんだった!アレク叔父さん!買い物してから帰るよ」

そう言うと、アレク叔父さんは笑いながら店へ戻るよう促してくれた。


店員に必要な素材をメモした紙を渡し、待っている間、店内の様子を眺めていた。

すると、冷却魔導具ーー清涼機《ブリーズ》に興味を示している人が多いことに気づいた。

そりゃそうだよなぁ....... 。
これだけ涼しかったら、気になる人も多いだろう。家でも使えば、きっと快適に過ごせるはずだ。

そんなことを考えていると、店員が素材を持って来てくれた。
会計を済ませ、今度こそ馬車に乗り込んだ。

まだ起きてから、数時間しか経っていないのに、なんだかどっと疲れたな。
商品名を決めるために、いつも以上に頭を使ったからだろうか。


帰ったら、焼き菓子を食べながら、ノアが入れてくれるお茶で休憩しよう。