侯爵家三男は快適に暮らしたい。〜前世の知識で異世界魔導具づくり〜



……いや、決めるには早すぎるか?

でも本当に理想的というか、今後の改装でさらにいい感じになりそうなのが、想像出来るというか。
場所も、屋敷からも通いやすそうなんだよなぁ。リリエン商会に行った帰りに、一杯やるにもちょうどいい。

「おっ!もう決めたのかい?」

「……ちょっと待って、迷ってるというか……いや、決めたんだけど早すぎるというか……」

「ん?」

「一目惚れに近い感じで惹かれてるんだけど、もう決めちゃってもいいのか迷ってるというか……」

「あぁ……。まぁ、一目惚れも大事だと思うよ。今後、他の物件を見たとして、また同じような感覚になるとも限らないからね」

「……確かに」

「それで、どちらに惹かれたんだい?」

「二件目の空き店舗」

「なるほど。立地も広さも申し分無い物件だったね。それに今後、エミールが結婚したらフィンは屋敷を出るんだろ?そうなると一からまた住むところを探すことになる。あの二件目の空き店舗は、二階の一つが私室に使えるようになっていたから、屋敷を出るってなっても住む部屋も確保ができるし、隣の部屋を工房としても使える。だからフィンには合ってると思うよ」

「……そう考えると私室として使える部屋があるっていいね。引越しって大変だけど、エミール兄さんが結婚するまでにちょこちょこ荷物を運べばいいだけだし。なんか良さそうな気がしてきた」

「もちろん食事処としての一階もとてもよかったしね」

「うん。あの広さがあれば、ロールカーテンで区切ったりしても圧迫感もなくゆったりした空間を作れそう。……よし、あの空き店舗にする!」

前世での一人暮らしは賃貸だったから、こんなに大きな買い物をするのは初めてでちょっと緊張するけど、すごく楽しみになってきた!

「では、明日……は、予定があるから、明後日もう一度商業ギルドへ行って、購入の意向を伝えようか」

「分かった」

「じゃあ、今日はここまでだな。一応物件の資料を持って帰るかい?」

「そうだね。テーブルや椅子の配置とか個室の作りも考えたいし」

俺は資料をもらってリリエン商会を出た。

……あっ!茶葉!!

思い出してよかったぁ。買って帰ろう。
近くに茶葉を扱っている店があったはずだ。せっかくだし、そこに寄っていこう。

リリエン商会から歩いてすぐのところにある店へ向かった。

「こんにちは」

「いらっしゃい」

「あの、この三種類の茶葉は取り扱ってますか?」

そう言って、メモを店主に渡した。

「あぁ、ありますよ。一袋ずつでいいですか?」

「はい、お願いします」

茶葉の名前を書いたメモを持ってきてて良かった。
名前覚えなかったし。

「お待たせしました。こちらでお間違いないですか?」

「はい」

支払いを済ませ、屋敷に帰った。


夕食まで時間あるし、せっかくだからさっき買った茶葉を調合して、お茶を入れてみようかな。

作業部屋に入り、お茶を入れる準備をしていると――

「フィン兄様、ちょっといい?」

「ん?ティアナか。どうかした?」

「もう聞いていると思うのだけど、秋の終わりごろに開催される騎士団と魔法師団の合同演習のことでちょっと相談というか……」

「相談?ティアナに着いて行くように言われてるけど?」

「友人たちと一緒に行く約束をしちゃったから、フィン兄様はついてこなくていいと言うか……」

「それなら俺は楽だからいいけど、エミール兄さんにも釘を刺されてるしなぁ……」

「……フィン兄様って本当に察しが悪いというか……。はぁ……」

「……あぁ!恋人と行くのか!」

「違う。……まぁ、男性の友人も一緒だけれど」

「なるほど。確かにそれだと俺がいると邪魔だろうな」

「じゃあ、みんなと一緒に行ってもいいのね?」

「んー……俺も向こうでガレスたちと合流するつもりだったし……一応母さんに確認を取っておこうか」

「……絶対だめって言われるわ」

「その時は、行きと帰りだけ一緒に行動すればいいんじゃないか?向こうに着いたら目の届く範囲にいればいい。さすがに離れ過ぎてたらエミール兄さんに見つかって、怒られるのは俺だし。それに十六歳は家族よりも友達と遊ぶ方が楽しいのは分かってるつもりだ」

「……フィン兄様は年齢とか友人関係なく楽しそうだけれど?」

「…………」

お茶が美味い……。