※※※
翌朝、教室に入るなり大塚君がすごい剣幕で僕に詰め寄って来た。
「澪! お前!」
「あ……、おはよう」
大塚君がばんって凄い音を立てて、僕の机に机に手を付いた。周りのみんなもこっちを見るし、僕も心臓がバクバクしてきて落ち着かない。
「どうして昨日体育館来なかったんだよ、メッセージも返信しねぇし!」
「行ったよ、行ったけど……。ちょっと色々あって……」
何から言えばいいか分からなくて、『ごめん』のスタンプしか送れなかった。
「色々って……、お前、俺に言うことあるだろ」
大塚君は見たこともないほど怒ってる。やっぱり謝り方が足りなかったのかも。僕は深々と頭を下げた。
「行けなくて、ごめんなさい?」
「違う、いや違わないけど……」
「どっち?」
痛いぐらいの力でぐっと両肩を掴まれて、顔を覗き込まれた。
「お前、峰雪先輩と付き合い始めたって本当か?」
「ええええええ、どこでそれを……」
「……調理部の女子に言われた。だからもうお前調理部くんなって、わざわざ忠告された」
(えええ、大塚君に喋っちゃったの誰なんだ~)
実は昨日あの後、部長と調理室に帰ろうとしたら、峰雪先輩も一緒についてきちゃって、部長が『こいつ、澪君の彼ピ』とか言ったものだからそこから大騒ぎになっちゃって……。 峰雪先輩はすごくクールな見た目だけど、女子と話すのは慣れてるみたい。
普通に調理部のみんなに溶け込んでクッキーと紅茶嗜んじゃってさ、来週の火曜日のグリーンカレーの時は先輩を調理部にご招待することになったんだ。
「答えろ」
大塚君の俺様命令口調はいつものことだけど、いつにもまして怖い声だ。
「……うん、多分、付き合った?」
昨日あれからあったメッセージは僕の「よろしくお願いします」にたいして「よろしく」のスタンプ一件だけ。
あれはやっぱり勘違いだったんじゃないかとか思ってしまうほど、付き合っているのかどうかの確証はいまいち持てない。
「本当なのかよ……」
大塚君は一瞬泣きそうに眉を顰めてから、僕をきっ、と睨みつけると、何も言わずに自分の席の方に戻っていってしまった。
それっきり今日は一日、口も聞いてくれなくて、お昼も別のクラスの友達のところに行ったみたい。体育の授業の二人でやる体操も組んでくれなかった。
(もう僕と話もしてくれないのかなあ……)
大塚君って性格的にへそを曲げたら長そうだなって感じてたけど、ここまで子どもっぽく露骨に無視されるとは思わなかった。
落ち込みながらとぼとぼと歩いてついた駅前で、コーヒーチェーンの看板を見て僕はなんか忘れていることがあったような?って急に思い出した。
慌てて通話アプリのトーク画面をスクロールする。
(ああ、危ない。ギリギリセーフだ)
いとこのお姉ちゃんが『澪、あんたステラカフェいったことないの? 行ってみたいっていってたじゃない? これあげる』ってわざわざ送ってくれた、eギフトの1ドリンクチケット、使用期限が今日だった。しかも二枚……。
(一人で行く勇気なくてそのうち大塚君誘おうかなって思ってたのに……、喧嘩しちゃった……)
一人であのリア充キラキラ系な店員さんばかりのお店で、トールがどうとか、キャラメル増量とか、複雑な注文をお願いするのは僕にはハードル高すぎ。考えただけで激萎え……。すごい緊張してしまう……。
モバイルオーダーならじっくり選べるしいいかもって思ったけど、このチケットは使えないらしい。それで詰んで、まあそのうち使おうって先送りして、今ここって感じ……。
(でも今日中に使わないと、無駄になっちゃうし……)
窓越しに店内を覗くと、PCに向かって作業してる人、勉強をしている人、のんびりチルってる雰囲気の人、誰もがきりりとお洒落で素敵に見えて気後れしてしまう。
(ううう。ああ、でも、……よし、頑張ろう!)
折角ならカスタムオーダーを成功させて、お姉ちゃんにちゃんと飲んだよって写真を送りたいぞ。
(そうだ! 前にメモしてたかも!)
メモ帳アプリを開いたら、『カフェモカフローズンクリーム、トールサイズ、生クリーム増量、チョコクリーム 無料』と書いてあった。グッジョブ、昔の僕!
視界の端に今月のおすすめフレーバーのポスターが見えて、マスカットのフレーバーティーに心が揺らぐ。
(うーん、迷う。一旦どっちにするか考えるか)
後から来る人の邪魔にならないように扉の前から横にズレようとしたその時、後から声をかけられた。
「あれ、澪君じゃん」
(このイケボは……)
翌朝、教室に入るなり大塚君がすごい剣幕で僕に詰め寄って来た。
「澪! お前!」
「あ……、おはよう」
大塚君がばんって凄い音を立てて、僕の机に机に手を付いた。周りのみんなもこっちを見るし、僕も心臓がバクバクしてきて落ち着かない。
「どうして昨日体育館来なかったんだよ、メッセージも返信しねぇし!」
「行ったよ、行ったけど……。ちょっと色々あって……」
何から言えばいいか分からなくて、『ごめん』のスタンプしか送れなかった。
「色々って……、お前、俺に言うことあるだろ」
大塚君は見たこともないほど怒ってる。やっぱり謝り方が足りなかったのかも。僕は深々と頭を下げた。
「行けなくて、ごめんなさい?」
「違う、いや違わないけど……」
「どっち?」
痛いぐらいの力でぐっと両肩を掴まれて、顔を覗き込まれた。
「お前、峰雪先輩と付き合い始めたって本当か?」
「ええええええ、どこでそれを……」
「……調理部の女子に言われた。だからもうお前調理部くんなって、わざわざ忠告された」
(えええ、大塚君に喋っちゃったの誰なんだ~)
実は昨日あの後、部長と調理室に帰ろうとしたら、峰雪先輩も一緒についてきちゃって、部長が『こいつ、澪君の彼ピ』とか言ったものだからそこから大騒ぎになっちゃって……。 峰雪先輩はすごくクールな見た目だけど、女子と話すのは慣れてるみたい。
普通に調理部のみんなに溶け込んでクッキーと紅茶嗜んじゃってさ、来週の火曜日のグリーンカレーの時は先輩を調理部にご招待することになったんだ。
「答えろ」
大塚君の俺様命令口調はいつものことだけど、いつにもまして怖い声だ。
「……うん、多分、付き合った?」
昨日あれからあったメッセージは僕の「よろしくお願いします」にたいして「よろしく」のスタンプ一件だけ。
あれはやっぱり勘違いだったんじゃないかとか思ってしまうほど、付き合っているのかどうかの確証はいまいち持てない。
「本当なのかよ……」
大塚君は一瞬泣きそうに眉を顰めてから、僕をきっ、と睨みつけると、何も言わずに自分の席の方に戻っていってしまった。
それっきり今日は一日、口も聞いてくれなくて、お昼も別のクラスの友達のところに行ったみたい。体育の授業の二人でやる体操も組んでくれなかった。
(もう僕と話もしてくれないのかなあ……)
大塚君って性格的にへそを曲げたら長そうだなって感じてたけど、ここまで子どもっぽく露骨に無視されるとは思わなかった。
落ち込みながらとぼとぼと歩いてついた駅前で、コーヒーチェーンの看板を見て僕はなんか忘れていることがあったような?って急に思い出した。
慌てて通話アプリのトーク画面をスクロールする。
(ああ、危ない。ギリギリセーフだ)
いとこのお姉ちゃんが『澪、あんたステラカフェいったことないの? 行ってみたいっていってたじゃない? これあげる』ってわざわざ送ってくれた、eギフトの1ドリンクチケット、使用期限が今日だった。しかも二枚……。
(一人で行く勇気なくてそのうち大塚君誘おうかなって思ってたのに……、喧嘩しちゃった……)
一人であのリア充キラキラ系な店員さんばかりのお店で、トールがどうとか、キャラメル増量とか、複雑な注文をお願いするのは僕にはハードル高すぎ。考えただけで激萎え……。すごい緊張してしまう……。
モバイルオーダーならじっくり選べるしいいかもって思ったけど、このチケットは使えないらしい。それで詰んで、まあそのうち使おうって先送りして、今ここって感じ……。
(でも今日中に使わないと、無駄になっちゃうし……)
窓越しに店内を覗くと、PCに向かって作業してる人、勉強をしている人、のんびりチルってる雰囲気の人、誰もがきりりとお洒落で素敵に見えて気後れしてしまう。
(ううう。ああ、でも、……よし、頑張ろう!)
折角ならカスタムオーダーを成功させて、お姉ちゃんにちゃんと飲んだよって写真を送りたいぞ。
(そうだ! 前にメモしてたかも!)
メモ帳アプリを開いたら、『カフェモカフローズンクリーム、トールサイズ、生クリーム増量、チョコクリーム 無料』と書いてあった。グッジョブ、昔の僕!
視界の端に今月のおすすめフレーバーのポスターが見えて、マスカットのフレーバーティーに心が揺らぐ。
(うーん、迷う。一旦どっちにするか考えるか)
後から来る人の邪魔にならないように扉の前から横にズレようとしたその時、後から声をかけられた。
「あれ、澪君じゃん」
(このイケボは……)



