※※※
依弦先輩は秋の終わりに大学に無事に合格した。
先輩の合格はもちろん凄く嬉しいけど、同時に寂しくなってしまった。
先輩が卒業するまで四か月とちょっとしかない、だから僕等は一緒に高校に通える時間をとても大切に思ってる。
早めに受験が終わったからといって、先輩は勉強をおろそかにしていない。
大学に入学してからを想定して、依弦先輩は自習室でよく勉強してる。こういうところ見習いたいなって思うし、応援したいって思ってついついおやつを作り過ぎちゃう。
それで調理部の活動日には調理室に来て、僕が作ったものを美味しそうに食べてくれるんだ。
「で、なんで大塚がここに来てるんだ?」
窓の向こう、大塚君にお菓子を渡してた僕の腰を引き寄せて、後ろから来た依弦先輩がバックハグしてきた。
「取りに来るだけなら、別の部員でもいいだろ」
「調理部に材料費をちゃんと払って、バスケ部のおやつを作ってもらってるから、先輩に文句を言われる筋合いはないですけど」
ぶっきらぼうにそういった大塚君に、僕は今日のおやつのバナナブレッドが入った紙袋を差し出した。
「部活、頑張ってね」
「……おう。ありがとな」
大塚君が紙袋を受け取って、逆の手で僕の顔に手を伸ばしたのを先輩がぱしって振り払った。
「バナナブレッドは渡しても、澪まではあげないよ」
「どうっすかね? 先輩あと少しで卒業ですよね? 俺と澪が一緒に居る時間の方が長いですから」
「時間の長さより、愛は深さだと思うけどな、俺は」
「試してみます?」
僕を挟んで二人が頭の上でなんかもめてるけど、僕はぼーっと、バナナブレッドに合わせる紅茶はどっちがいいかなとか考えてて……。
「先輩、美味しくスィーツ食べましょ?」
振り向きながら先輩を誘ったら、肩に額をつけてぐりぐりってされた。
「可愛っ……、勉強の疲れ吹き飛ぶ……」
「クソっ。澪、明日食べた感想言うから! 全員に聞いてくるから!」
大塚君もちょっと優しくなってくれたな。
「うん!」
僕がひらひら手を振ったら、こっち向いてちょっとだけ笑って振り返してくれる。
先輩がぎゅうって増々僕に抱き着いて来た。
「ああ、もう。澪は俺に色々教えてくれるよな」
「なんですか?」
「俺にももっと、関心持ってほしい、です」
振り返ったら、先輩がちょっと口をむぐっとしてて、格好いい人が素直にそんなこというから、周りもどよめいてて……。なんか可愛いなって思っちゃったな。
「あの依弦がデレてる……。貴重すぎる」
部長がいきなりこっちにスマホを向けてきた。
「僕は先輩に関心ありまくりですよ~。今日はなに勉強してたんですか~」
僕は先輩の手を引っ張って、みんなに『カップルシート』って揶揄われてるいつもの席に並んで座った。それでみんなにニコニコ見守られながら、美味しいおやつタイムを楽しんだのだった。
終わり
依弦先輩は秋の終わりに大学に無事に合格した。
先輩の合格はもちろん凄く嬉しいけど、同時に寂しくなってしまった。
先輩が卒業するまで四か月とちょっとしかない、だから僕等は一緒に高校に通える時間をとても大切に思ってる。
早めに受験が終わったからといって、先輩は勉強をおろそかにしていない。
大学に入学してからを想定して、依弦先輩は自習室でよく勉強してる。こういうところ見習いたいなって思うし、応援したいって思ってついついおやつを作り過ぎちゃう。
それで調理部の活動日には調理室に来て、僕が作ったものを美味しそうに食べてくれるんだ。
「で、なんで大塚がここに来てるんだ?」
窓の向こう、大塚君にお菓子を渡してた僕の腰を引き寄せて、後ろから来た依弦先輩がバックハグしてきた。
「取りに来るだけなら、別の部員でもいいだろ」
「調理部に材料費をちゃんと払って、バスケ部のおやつを作ってもらってるから、先輩に文句を言われる筋合いはないですけど」
ぶっきらぼうにそういった大塚君に、僕は今日のおやつのバナナブレッドが入った紙袋を差し出した。
「部活、頑張ってね」
「……おう。ありがとな」
大塚君が紙袋を受け取って、逆の手で僕の顔に手を伸ばしたのを先輩がぱしって振り払った。
「バナナブレッドは渡しても、澪まではあげないよ」
「どうっすかね? 先輩あと少しで卒業ですよね? 俺と澪が一緒に居る時間の方が長いですから」
「時間の長さより、愛は深さだと思うけどな、俺は」
「試してみます?」
僕を挟んで二人が頭の上でなんかもめてるけど、僕はぼーっと、バナナブレッドに合わせる紅茶はどっちがいいかなとか考えてて……。
「先輩、美味しくスィーツ食べましょ?」
振り向きながら先輩を誘ったら、肩に額をつけてぐりぐりってされた。
「可愛っ……、勉強の疲れ吹き飛ぶ……」
「クソっ。澪、明日食べた感想言うから! 全員に聞いてくるから!」
大塚君もちょっと優しくなってくれたな。
「うん!」
僕がひらひら手を振ったら、こっち向いてちょっとだけ笑って振り返してくれる。
先輩がぎゅうって増々僕に抱き着いて来た。
「ああ、もう。澪は俺に色々教えてくれるよな」
「なんですか?」
「俺にももっと、関心持ってほしい、です」
振り返ったら、先輩がちょっと口をむぐっとしてて、格好いい人が素直にそんなこというから、周りもどよめいてて……。なんか可愛いなって思っちゃったな。
「あの依弦がデレてる……。貴重すぎる」
部長がいきなりこっちにスマホを向けてきた。
「僕は先輩に関心ありまくりですよ~。今日はなに勉強してたんですか~」
僕は先輩の手を引っ張って、みんなに『カップルシート』って揶揄われてるいつもの席に並んで座った。それでみんなにニコニコ見守られながら、美味しいおやつタイムを楽しんだのだった。
終わり



