「好きです、付き合ってください」を噛まずに言う練習だったのにメロ先輩とお付き合いした

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 依弦先輩は秋の終わりに大学に無事に合格した。
 先輩の合格はもちろん凄く嬉しいけど、同時に寂しくなってしまった。
 先輩が卒業するまで四か月とちょっとしかない、だから僕等は一緒に高校に通える時間をとても大切に思ってる。
 早めに受験が終わったからといって、先輩は勉強をおろそかにしていない。
 大学に入学してからを想定して、依弦先輩は自習室でよく勉強してる。こういうところ見習いたいなって思うし、応援したいって思ってついついおやつを作り過ぎちゃう。
 それで調理部の活動日には調理室に来て、僕が作ったものを美味しそうに食べてくれるんだ。

「で、なんで大塚がここに来てるんだ?」

 窓の向こう、大塚君にお菓子を渡してた僕の腰を引き寄せて、後ろから来た依弦先輩がバックハグしてきた。

「取りに来るだけなら、別の部員でもいいだろ」
「調理部に材料費をちゃんと払って、バスケ部のおやつを作ってもらってるから、先輩に文句を言われる筋合いはないですけど」
 ぶっきらぼうにそういった大塚君に、僕は今日のおやつのバナナブレッドが入った紙袋を差し出した。
「部活、頑張ってね」
「……おう。ありがとな」

 大塚君が紙袋を受け取って、逆の手で僕の顔に手を伸ばしたのを先輩がぱしって振り払った。

「バナナブレッドは渡しても、澪まではあげないよ」
「どうっすかね? 先輩あと少しで卒業ですよね? 俺と澪が一緒に居る時間の方が長いですから」
「時間の長さより、愛は深さだと思うけどな、俺は」
「試してみます?」

 僕を挟んで二人が頭の上でなんかもめてるけど、僕はぼーっと、バナナブレッドに合わせる紅茶はどっちがいいかなとか考えてて……。

「先輩、美味しくスィーツ食べましょ?」

 振り向きながら先輩を誘ったら、肩に額をつけてぐりぐりってされた。

「可愛っ……、勉強の疲れ吹き飛ぶ……」
「クソっ。澪、明日食べた感想言うから! 全員に聞いてくるから!」

 大塚君もちょっと優しくなってくれたな。

「うん!」

 僕がひらひら手を振ったら、こっち向いてちょっとだけ笑って振り返してくれる。
 先輩がぎゅうって増々僕に抱き着いて来た。

「ああ、もう。澪は俺に色々教えてくれるよな」
「なんですか?」
「俺にももっと、関心持ってほしい、です」

 振り返ったら、先輩がちょっと口をむぐっとしてて、格好いい人が素直にそんなこというから、周りもどよめいてて……。なんか可愛いなって思っちゃったな。

「あの依弦がデレてる……。貴重すぎる」

 部長がいきなりこっちにスマホを向けてきた。

「僕は先輩に関心ありまくりですよ~。今日はなに勉強してたんですか~」

 僕は先輩の手を引っ張って、みんなに『カップルシート』って揶揄われてるいつもの席に並んで座った。それでみんなにニコニコ見守られながら、美味しいおやつタイムを楽しんだのだった。

終わり