「好きです、付き合ってください」を噛まずに言う練習だったのにメロ先輩とお付き合いした

「大塚君!」

 声をかけたら、僕を見てなんかちょっとばつが悪そうな顔をされた。その大塚君の周りで、わらわらと他の部員が立ち上がって、段差で下にいる僕をみんなで見下ろしてきた。

「あの……、これ……」

 紙袋を差し出したけど、大塚君は声が聞こえてるはずなのに、僕の方を見ないでわざとらしくそっぽ向いてる。

「えー、わざわざ差し入れ持ってきたの? 羨ましいなあ」

 大塚君の代わりに別の男子に紙袋をかすめ取られて、僕は茫然としてしまう。

「おい、お前!」

 大塚君が紙袋を奪い返そうとするけど、他の部員に渡してしまった。ぐるるって唸りそうな顔つきで大塚君が怒りだして、紙袋をひったくる。なんか雰囲気が一気に険悪になる。

「お前、こいつばっかじゃなくて、俺ら全員に持って来てくれない? こいつ一人だけ毎回抜け出すのむかついてたんだよな」
「……」

 大塚君は肩を組んでくる友達の腕を、鬱陶しそうに払ってから僕を睨みつけた。

「帰れよ」

 厳しい言葉に、ぐっと詰まる。なんでこんな扱われ方しなきゃいけないんだろう。そう言いたいけど、感情が高ぶってすぐに言葉にならない。

「あーあれだろ。『好きです、付き合ってください』十回チャレンジをリベンジに来た?」
「え……」
「告白するとこの動画切り抜いて、インテレグラムの本アカに流したら、すげぇうけると思ったのに」

 隣のクラスで見かけたことがある男子がそう言ったら、大塚君が眉毛を吊り上げて「ふざけんな!」って言いながらその男子の頭を小突いた。

「……どういうこと?」

 僕にあのチャレンジさせたのは、揶揄ったり、馬鹿にしたり、そういうことさせるためだったの……。ショックで鼻の奥がつんってして、涙が込み上げてきた。

「違う、俺……、俺は、澪のこと……」

 大塚君が体育館の段差を降りて僕の方に手を伸ばす。でも僕は強い力でぐっと後ろに引っ張られて、前に長い腕が回る。

「ダルいんだよ、お前ら」

 凄んだ声が怖くて身震いした。振り向いて見上げたら、依弦先輩が綺麗な目を鋭く怒らせて一年生をを睨みつけてた。一年生がみんな、分かりやすく身体を竦ませてる。

「依弦、先輩?」
「自分らのもめ事に澪を巻き込むな」
「……」
(先輩はもしかして……、このこと全部知ってたの?)

 聞きたいけど、色んな感情が胸に湧き起こって、余計に言葉がでなくなった。

「大塚! 分かってんだろうな? お前はまじで澪への態度改めろよ。全部」

『全部』にずんって強い圧が掛かってた。先輩はそのまま、身動きすらできずにいた僕の腰に手を回した。

「調理室戻ろ、澪」
「……うん」