幼馴染の恋人になりたいので、アピールを始めました

 「律、もう足がびしゃびしゃやわ。おんぶするから傘持ってて」
 「やった、ありがとう」
 日向は律をおぶって帰路につく。
 「なあ、そういえばなんで俺が熱出したこと知ってたん?」
 「……言いたない」
 「なんで?いいやん、聞きたい」
 「……律から離れるとか言ったけど、実はずっと顔が見たくてこっそり遠くから見ててん。でも今日はおらへんくて、それで一組のやつに聞いたら熱出して学校休んだって聞いて」
 「俺って愛されてますなあ」と律はふふっと笑った。
 律の家に着き、日向が家の鍵を開け、そのままお風呂場へと直行する。
 「律、シャワー浴びといで。雨に濡れたから冷えてるわ」
 日向がお風呂場から出ようとすると、律が腕を掴んで引き留める。
 「もう帰るん?」
 「律がおって欲しかったらおるよ」
 「じゃあお願い」
 甘えた律の姿に叶うはずがない日向だった。
 シャワーから上がり、律をベッドに寝かせる。
 「なあ、俺が寝るまでおってや」
 「うん、そのつもりや」
 「もう離れていかんといてや」
 「うん、もう二度とせん」
 二人だけの甘い世界。こんな時間がずっと続くことを願う二人だった。
 そして律はその後、二日ほど寝込んだのだった。
 
 熱も退き、学校に来られるようになった律は放課後、食堂の裏に千優を呼び出していた。
 「ごめんな、呼び立てて」
 「ううん、大丈夫。それで話って?」
 「告白のこと。返事はいらんって言ってたけど、でもちゃんと俺の気持ちも伝えたくて」
 「……うん」
 千優の顔が少し強張る。
 「ありがとう。気持ち、すごい嬉しかった。それに千優が言ってくれたおかげで気づけたことも感謝してる」
 「そっか。二人は付き合ったんだね」
 千優の顔はどことなく悲しそうに見えた。
 「うん。これからも千優が嫌じゃなければ友達でいたいと思ってるけど、どうかな」
 「俺も友達でいたいと思ってる。でもすぐには難しいかな。まだ気持ちの整理がついてなくて」
 「うん、分かった。また話したくなったら、またお昼ご飯みんなで食べよう」
 「ありがとう。あ、あと、日向に言っといて。俺、告白するのは律が初めてだったよって」
 「うん?分かった」
 俺たちはそこで別れ、俺は日向が待つ七組の教室へと向かう。
 「おかえり。山口とちゃんと話せた?」
 「うん、話せた。ありがとう、待っててくれて。あと、千優から伝言やで。告白するのは律が初めてだったよ、やって」
 「はあ!?そうなん?!」
 日向が目を丸くして驚く。
 「なんの話なん?」
 「女子たちが山口の告白は全勝って」
 日向が独り言でゴニョゴニョ言っているが声が小さくて、よく聞こえない。
 「だから俺は諦めたのに。もしかして、あいつその噂聞いて俺に……?」
 まだゴニョゴニョ言ってる。
 「やから、なんの話なん?って」
 「律は知らなくていいの」
 「なんでぇな。俺にも教えてよ」
 「俺の秘密。さ、帰ろ、帰ろ」
 日向は律の腕に抱きつく。
 「愛嬌振りまいて誤魔化せるとでも思ってるんか」
 そんなことを言ったが律は日向の可愛さには勝てず、「もうなんでもええわ、帰ろ」と二人で教室を出て帰路につくのだった。
 そして日向は女子たちの発言により勘違いして律から離れたことは、恥ずかしいから墓場まで持っていく秘密にしようと決めたのだった。