春の暖かさがまだ残る晴れた日。今日は日向のバレー部の試合に千優と二人で来ていた。
地区大会の準決勝に進出できるかが懸かった試合で、日向がどれだけ練習をしてきたかをよく知っている。だからこそ、勝ってほしいという思いが試合前から湧き出る。
「日向っていつからバレーしてたの?」
「中学生の時からやで。中学一年、二年とセッターっていうポジションやってんけど、三年から今までリベロっていうポジションでやってるねん」
「リベロ?」
「スパイクとかサーブは打たん守備専門のポジションのことを言うねん。ほら、一人だけ違う色のユニフォーム着てるやろ。あれがそうやねん」
と俺は日向を指さす。
「本当だ」
日向が俺たちに気づき、笑顔で手を振ってくる。
「日向、頑張れー!」
この試合に勝つようにエールを送る。
「うちの高校、勝つといいね」
「必ず勝つよ。あれだけ練習してたもん」
そう言って始まった試合。結果は三対二で負けてしまった。
バレーは先に二五点を取ると一セット取ったということになり、それを先に三セット取ったチームが勝利となるルールだ。
あとちょっとだったのに、惜しかった。
千優と二人でチームが集まっているところへ向かう。そこではミーティングが行われていて、他のチームメイトは泣いているのに日向は泣いていなかった。
「日向、泣いてないね。こういう時、泣かないタイプなんだね」
あれは泣くの我慢してるだけ。日向は人前で泣くの嫌いやから。
ミーティングが終わるまで待ち、他の人たちは帰るところ日向はトイレに行くから先に帰っててと行ってしまった。
「日向、行っちゃった。戻ってくるまで待って三人で帰ろっか」
そう言い、千優が律を見ると日向の姿を目で追いかけているようだった。
「あ、俺この後、用事があったの忘れてた。ごめん、先に帰るね」
きっと自分といるより日向といる方がいいのだろうと考え、千優は寂しい気持ちを抱えたまま、その場をあとにした。
律は千優に挨拶を済ませると、走って日向のもとへと向かう。そこにはしゃがみ込んで泣いている日向がいた。そんな姿を見て抱きしめずにはいられなかった。
「よく頑張ってたの知ってる」
「でも負けた」
「そうやな。結果は変わらんけど、努力したことは変わらんよ」
日向の泣いている姿に俺も、もらい泣きをしてしまう。
「勝ちたかってん。ただ勝ちたかっってん」
「悔しいな。勝ちたかったな」
子供のように泣く日向を抱きしめて頭を撫でて慰めることしか自分にはできないことに悔しさを感じ、なぜか胸が騒いだのだった。
「ごめん、律、ちょっと話があるんだ。放課後、時間欲しい」
朝、登校すると千優に神妙な面持ちでそう言われ、一日気になりながら過ごし迎えた放課後。誰の目も届かなそうな食堂の裏へと呼び出された。
「どうしたん?話って」
「……俺じゃないことは分かってる。でも、この気持ちを知ってほしくて……俺、律のことが好き」
「……え?」
「春休みに会ったときに一目惚れして……でも、友達としてしかみてないのも分かってる。俺を恋愛対象としてみてないのも。でも、伝えたかった」
かなり戸惑う。まさか千優が俺を好きやなんて。こんなこと思ってもみんかったから。
「返事が欲しいとかじゃない。ただ伝えたかっただけなんだ」
「……うん」
「あと、それと、律は気づいてないだけだよ。自分の気持ちに」
「え?」
「最後に言いたかった。ごめんね、時間取らせちゃって。先に帰るね」
じゃあね、と言って千優は帰っていった。俺は戸惑うばかりでしばらく動けずにいた。
友達としてしか考えたことなかったから、恋愛っていう面でみたことなかったから。それに、自分の気持ちに気づいてないだけって?
この状況を日向が見ていたのも知らずに、ただただ俺は立ち尽くしていた。
その一方で告白シーンを目撃してしまった日向。動揺はしているが、それでも冷静に告白の返事をどうしたのか律に聞こうと考えていた。だが、その思いはこんな話によってヒビが入る。
「なあ、山口くん告白してるん見た?」
日向が部活に行くため教室を出ようと準備していた時、近くにいた二人の女子生徒による話だ。
「嘘、ほんまに?うわあ、いいなあ。やって、山口くんって告白して振られたことないらしいで」
「じゃあ、絶対付き合うやん」
「めっちゃ羨ましいわ。私もあんな彼氏欲しい」
そう話しながら二人は出ていく。だが、日向は動けないでいた。
やっぱり、あんなイケメンから告白されたら付き合うんかな。でも、でも、律に聞いてからや。まだきっと……。
それから部活が終わった日向は部活のメンバーと帰ろうと校門まで来た時、携帯を忘れていることに気づく。
「ごめん、部室に携帯忘れたみたいやわ。先帰っといて」
携帯は無事、部室のロッカーに置き忘れており、帰ろうとしたその時、ふとロッカー横にある姿見が目に入った。普段はユニフォームをきちんと着ることができているか、などの身だしなみをチェックするために置いているのものだが、日向は別の理由で鏡に映る自分が気になった。
ああ、山口やったら、もっと身長が高いよな。しかも、俺みたいに細くてタレた目じゃなく、大きくて丸くてキラキラした目で。手足も長くて芸能人みたいな見た目のヤツに俺なんか……。
「俺なんか叶うわけないやん」
独り言が漏れる。悲しさだけが心を占領し、心がギューッと締め付けられ痛い。
あの二人、付き合ったんかな。そうなったらもう律とは一緒におられへんよな。今までの律との楽しい思い出は、これから全部あいつとやっていくんやろうな。
そう考えるだけで苦しくて辛い。心が痛い。
なんかもう聞かんでも分かる気がする。俺はもう失恋した。
そう認識すると気持ちがいっきに崩れ、涙が勝手に出て止まらなくなる。
結局何にもできんやった。想いを伝えることなく終わるってこんなに辛いんやな。
そのまま一人、部室で声を上げて泣いた。そして決めた。もう律と一緒にいるのはやめようと。誰かの恋人になった好きな人のそばになんて苦しくていられないから。
地区大会の準決勝に進出できるかが懸かった試合で、日向がどれだけ練習をしてきたかをよく知っている。だからこそ、勝ってほしいという思いが試合前から湧き出る。
「日向っていつからバレーしてたの?」
「中学生の時からやで。中学一年、二年とセッターっていうポジションやってんけど、三年から今までリベロっていうポジションでやってるねん」
「リベロ?」
「スパイクとかサーブは打たん守備専門のポジションのことを言うねん。ほら、一人だけ違う色のユニフォーム着てるやろ。あれがそうやねん」
と俺は日向を指さす。
「本当だ」
日向が俺たちに気づき、笑顔で手を振ってくる。
「日向、頑張れー!」
この試合に勝つようにエールを送る。
「うちの高校、勝つといいね」
「必ず勝つよ。あれだけ練習してたもん」
そう言って始まった試合。結果は三対二で負けてしまった。
バレーは先に二五点を取ると一セット取ったということになり、それを先に三セット取ったチームが勝利となるルールだ。
あとちょっとだったのに、惜しかった。
千優と二人でチームが集まっているところへ向かう。そこではミーティングが行われていて、他のチームメイトは泣いているのに日向は泣いていなかった。
「日向、泣いてないね。こういう時、泣かないタイプなんだね」
あれは泣くの我慢してるだけ。日向は人前で泣くの嫌いやから。
ミーティングが終わるまで待ち、他の人たちは帰るところ日向はトイレに行くから先に帰っててと行ってしまった。
「日向、行っちゃった。戻ってくるまで待って三人で帰ろっか」
そう言い、千優が律を見ると日向の姿を目で追いかけているようだった。
「あ、俺この後、用事があったの忘れてた。ごめん、先に帰るね」
きっと自分といるより日向といる方がいいのだろうと考え、千優は寂しい気持ちを抱えたまま、その場をあとにした。
律は千優に挨拶を済ませると、走って日向のもとへと向かう。そこにはしゃがみ込んで泣いている日向がいた。そんな姿を見て抱きしめずにはいられなかった。
「よく頑張ってたの知ってる」
「でも負けた」
「そうやな。結果は変わらんけど、努力したことは変わらんよ」
日向の泣いている姿に俺も、もらい泣きをしてしまう。
「勝ちたかってん。ただ勝ちたかっってん」
「悔しいな。勝ちたかったな」
子供のように泣く日向を抱きしめて頭を撫でて慰めることしか自分にはできないことに悔しさを感じ、なぜか胸が騒いだのだった。
「ごめん、律、ちょっと話があるんだ。放課後、時間欲しい」
朝、登校すると千優に神妙な面持ちでそう言われ、一日気になりながら過ごし迎えた放課後。誰の目も届かなそうな食堂の裏へと呼び出された。
「どうしたん?話って」
「……俺じゃないことは分かってる。でも、この気持ちを知ってほしくて……俺、律のことが好き」
「……え?」
「春休みに会ったときに一目惚れして……でも、友達としてしかみてないのも分かってる。俺を恋愛対象としてみてないのも。でも、伝えたかった」
かなり戸惑う。まさか千優が俺を好きやなんて。こんなこと思ってもみんかったから。
「返事が欲しいとかじゃない。ただ伝えたかっただけなんだ」
「……うん」
「あと、それと、律は気づいてないだけだよ。自分の気持ちに」
「え?」
「最後に言いたかった。ごめんね、時間取らせちゃって。先に帰るね」
じゃあね、と言って千優は帰っていった。俺は戸惑うばかりでしばらく動けずにいた。
友達としてしか考えたことなかったから、恋愛っていう面でみたことなかったから。それに、自分の気持ちに気づいてないだけって?
この状況を日向が見ていたのも知らずに、ただただ俺は立ち尽くしていた。
その一方で告白シーンを目撃してしまった日向。動揺はしているが、それでも冷静に告白の返事をどうしたのか律に聞こうと考えていた。だが、その思いはこんな話によってヒビが入る。
「なあ、山口くん告白してるん見た?」
日向が部活に行くため教室を出ようと準備していた時、近くにいた二人の女子生徒による話だ。
「嘘、ほんまに?うわあ、いいなあ。やって、山口くんって告白して振られたことないらしいで」
「じゃあ、絶対付き合うやん」
「めっちゃ羨ましいわ。私もあんな彼氏欲しい」
そう話しながら二人は出ていく。だが、日向は動けないでいた。
やっぱり、あんなイケメンから告白されたら付き合うんかな。でも、でも、律に聞いてからや。まだきっと……。
それから部活が終わった日向は部活のメンバーと帰ろうと校門まで来た時、携帯を忘れていることに気づく。
「ごめん、部室に携帯忘れたみたいやわ。先帰っといて」
携帯は無事、部室のロッカーに置き忘れており、帰ろうとしたその時、ふとロッカー横にある姿見が目に入った。普段はユニフォームをきちんと着ることができているか、などの身だしなみをチェックするために置いているのものだが、日向は別の理由で鏡に映る自分が気になった。
ああ、山口やったら、もっと身長が高いよな。しかも、俺みたいに細くてタレた目じゃなく、大きくて丸くてキラキラした目で。手足も長くて芸能人みたいな見た目のヤツに俺なんか……。
「俺なんか叶うわけないやん」
独り言が漏れる。悲しさだけが心を占領し、心がギューッと締め付けられ痛い。
あの二人、付き合ったんかな。そうなったらもう律とは一緒におられへんよな。今までの律との楽しい思い出は、これから全部あいつとやっていくんやろうな。
そう考えるだけで苦しくて辛い。心が痛い。
なんかもう聞かんでも分かる気がする。俺はもう失恋した。
そう認識すると気持ちがいっきに崩れ、涙が勝手に出て止まらなくなる。
結局何にもできんやった。想いを伝えることなく終わるってこんなに辛いんやな。
そのまま一人、部室で声を上げて泣いた。そして決めた。もう律と一緒にいるのはやめようと。誰かの恋人になった好きな人のそばになんて苦しくていられないから。
